🌈 BL熱夏日記(ねつ なつ にっき)

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第6話 暴風中の静

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BL熱夏日記(ねつ なつ にっき)






暴風中の静 第6話







By 二月永 (イオルリョン)






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即位礼を簡素に執り行ったことについて、臣僚たちは異議を唱えなかったが、朝廷の雰囲気は混乱していた。


新たな王が即位すると、慣例として勢力の序列を固めるために大規模な粛清が行われ、功績のある者には褒美が与えられ、反対する者には罰が下される賞罰の措置が取られるものだが、それが行われないことに戸惑いを感じているようであった。








このことは、ある者には機会となり、またある者には危機となるであろう。







[..............]






あの表情を見る限り、金闕之(キム・グォルジ)大監は納得していないようだな。


ユンスよ、お前が以前語ってくれた言葉を思い出す。





一国の王たる者は、朋党政治(派閥政治)を操る奸臣たちに巻き込まれてはならず、常に中心であるべきだ。


彼らの中に飛び込むことも、彼らの目と耳を完全に信じることもあってはならない。







宮廷のすべての権臣たちが正しいと主張しても、間違いだと批判しても、一切の揺らぎなく、天を仰ぎ、民を敬うことこそが、我が存在する理由であるべきだ。





故に、高位官職の席を巡ってどのように野合しようとも関与せず、本当に重要なものを一つ得られれば、それだけで世界全てを得ることになる。その世界は、惜しみない力と勢力を我に与えるであろう。


ためらうことなく突き進め。






[卿が、我との約束を守ってくれたことに感謝する]








即位礼が執り行われる前、金闕之を別途呼び出し、流罪や罷免はないと伝えたと同時に、一人を改めて任命し、特別な任務を進めさせた。






宮廷に戻り次第、勅旨を頒布することになるだろう。




ユンスは宮廷に戻れば、直提学(チクチェハク)に任命されることになる。





[だから、早く戻ってきて、我が目と耳を開き、真実を明らかにしてくれ]







進宴が盛大に執り行われていたが、席を退き、玉堂(オクダン)へ向かった。





以前、太平御覧 についての解釈をうまく説明できず、ユンスが怒っていたではないか。





戻る前に、しっかりと習得しておかねばならない。




[急ぐことはないな。すべてを読み終えるには三日あれば十分だろう]
























 By 朴允洙(パク・ユンス) 



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即位礼(そくいれい)はもちろんのこと、殿下 が翼善冠(よくぜんかん)をお召しになる姿すら拝見することもなく、宮を退くことになってしまった。








暗行 は決して新しいことではないが、ここ数年の間に漢陽 ですら飢えに苦しみ、命を落とす者の数が計り知れないほど民心が荒れているという噂が広まっている。







その実態が、今まさにこの身に感じられる。








都城 においても、比較的裕福な人々が集まる南村 ですら、一軒置きに壁越しから嘆き悲しむ声が途切れることなく聞こえてくる。






この南村ですらそうならば、六矣廛(ろくいぜん)の市場は一体どれほどのものか……。






訳も分からぬまま、ただ前へと駆け出した。






そこには—









生と死の境すら定かではないほど悲惨な光景が広がっていた。私は何も言えなかった。






「おやおや……どちらのお坊ちゃまが、こんな荒んだ場所へお出ましとは?」





市場の片隅で、何事もないかのように粟 を売る者に尋ねた。






「この遺棄 されたご遺体たちは、いつからこうして放置されているのか?」







「さあねぇ……半年くらいにはなるかのぅ?」





あまりにも事も無げに答える姿に、私は怒りを抑えられずに言った。





「人生至貴 、死後亦宜厚待 と申す。亡骸をこのように遺棄するとは、いかなる道理か!」





「お坊ちゃま、見るからに身分の高い方のようですな。どうか見なかったことにして、お帰りなさいまし。」






「官衙 に訴えはしなかったのか!」





「……あぁ、官衙ねぇ? 訴えたところで何が変わるってんですかい? 来月どころか、そのまた次の月に役人が来るかどうかも分からないってのに?」





「…………」





「それに、もし俺が訴えに行ったら、この生まれたばかりの子どもたちは誰が食わせるんで?」




己酉年 の大飢饉 。 

干ばつと冷害が重なり、食糧不足により幾万もの民が餓死した。




その後、辛亥年 の大飢饉が追い打ちをかけ、作況 が さらに悪化し、全国に飢饉が広がっている。







生きる者と死せる者が入り乱れ、命をつなごうと阿鼻叫喚 の地獄が広がる中、私は何も言わずに惠民院  へと向かった。















米を求め、果てしなく列をなす病人たち。





泣き叫ぶ赤子を背負う母。




不自由な父を抱え、待ち続ける子。





世話をする者もおらず、ただひたすら座って待つ幼い少女。




「…………...」





上衣の襟に忍ばせていた拳飯  を取り出し、少女に差し出すと、彼女は慌ててそれを受け取り、口に入れた。





「まぁまぁ! 今日は運のいい日だねぇ、お坊ちゃまのような心の優しいお方に出会えて、お腹を満たせるなんて!」





 少女に声をかける女がいた。




「この子かい? 親じゃないよ。この子の両親は飢え死にしちまった。だから私が惠民院へ連れてきたのさ。市場を見てごらんなさいな、親を亡くしても、幼い子はまず腹を満たすことが先決だから、笑いながら食べてるよ。でもそのうち、自分が孤児になったと気づいたときには、もう正気を失って彷徨い歩くしかないのさ。」







幼い少女は黙って口を動かす。





「この世にお坊ちゃまのような方がもっといれば、少しは生きやすくなるんだがねぇ……。」





「….........」









「お坊ちゃま、身なりからして高貴な家のご子息でしょう? それにしても、今回我々の宮廷に新しい王様が即位されたって、本当ですか?」




「あぁ、本当だ。」





「だけど、私たちのような下々の者には、王様が代わっても何も変わりゃしませんよ。王様の顔すら知らないし、お目にかかることもない。宮殿におわす高貴なお方だから、私たちと会うことなんてありゃしないさ。でもね、お坊ちゃまのような、こんなにも心優しくて、飢えて死ぬはずの子を助けてくださる方がいるのなら——私はそっちのほうがありがたいね。」









宮廷のどこかにおわす王ではなく、名も知らぬ旅人のひと握りの飯に感謝する人々を、誰が無知  だと笑えるだろうか。





行 なわぬ心 は、無 と何ら変わらない。







それこそが、真理 である。










  








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