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第一章 神編
気持ちと勝負
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アルバ魔法学園での試験を終えて城へ戻ったアースは、図書室へと足を運んだ。ここにある本を片っ端から読破する為に。
転生して精霊を生み出し、眠って起きたら千五百年過ぎていた。神界でやることが思いつかず下界へ降り立ったが、そもそも知識がなかった。前世の記憶にある異世界ファンタジー小説やゲームの知識だけでは、と思い図書室に来たのだ。
「多いなぁ」
種類わけされているのは、棚ごとに書き込みしてあり判断出来るが、魔法に関する本だけで棚が三つ埋まっていた。本一冊は辞書の厚みで、隙間なく入れられている。
衝撃的だったのが食事の棚で、本はたったの二冊しかなかった。内容を読んでわかったのは、焼くと煮るしかないこと。主食はパンで、焼いた肉にコカトリスの一つ目焼きと少しの野菜を添えて、魔牛の乳を温めた飲み物が、最上の食事と書かれており絶句した。
そっと棚に戻し、カイトが来るまで魔法に関する書物に没頭した。
「アース君、Sクラスおめでとう」
昼食の席で、まだ試験結果の合格通知を受け取っていない僕にアルシオンさんが告げた。
カイトが手渡す封筒はすでに空いていて、僕は引き気味に返答した。
「Sクラス…ですか」
「貴族ではない平民の立場でSクラスなどありえない!」
返答した言葉に被せられたアルトの声に、アルシオンさんの妻であるミューズ王妃が反応する。
「Sクラスは貴族のみと聞きます。けれど学園長がそう判断したのなら、それだけの能力があるんじゃないかしら」
「ですがっ」
「アルト。不満があるならアース君と勝負でもしてみると良い」
僕の了承なく、何故か話は進む。
カイトは無表情で次男のディークは黙々と食事をしていた。
気づけば僕以外は食事を終えていて、半ば強制的にアルシオンさんに指示されたカイトが僕を訓練場に立たせたところで、目の前の珍事にハッとした。
訓練場のフィールドにアルトと僕。
両者の様子が見れる観戦席にハルシオンさん、その後ろに近衛騎士団長、アルシオンさんの隣にミューズ王妃、ディーク君、カイト、審判役に執事長。
王族が見守る中での勝負に僕は、どう穏便に済ませるかを考えていた。
「相手を殺める魔法の使用を禁止し、その他は何をしても良しとします。それでは、始め!」
開始の合図と同時にアルトは、魔法を行使した。
「【ファイヤ・トリ・ランス】!」
アルトは周囲に三本の細く鋭い炎の槍を形成し、こちらへ一直線に放った。
「【ミラー・ヘキサ】」
冷静にこちらも魔法を行使。
図書室で読んだ、六属性魔法攻撃に対応出来るよう新たに作ったオリジナル魔法。それが、鏡のように反射対応する”優化魔法”。
相殺された火魔法にビックリのアルトは、続けて水魔法を使用した。
「【ウォータ・テトラ・ショット】!」
放たれたテニスボール程の水球四つをこちらも同じ魔法で相殺。
今度はこちらの番と、すぐに水球七つを叩き込んだ。
「【ウォータ・ヘプタ・ショット】」
「うわぁぁーーーー!!」
尻もちを着いたアルトの周囲の地面を円形に水球が着弾。これ以上は無意味と執事長は判断し、勝者が決まった。
わずか一分にも満たない高速決着に、満足気の僕とは反対に言葉の出ない観戦席の面々。
我に返ったアルシオンさんの言葉に僕は、学園に通う意味が半分消えたと思ったのだった。
転生して精霊を生み出し、眠って起きたら千五百年過ぎていた。神界でやることが思いつかず下界へ降り立ったが、そもそも知識がなかった。前世の記憶にある異世界ファンタジー小説やゲームの知識だけでは、と思い図書室に来たのだ。
「多いなぁ」
種類わけされているのは、棚ごとに書き込みしてあり判断出来るが、魔法に関する本だけで棚が三つ埋まっていた。本一冊は辞書の厚みで、隙間なく入れられている。
衝撃的だったのが食事の棚で、本はたったの二冊しかなかった。内容を読んでわかったのは、焼くと煮るしかないこと。主食はパンで、焼いた肉にコカトリスの一つ目焼きと少しの野菜を添えて、魔牛の乳を温めた飲み物が、最上の食事と書かれており絶句した。
そっと棚に戻し、カイトが来るまで魔法に関する書物に没頭した。
「アース君、Sクラスおめでとう」
昼食の席で、まだ試験結果の合格通知を受け取っていない僕にアルシオンさんが告げた。
カイトが手渡す封筒はすでに空いていて、僕は引き気味に返答した。
「Sクラス…ですか」
「貴族ではない平民の立場でSクラスなどありえない!」
返答した言葉に被せられたアルトの声に、アルシオンさんの妻であるミューズ王妃が反応する。
「Sクラスは貴族のみと聞きます。けれど学園長がそう判断したのなら、それだけの能力があるんじゃないかしら」
「ですがっ」
「アルト。不満があるならアース君と勝負でもしてみると良い」
僕の了承なく、何故か話は進む。
カイトは無表情で次男のディークは黙々と食事をしていた。
気づけば僕以外は食事を終えていて、半ば強制的にアルシオンさんに指示されたカイトが僕を訓練場に立たせたところで、目の前の珍事にハッとした。
訓練場のフィールドにアルトと僕。
両者の様子が見れる観戦席にハルシオンさん、その後ろに近衛騎士団長、アルシオンさんの隣にミューズ王妃、ディーク君、カイト、審判役に執事長。
王族が見守る中での勝負に僕は、どう穏便に済ませるかを考えていた。
「相手を殺める魔法の使用を禁止し、その他は何をしても良しとします。それでは、始め!」
開始の合図と同時にアルトは、魔法を行使した。
「【ファイヤ・トリ・ランス】!」
アルトは周囲に三本の細く鋭い炎の槍を形成し、こちらへ一直線に放った。
「【ミラー・ヘキサ】」
冷静にこちらも魔法を行使。
図書室で読んだ、六属性魔法攻撃に対応出来るよう新たに作ったオリジナル魔法。それが、鏡のように反射対応する”優化魔法”。
相殺された火魔法にビックリのアルトは、続けて水魔法を使用した。
「【ウォータ・テトラ・ショット】!」
放たれたテニスボール程の水球四つをこちらも同じ魔法で相殺。
今度はこちらの番と、すぐに水球七つを叩き込んだ。
「【ウォータ・ヘプタ・ショット】」
「うわぁぁーーーー!!」
尻もちを着いたアルトの周囲の地面を円形に水球が着弾。これ以上は無意味と執事長は判断し、勝者が決まった。
わずか一分にも満たない高速決着に、満足気の僕とは反対に言葉の出ない観戦席の面々。
我に返ったアルシオンさんの言葉に僕は、学園に通う意味が半分消えたと思ったのだった。
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