雲生みモックじいさん

おぷてぃ

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第9話『南の空のべそっかき』

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    島を離れたモックじいさんたちは、まずは南の空へと向かいました。すっかり昇った太陽が照らす空を、まずは最初に見に行くことに決めたからです。
    モックじいさんは少し遅くなった朝ごはんを、雲に腰かけながら食べていました。くるみパンを少しずつ指でちぎっては、口へ放り込みます。空をいく鳥たちは、変わったものを見つけたと、近くに寄ってきました。モックじいさんはそんな彼らにくるみパンを分け与えて、近くに雲たちはいないかとたずねました。すると群れの中の一羽が口を開きました。

「そういえば、さっき向こうのほうでわんわん泣いてる雲を見たぜ。ジャングルにスコールをどっさり降らしてたよ」

    モックじいさんは礼を言ったあと、教えてもらった場所へと向かいました。するとそこでは、さっきの鳥が教えてくれたとおり、泣きじゃくる大きな雲がありました。

「どうした、どうした。なにをそんなに泣いている」
「どうしたもこうしたもないよ!おいらはここいらで、雨をどっさりふらすのさ。それがおいらの仕事なんだ」

    それを聞いたモックじいさんの顔がくもりました。やはり雲たちは、自分が生み出したばっかりに、悲しい思いにくれているのだ。そう思わずにはいられませんでした。

「すまない、雲や。おれが生み出したばっかりに、おまえたちは毎日毎日泣きどおしなんだろう。こんな悲しい思いをさせるつもりはなかったんだ」

    モックじいさんがぽつりとこぼしました。すると、今まであれだけ泣いていた雲が、きょとんとしたようすで言いました。

「なんで? おいらべつに、悲しいばっかりで泣いているわけじゃないよ」

    モックじいさんはどういうことだといった表情で、雲を見つめました。

「確かに悲しいときにも泣きはするさ。でも、それと同じくらい、悔しいときも、嬉しいときも泣いたりするよ。おいらそうやって、このジャングルにいるやつらに確かめさせるのさ」
「確かめさせるって、いったいなにを?」
「生きたり死んだり、そうしたことさ」

「おれはおまえの言うことがさっぱりわからん。どうしてそんなことをするんだ」
「そんなの、おいらもよくわかんないよ。でも、とっても大切なことだと思うから、ここぞというときに、どっさり雨を降らすのさ」
「なにもどしゃ降りにせんでもいいんじゃないか? ほどほどというわけにはいかんのか」
「そりゃ、いっつもバシャバシャやりはしないし、ほどほどにやるときもあるよ。でも、そればかりじゃあ、やっぱり意味がないよ」

「そんなものなのか」
「そんなものだよ」

    あいかわらず雲の言うことは今ひとつよくわかりませんでしたが、悲しいばかりではないと聞いたモックじいさんは、最後にひとつだけ、気になることを聞いてみることにしました。

「じゃあ、おまえはそれで満足なんだな?」


「満足かどうかだって? そんなの今はわかりゃしないよ。下のやつらだって、いよいよ最期だってときに、ようやく笑ったり泣いたり喚いたりするんだ。だからおいらも消えっちまうそのときになって初めて、ようやく満足いったかどうか決めるんだと思うよ」
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