ミミック大東亜戦争

ボンジャー

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第十八話 バンザーイ

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 「バッキャローふざけんなコラー」



 「近衛この腰抜け!出てこい」



 「何で領土を取らない馬鹿かお前は!」

 

 日本の朝野は大荒れに荒れていた。

 

 日比谷公園名物焼き討ちパレード、暴動寸前のデモ活動、国会空転、審議拒否。

 

 我こそ帝国を勝利に導いた大宰相と思っていた近衛首相は、これに大激怒。



 あそこで蒋介石が素直になってくれたからこそ講和なのだ。

 

 あの講和を飲ませられなければ、今度こそ人跡未踏の中華奥地に進撃する事に成ったろう。



 「馬鹿な国民はそれが分からんのか!」



 「国民党を相手にせず」



 を言い出し戦争長期化の原因を作った男との言葉とは思えない発言だが彼は本気だ。

 

 勝利の立役者である自分の元での長期政権。



 その夢がガラガラと音を立てて崩れ行く。そんな事認めてなる物か!



 「陸軍!何してるんだ鎮圧しろ!」



 切れた近衛は陸軍に鎮圧を要請。



 これが報道にリークされてしまったから大変だ。



 「「何だこの野郎!」」



 と国民は更にヒートアップしていく。



 収まることなき国民様の怒りの前に。何と近衛は政権を放り出す。



 後を継いだ平沼内閣は火消しに奔走する事になる。



 ここに助け舟を出したのは、誰あろう中華民国総統の蒋介石だ。

 

 日中講和より人前に出る事が何故か少なくなった彼ではあるが、その支配力は健在いや往時を凌ぐ。



 並みいる中華一番デスマッチのライバルたちが、日本軍により血祭に挙げられている現在、中華の地で彼に逆らえる者はほとんどいない。

 

 現在彼は、首都南京にてメイド軍団による大中華酒池肉林計画の指揮を嬉々として取っている。

 

 「まて!幾ら負けたからと言って臥薪嘗胆するでなく。なに中華全体を阿片窟に変える様な真似に協力している!」



 と皆さまお思いだろう。

 

 それには訳がある。



 彼は重慶陥落に際し半死半生意識不明の状態で発見され、メイドさんの懸命の看護により奇跡的に回復した。



「メイドさんの手による看護によって」である。



  半死半生いつ死ぬかもわからぬ蒋介石氏。



 メイドさんがナノマシンによる緊急治療を施したのは仕方がないことだとは思われないだろうか?

 

 そう言うことだ。蒋介石氏は、メイドさんの脳殻に中華の皇帝となった夢を見ながら浮かんでいる。



 今の彼は、蒋介石君改め蒋介石ちゃん!



 止めて石投げないで。



 メイドさんへと改造された、哀れなる蒋介石総統が出した助け舟。



 それは天皇陛下の中華皇帝への即位願い。

 

 中華民国は、英連邦構成国が英国君主を王として頂く様に、天皇陛下を皇帝として頂く連邦制国家になるとの驚天動地の宣言だ。

 

 「馬鹿言うでねぇ」



 日本政府は固辞したが、これも即効でマスコミに速攻でリークされてしまう。

 

 「天皇陛下万歳!遂に我らはアジアの頂点に!東亜連合の象徴!万歳万歳!何だか知らんがとにかく万歳!」



 手のひらを返したような歓迎ムード、提灯行列が日本国中を練り歩く。



 ここで断れば暴動の再発は火を見るより明らか。

 

 日本政府は観念した。一縷の望みと傀儡である満州国皇帝溥儀に

 

 「どうします?」



 と聞いてみたが、中華を殴り殺せる帝国に嫌が言えるはずもない。



 そも何故聞いた?相手は傀儡国だぞ。断れるはず無いじゃん。

 

 愛新覚羅溥儀は、満州国皇帝位の保証を条件に、泣く泣く中華皇帝位を手放す事に同意する。最早逃げる事は出来んぞ大日本帝国!



 天皇陛下の中華皇帝即位は、心底嫌そうな陛下を泣いて説き伏せ、皇居にて執り行われ。併せて紫禁城においても秩父宮雍仁親王を名代とした即位式が行われる。



 「大日本帝国の専横ここまで来たか」

 

 鼻白む列強諸国だが一応の代表は出さねばならない。そんな列強の中、一国目を輝かせてこの蛮行を羨む国がいる。ドイツ第三帝国である。

 

 「日本を何としても味方に付けるのだ!」

  

 ちょび髭総統の命令の元、ドイツは大日本帝国に外交攻勢を仕掛ける時を窺っていた。
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