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第5話 即位礼
しおりを挟むBL熱夏日記(ねつ なつ にっき)
即位礼 第5話
By 二月永 (イオルリョン)
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一国の歴史は、血なくして成らず。
アバママはいつもそうおっしゃっていた。
王族として生まれた者たちは、必然的に互いに争わざるを得ず、
その戦いに敗れた者は排除され、見捨てられ、
さらには命を脅かされる運命にある。
それは王権を求めて競うのではなく、
ただ王家の子孫として受け入れなければならない宿命なのだ。
父が子を制し、兄弟が互いに警戒し合う生涯は、この国の創建以来、幾度となく繰り返されてきた君主の道であった。
王道
王が歩むべき当然の理と道理。
徳と道理を理想とする王道は、覇道を根幹として壮大なものとなる。
まことに奇妙な対ではないか?
血を基として仁義の道を示す。
その道は誰のためにあるのか。
王道は誰に向けられるべきなのか。
私の王道は、民である。
民のために、この国を正しく築こうとする。
私を信じ、共に歩む者たちと共に、新たな王道へ進もうと思う。
それだけが、私の罪を償い、哀しみを示す道なのだ。
By 朴允洙(パク・ユンス)
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藝文館では、喪礼についての議論が交わされ、大小の臣僚たちが声を上げていた。
礼法によれば、世孫邸下は祖父である先王の崩御と、父君である世子邸下の薨逝に遭われたため、それに伴う服喪の期間を定めるのが当然の手続きであった。
三年、あるいは長喪。
この期間中、世孫邸下は宮中の政務を執ることができず、飲食を慎み、子孫としての礼を尽くさねばならぬ。
しかし、世孫邸下は三年喪ではなく、翼善冠を戴くこととなる。
もしかすると、世子邸下は火変に遭われたのではなく、むしろ待っていたのかもしれぬ。
世孫邸下の王位継承を安定させるため、自らの意思で選ばれたということを、今になってようやく悟ったのだ。
薨逝された世子邸下は、金厥之(キム・クォルジ) と対比殿 との関係において常に一歩引かねばならぬ理由があった。
そのため、世子邸下に向けられた脅威が、いずれ世孫邸下にまで及ぶことは自明の理であった。
誰よりも先に、世孫邸下の王才を見抜かれた御方。
己の身を犠牲にしても厭わぬ方であった。
対比殿は、世子邸下を害するほど残忍な方ではないが、かといって温かく包み込むほど慈愛深い方でもない。
ひたすら絶対権力を追い求め、これまで生きてこられた御方。
この現状において、金 厥之(キム・クォルジ )大監の勢力と世孫邸下の正統性を天秤にかけ、常に損得を計算されることだろう。
その天秤の行方は、先代王の国璽が押された遺詔によって決まった。
崩御された先代王が直筆で残された遺詔なのか、それとも と対比殿の政治的同盟の証なのかは重要ではない。
先代王の親筆遺詔は世孫邸下にあり、混乱する宮中の暗闘の中、王室の分裂を収拾し、王権強化の本質を守り抜かねばならぬこの時期において、形ばかりの礼式を踏み、外面を取り繕うよりも、政務を優先せざるを得なくする最も強力な道具となったのだ。
三年喪は猶予にすぎず、時が来れば世孫邸下は国喪を厳守されねばならない。
そう、それこそが最大の問題である。
もし国喪を行うのであれば、すべての政務を後回しにし、ただ二人を弔うことに専念されるだろう……。
「……世孫邸下の御体は、果たして無事であろうか」
数日間、眠ることも食事を摂ることもせず、ただ独り—。
「いつ訪れるかと思えば、なぜ今になって顔を見せるのだ」
忘れていた。この場所は —。
梅花園であった。
「梅花園におられるとは、存じませんでした。」
世孫邸下を孕み、産苦の末に薨逝された世子嬪邸下が、こよなく愛された場所。
「少し、休める場所が必要だったのだ。」
宮中で、世孫邸下が心休めることのできる場所など—。
「……ご平安でいらっしゃいますか。」
先王の崩御に、心を痛めておられませんか。
世子邸下の薨逝に、胸を痛めておられませんか。
声に出して問うこともできぬ問答。
「お前がいてくれて、よかった。」
微笑むその顔に、喉が詰まる。
「ユンス……。」
伝わる声が、胸に染みる。
「約束してくれ。何があろうとも、私のそばにいると。」
胸の奥に封じ込めていた感情が溢れ、どうしても抑えられない。
だからこそ、逃げるように—。
仮面を被り、
「権臣たちが、世孫邸下を勤政殿にてお待ちしております。」
卑しくも、逃げ出してしまったのだ。
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