雲生みモックじいさん

おぷてぃ

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第11話『北の空のあまえんぼう』

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    東の空をあとにしたモックじいさんと雲は、今度は北の空へと向かいました。太陽もあまり寄り付かない北の空を、見てみようということになったのです。
    モックじいさんと彼を乗せた雲は、持ってきたジュースを分け合って飲みながら、次の雲の居場所を探しました。今度もうまく見つけることができるかもしれないと思いましたが、その結果は、期待から少しばかり外れてしまったようでした。なぜなら、北の空にはたくさんの分厚い雲が立ちこめて、どの雲に聞いてみるのが一番確かなのか、わからなかったからです。
    ひとまずモックじいさんたちは、近くにいた雲に声をかけることにしました。雲たちは身を寄せあって、しんしんと雪を降らせていました。地上には銀世界が広がって、目に映るすべてを黒か白かそのあいだくらいに塗り分けています。
    モックじいさんは寒さで奥歯をカタカタ鳴らしながら、雲に声をかけました。

「どうした、どうした。なにをそんなに震えとる」

    雲は消え入りそうな小さな声で、モックじいさんの質問に答えました。

「どうしたもこうしたも……。今わたしたちはこうすることで、地上の人々が雪の向こうに、誰かを思う時間をつくりだしているのです」

    それを聞いたモックじいさんは、雲たちをとてもかわいそうに思いました。

「そんなむなしいことをしてどうなる。地上の人々だって、おまえたちのように大勢でわいわいしている方が楽しいかもしれないじゃないか」

    すると雲は静かに、けれど、さとすように言いました。

「むなしいだなんて、そんなことはありません。わたしたちがこうすることで、人々は孤独を知るのです」
「孤独なんて、なぜ知らねばならん」
「誰かをなにかに置きかえないためです」

    モックじいさんは、ここでも同じことを聞きました。

「おれはおまえの言うことがさっぱりわからん。どうしてそんなことをするんだ」

    こちらの雲も、さっきの東の雲と同じような口ぶりで言いました。

「そんなこと、わたしたちにもよくわかりません。でも、とても大切なことだと思うから、必要なときにはためらわず雪を降らすのです」
「なにもあんなになるまで降らすことはないんじゃないのか? ほどほどにしてやればいいじゃないか」
「それは、そういつもいつも雪を積もらせてなどおりません。でも、ああでなければ意味がないのです」

「そんなものなのか」
「そういうものなのです」

    どうしても雲の言うことは今ひとつよくわかりませんでしたが、無理やり納得することにしました。そしてここでも、最後にひとつだけ聞くことにしました。

「じゃあ、おまえたちはそれで満足なんだな?」


「満足かどうかですって? そんなこと、今はわかるはずがありません。地上の人々が孤独を知り、自分をのぞいたすべての人々をまっすぐに見つめて、目の前のひとりをひとりとして尊重するようになった、そのときに初めて、わたしたちが満足できるかどうかが決まるのだと、そう思います」
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