ミミック大東亜戦争

ボンジャー

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第三十五話 お茶の間直撃 衝撃映像1941

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 1941年9月7日 ドイツ第三帝国にてソヴィエト戦勝利を祝う大イベントが催された。



 「民族の勝利」



 をテーマにベルリンオリンピック会場を再利用し、内外にコミンテルンへの勝利をアピールするこの催し、 目玉は枢軸各国の代表軍を集めての大パレードである。



 そして「優秀」な民族の団結と「優秀な」思想であるナチズムの礼賛に満ちた虚栄の宴のクライマックスはドイツお得意の松明パレード。

 

 ドイツ代表を先頭に、松明を掲げ行進する各国代表が、会場中心に据えられた火刑台に松明を投げ入れ火を灯すのである。



 「火刑台に」



 である。如何した事か、リハーサルでは大きな木造櫓が据え付けられていた場所は、火刑台にすり替わっていた。

 

 「「サプラーイズ!」」



 そう言いたげな観客席のナチス高官たち。



 目を凝らせば火刑台に括り付けられている棺桶二つ。



 良ーく油を沁み込ませたスターリンとレーニンの棺桶である。ドイツはこの日の為に態々モスクワからエンバーミングを施してまで二人の死体を輸送してきたのだ。

 

 赤旗に包まれた、二人の横たわる火刑台に、投げ込まれるドイツ代表アドルフヒトラー師団隊員の松明。



 突然の内容変更に戸惑ながら松明を投げ込む各国代表。



 そして赤々と燃える炎に照らされて、我らが総統の大演説が開始される。



 長いので割愛するが、ちょび髭の言いたいことはこうだ。



 「遂に我々は、人類悪であるコミンテルンと、その親玉に打ち勝った。これこそ我が優秀なるアーリア民族とそれに協力してきた準優秀民族の勝利である。



 そして見よここに燃える民族の炎を!レーニンとスターリンと言う悪魔を燃やし尽くす正義の炎だ!ここに松明を投げ入れた勇気ある戦士たちに多いなる祝福を。



 そして、我らはこれからもこの正義の炎を、燃やし続ける義務がある。ドイツ第三帝国万歳!枢軸万歳!」 



 要するに



 「お前らスタ公と禿の死体燃やした共犯なんだからな逃げんじゃねーぞ、証拠映像も取ったからな」



 と言いたいのである。

 

 民族の祭典に続き、レニ・リーフェンシュタールによる撮影技術の粋を凝らした映像と、ヨーゼフ・ゲッベルス宣伝大臣渾身の演出は、世界の人々にコミンテルンの死と枢軸の勝利を歌い上げる。



 「勝ったな!」



 





 「ドン引きだよ。何だよ最後の火刑は。死体を態々持ってきて皆で仲良くキャンプファイヤって、君それが受けると本気で思ってたの?あと何、準優秀民族って?それでリップサービスの積りなの?」

 

 大きな誤算は、大会スポンサー大日本帝国に、死体に鞭打つ文化が受け入れがたかった事であろう。



 引いていた。ドン引いていた。



 メイドさんによる同時通訳付きの日本全国初カラー生放送が有ったのも不味かった。



 オリンピックの積りで、輝かしき日本の勝利を見る為に、給料ひと月分のカラーテレビを買ったお茶の間へ火葬映像を直撃させてしまった。



 止めろ燃えるレーニンをアップにするな!ほらNHK解説も無言じゃないか!どうしてくれるんだこれ!

 

 「しばらくお待ちください」



 お辞儀メイドのちびアニメが流れると抗議殺到。



 メイドさんの手により普及率90%に達した固定電話からNHKに向けて抗議の嵐が流れ込む。

 

 「子供もみてるんだぞ!」



 「家の爺さんが引きつけ起こしたどうしてくれる」



 「気持ち悪いんですけど」



 「受信料返せ馬鹿!」



 「ドイツばかり映すな家の息子を映せ」



 「幾ら敵でもやり過ぎだ!加減しろ」

 

