上 下
131 / 171

アーニャの再起(1) ※

しおりを挟む
 朝食の準備ができると、私はイーサンが眠る寝室に向かった。村の子供達の配給所の様子を見てくると、イサーンに声をかけようと思ったのだ。

「伯爵、私は村の配給所の様子を見てくるわ」

 寝室で寝ているイーサンに私はそっと声をかけた。

「アーニャ、ごめん」

 寝ていると思ったイーサンが私の方を向いて、静かな声で謝った。イーサンはゆっくりと立ち上がり、近づいてきて、私の両頬を包んだ。私の顔をのぞきこむイーサンの瞳が、随分前に見た澄んだ瞳のイーサンに見えて、私は思わずドキッとした。そういえば、昨晩はイーサンから求められなかった。結婚以来初めてのことだった。

 イーサンは私の目の高さに目を合わせて「今まで本当にごめん、アーニャ」とささやき、私を抱きしめた。

「伯爵……私こそごめんなさい。私の実家はあまり裕福でなくて、力になれないのに私があなたを欲したばかりに」
「何を言っているんだ、アーニャ。僕が君を求めたんだ。僕だって君がいないと生きていけないと思ったんだ。もう、僕のことを伯爵と呼ばなくていい。昔みたいに名前で呼んでくれ」

 イーサンは私に情熱的なキスをした。舌を絡めてきて、私の体をギュッと抱きしめた。

 あぁ………っん

 私の中にゆっくりと昔のイーサンに憧れていた懐かしい焦ったいような体を溶かしてしまうような熱が溢れてきた。
  
「今まで本当にごめん。アーニャ、僕らはやり直そう」
「ええ」
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

冷徹執事は、つれない侍女を溺愛し続ける。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,363pt お気に入り:178

魔法剣士は師匠の夢を見る  ~黒猫獣人の甘い誘惑~

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:4

彼女があなたを思い出したから

恋愛 / 完結 24h.ポイント:860pt お気に入り:4,194

[ R-18 ]息子に女の悦びを教え込まれた母の日常

大衆娯楽 / 連載中 24h.ポイント:2,634pt お気に入り:76

国王陛下に婚活を命じられたら、宰相閣下の様子がおかしくなった

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,207pt お気に入り:726

処理中です...