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挙式
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私達は服を着た。私は衣装からジョシュアの貸してくれたトレーナーに着替えた。元はサイラスがくれたものだけれども。
しばらくしてやっぱり涙が込み上げてきた。指輪を見ると色々思い出してしまい、泣けてくる。
彼の手が私の背中を優しく撫でる。泣きじゃくる私は、涙が流れたままの頬で彼を見上げた。優しくキスをされる。彼の瞳にも涙が流れていた。
「幸せになろう」
私は嬉しくて耐えきれずにまた涙を流した。王妃になりたかったわけではない。ジョシュアの妻になれるということが叶わぬ夢だったのに、それがいざ叶うという現実に色々な思いが去来して、私は震える思いでジョシュアの温かい唇を受け止めた。
「俺がグレースと結婚したいと思ってから、ずいぶん経った。俺が王になるしかなかったのなら、王としての務めを果たす。けれども俺が一番に望んだのは、グレースとの結婚なのだよ」
ジョシュアの声に私は胸がいっぱいになった。
「私もです。あなたと結婚したかった……ずっと」
二人で泣きじゃくりながら抱き合っていると、ジョシュアの部屋のドアがノックされた。
「何かしら?」
顔を見合わせてジョシュアがドアを開けると、メロンやアイラやオリヴィア、サイラス、ミラが輝くような笑顔で廊下に立っていた。
「あら、二人とも泣いているけどどうしたの?」
「待って?その指輪は何?」
アイラがめざとく私の指にはめられた煌めく指輪を見て叫んだ。
「プロポーズをしたんだ」
ジョシュアが少し恥ずかしそうに、でも嬉しそうに言った。
「きゃあ、お祝いしなきゃじゃない。これからみんなで飲みに行こうと話していたのよ」
「じゃあ、ここの教会で結婚式をしちゃったら?」
「いやぁ、どうだろう。面倒じゃない?」
「うちの大聖堂はどう?」
「え?うちらの世界の?」
皆が顔を見合わせて、輝くような笑顔になった。
その次の瞬間、私とジョシュアはアイラたちの世界の結界に連れて行かれた。
数十分後、大聖堂に鐘が高らかに鳴り響き、教会オルガンが鳴り響いいた。サイラスが小隊長を務める騎士団の大聖堂を使わせてもらい、即席で私とジョシュアの結婚式が開かれたのだ。牧師役はサイラスが務めてくれた。大聖堂の騎士団は貧乏だと聞いていたが、荘厳で煌びやかな内装だった。金塊の契約をして、命を助けてもらってついでに大聖堂の危機を乗り越えたらしい。
ジョシュアと私はこうして、もう一つの世界の大聖堂で、メンバーに見守られて結婚式を挙げたのだ。メンバーは獣の姿になったけれども、私とジョシュアは自分の世界ではないので人の姿でいられた。大聖堂の貸衣装室から可憐な花嫁ドレスと立派な花婿の服を貸してもらった。
ワールドツアーの初日コンサートの成功を祝すとともに、ジョシュアと私は夫婦になることを祝ってもらった。
そこの隅に円深帝の姿があった。私はジョシュアが私から離れた時に、円深帝に囁かれた。
「あくまで金塊の契約を果たせれば、ですよ。果たせなければあなたの夫は私になりますから、どうぞ頑張りなさい」
円深帝は愛おしいものを見つめる眼差しで私を見つめて微笑むと、大聖堂から姿を消した。
私はジョシュアには言えなかった。今は金塊の契約を果たせると信じて邁進しようと心に決めた。今だけでもジョシュアの妻になれた幸せを享受しなければ。
しばらくしてやっぱり涙が込み上げてきた。指輪を見ると色々思い出してしまい、泣けてくる。
彼の手が私の背中を優しく撫でる。泣きじゃくる私は、涙が流れたままの頬で彼を見上げた。優しくキスをされる。彼の瞳にも涙が流れていた。
「幸せになろう」
私は嬉しくて耐えきれずにまた涙を流した。王妃になりたかったわけではない。ジョシュアの妻になれるということが叶わぬ夢だったのに、それがいざ叶うという現実に色々な思いが去来して、私は震える思いでジョシュアの温かい唇を受け止めた。
「俺がグレースと結婚したいと思ってから、ずいぶん経った。俺が王になるしかなかったのなら、王としての務めを果たす。けれども俺が一番に望んだのは、グレースとの結婚なのだよ」
ジョシュアの声に私は胸がいっぱいになった。
「私もです。あなたと結婚したかった……ずっと」
二人で泣きじゃくりながら抱き合っていると、ジョシュアの部屋のドアがノックされた。
「何かしら?」
顔を見合わせてジョシュアがドアを開けると、メロンやアイラやオリヴィア、サイラス、ミラが輝くような笑顔で廊下に立っていた。
「あら、二人とも泣いているけどどうしたの?」
「待って?その指輪は何?」
アイラがめざとく私の指にはめられた煌めく指輪を見て叫んだ。
「プロポーズをしたんだ」
ジョシュアが少し恥ずかしそうに、でも嬉しそうに言った。
「きゃあ、お祝いしなきゃじゃない。これからみんなで飲みに行こうと話していたのよ」
「じゃあ、ここの教会で結婚式をしちゃったら?」
「いやぁ、どうだろう。面倒じゃない?」
「うちの大聖堂はどう?」
「え?うちらの世界の?」
皆が顔を見合わせて、輝くような笑顔になった。
その次の瞬間、私とジョシュアはアイラたちの世界の結界に連れて行かれた。
数十分後、大聖堂に鐘が高らかに鳴り響き、教会オルガンが鳴り響いいた。サイラスが小隊長を務める騎士団の大聖堂を使わせてもらい、即席で私とジョシュアの結婚式が開かれたのだ。牧師役はサイラスが務めてくれた。大聖堂の騎士団は貧乏だと聞いていたが、荘厳で煌びやかな内装だった。金塊の契約をして、命を助けてもらってついでに大聖堂の危機を乗り越えたらしい。
ジョシュアと私はこうして、もう一つの世界の大聖堂で、メンバーに見守られて結婚式を挙げたのだ。メンバーは獣の姿になったけれども、私とジョシュアは自分の世界ではないので人の姿でいられた。大聖堂の貸衣装室から可憐な花嫁ドレスと立派な花婿の服を貸してもらった。
ワールドツアーの初日コンサートの成功を祝すとともに、ジョシュアと私は夫婦になることを祝ってもらった。
そこの隅に円深帝の姿があった。私はジョシュアが私から離れた時に、円深帝に囁かれた。
「あくまで金塊の契約を果たせれば、ですよ。果たせなければあなたの夫は私になりますから、どうぞ頑張りなさい」
円深帝は愛おしいものを見つめる眼差しで私を見つめて微笑むと、大聖堂から姿を消した。
私はジョシュアには言えなかった。今は金塊の契約を果たせると信じて邁進しようと心に決めた。今だけでもジョシュアの妻になれた幸せを享受しなければ。
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