 「あの髭引っ込抜け、何だあのどや顔!」



 「準優秀だと!何様の積りだ!援軍があったから勝った癖に!」





  回線パンク繋がりません。



  与党真っ青、野党ニンマリ。



 「よっしゃあー攻撃だ攻撃。ドイツ信用ならず野蛮な国から距離をとれ」

 

 



 イギリスもニンマリ。



 あの、馬鹿ども、工作する前からヤラカシタぞ!蛮族が!何時までも古代だと思ってるからだ!。



 「日本さん可哀そうに、あの女はああ言う、がさつ極まるゴリラ女でしてよ。今までの事は水に流しますわ。貴方に相応しいのはレディでしてよレデイ」

 



 行け!ポーランド遺民、君の出番だ。ドイツの非道を言い立てろ!君もだユダヤ人。強制収容所の内実を切々と訴えろ。腹黒紳士の面目躍如、自分を棚に置いてドイツを引きずり降ろそうと暗躍する。

 

 



 

 こうなると日本世論も、わが身の蛮族ぶりを忘れて騒ぎ出す。



 押される政府も躊躇する。このままドイツと組んでていいのかしらん?



 今やお隣同士の国がどうやら、とんでもない暴れ猿かもしれない。どうせ緩衝国は作る積りなのだし、その為の人材もドイツから来るのだ。



 いっその事。



 「ポーランド亡命政府さん、どうよこんな話」



 意外な事であるが日本とポーランドとは仲が良いのだ。



 史実でもポーランドの宣戦布告を拒否したほどだ。



 ストックホルム日本大使館に潜伏しているミハウ・リビコフスキ少佐を通してこの話を受けた亡命政府は考える。



 千載一遇の好機到来。ポーランド本国奪還はこの先難しくとも、何とかポーランド国民の逃げ出す先を日本が征服したロシアに作れるかもしれない。

 

 ポーランド亡命政府の快諾を受けて話は進む。



 だがポーランド人は甘く見ていた。今の日本人の底抜けの馬鹿パワーとメイドさんパワーを。



 「ヴォルガ川周りいい土地空いてるじゃん。ここをポーランドとする!今決めた」

 

 「そう言えば、河豚計画ってあったよな」



 「ドイツさんもあれだけユダヤ人ユダヤ人言ってるんだから、相当に恐ろししいのだろう。ポーランドさんも一国では寂しいだろうから、、、」



 「ユダヤ人さん!ここが新しいイスラエルだ。嫌?何聞こえない?もう一度言って?そうでしょう、そうでしょう。日本人は優しいのです。さあ遠慮はいらない思う存分シオニズムしなさい。」

 

 「ロシア人?あそこでキャビア食ってウオッカ飲んでるから邪魔しないで上げて」



 「一つ忠告するよ。ロシア人何ていないよ。あそこに居るのは酒と魚卵が好きな人語を解する熊だよ。分かった?」



 とんでもない愚民化政策に空いた口が閉まらないが、ワルシャワ発シベリア行きは次々と犠牲者を乗せてやって来る。



 降りた駅から見える大都会に押し込まれていく人々。快楽は人を解放するのだ。



 「ドンドン食べたまえ飲みたまえ。お代?君たち立派な緩衝国になってもらうよ」



 こしてして無理矢理建国されるヴォルガポーランド王国と東方シオン共和国。



 主要産業は国境警備。全国民に占める軍役割合なんと10%。



 日本からの無尽蔵の援助で良い暮らしは出来るも歪極まる社会構造の超軍事国家である。



 浮かれ騒ぐドイツ、ドン引きの大日本帝国、離間工作の成功を確信したイギリス。数多の悲喜劇を巻き起こしながら時は流れゆく。



 そして、、、、





 





 「本当にこんな計画行けるんですか博士?自分は信じられません。こんなものに合衆国の命運を託すだなんて」



 「出来るさ。私が保証する。それにこの計画が成功しなければどの道、合衆国は終わりだ。ああ荷物はそこに置いてくれ。大事な資料だ。慎重にな」



「はい、ご主人様」



 ニューメキシコ州ロスアラモスの地にてロバート・オッペンハイマー博士は美人の研究助手に指示を出した。
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