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第一章 神編
非常識な存在
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城門では新たな主を待つカイトと、師匠であり友でもあるアースを待つアルトがいた。
季節は春。
明日で、中等部を卒業し高等部へ進級する者達の休みが終わる。明後日からは高等部で三つのコースへと別れるのだ。同じ学園の為、会わないことはないが会う機会は格段に減る。だから待っているのに、本人が中々来ないのだ。
痺れを切らしたアルトが呼びに戻ろうとした時、アースが走って向かって来た。
「遅い!」
「ごめん、遅れた」
それじゃぁと、三人で歩いて向かうことに。初めて訪れるので、アルトが道順を覚えたいと言った為だ。
貴族街の東区と城壁門のある南区の丁度中間方向、南東にある中道を通った所にその店はある。
王城前から東大通りへ進み、三軒目にある平民区への中道を入り、二軒進むと『食の棚』に到着する。
この通り、貴族街と違って平民区は建物の間隔が狭くなっており、平民の住む建物には特徴がない為、同じ作りになっていて迷子になりやすい。更に、大通りに面していない建物には日光が当たらないので、平民区はどこも暗い。夕方になると夜かと思う程で、必ず明かりが必要になる。
「へ~、結構しっかりした店だな」
三階建ての自宅兼飲食店を目にしてそう呟いたアルトを他所に、カイトが扉を開ける。
扉に付けられたベルが、チリンと歓迎の合図を送った。
「一階が店舗になってるのか?」
「あぁ、二階に応接室と倉庫。三階が住居だ」
「それにしても広いな。平民区の建物を知らないから判断がつかないんだが…カイト、これは普通の広さなのか?」
アルトがそう思うのも無理はないし、もちろん普通な訳がない。
空いていた建物四つ分の敷地に一つの建物がある。どう見ても異常で、平民区に貴族の屋敷があるのとそう変わらない。
更に建物への侵入防止の為、建設前の地面に防御の魔法陣と、王城に使用されている防護強化の魔法陣より強力なのを重ねてあるので、侵入と建物破壊が実質不可能になっている。防護には当然、破壊だけでなく防火や防蝕も当てはまる。
そのことを知っているカイトは微笑んで答えた。
「アース様が関わっているんです。当然、普通ではありません」
「……非常識な存在ある所に非常識な店ありということか」
「その通りです」
おいおいおい。二人して何を言ってるんだ。
僕はただ、建物を守ろうとしてるだけで……あ、その目はヤメテ。
「また学園で」そう言って帰って行ったアルトを見送った僕は、部屋へ行き眠りについた。
カイトは食料を市場で購入してから帰宅した。
主の眠りを妨げないよう、戸締りをして静かに自室へと戻るのであった。
季節は春。
明日で、中等部を卒業し高等部へ進級する者達の休みが終わる。明後日からは高等部で三つのコースへと別れるのだ。同じ学園の為、会わないことはないが会う機会は格段に減る。だから待っているのに、本人が中々来ないのだ。
痺れを切らしたアルトが呼びに戻ろうとした時、アースが走って向かって来た。
「遅い!」
「ごめん、遅れた」
それじゃぁと、三人で歩いて向かうことに。初めて訪れるので、アルトが道順を覚えたいと言った為だ。
貴族街の東区と城壁門のある南区の丁度中間方向、南東にある中道を通った所にその店はある。
王城前から東大通りへ進み、三軒目にある平民区への中道を入り、二軒進むと『食の棚』に到着する。
この通り、貴族街と違って平民区は建物の間隔が狭くなっており、平民の住む建物には特徴がない為、同じ作りになっていて迷子になりやすい。更に、大通りに面していない建物には日光が当たらないので、平民区はどこも暗い。夕方になると夜かと思う程で、必ず明かりが必要になる。
「へ~、結構しっかりした店だな」
三階建ての自宅兼飲食店を目にしてそう呟いたアルトを他所に、カイトが扉を開ける。
扉に付けられたベルが、チリンと歓迎の合図を送った。
「一階が店舗になってるのか?」
「あぁ、二階に応接室と倉庫。三階が住居だ」
「それにしても広いな。平民区の建物を知らないから判断がつかないんだが…カイト、これは普通の広さなのか?」
アルトがそう思うのも無理はないし、もちろん普通な訳がない。
空いていた建物四つ分の敷地に一つの建物がある。どう見ても異常で、平民区に貴族の屋敷があるのとそう変わらない。
更に建物への侵入防止の為、建設前の地面に防御の魔法陣と、王城に使用されている防護強化の魔法陣より強力なのを重ねてあるので、侵入と建物破壊が実質不可能になっている。防護には当然、破壊だけでなく防火や防蝕も当てはまる。
そのことを知っているカイトは微笑んで答えた。
「アース様が関わっているんです。当然、普通ではありません」
「……非常識な存在ある所に非常識な店ありということか」
「その通りです」
おいおいおい。二人して何を言ってるんだ。
僕はただ、建物を守ろうとしてるだけで……あ、その目はヤメテ。
「また学園で」そう言って帰って行ったアルトを見送った僕は、部屋へ行き眠りについた。
カイトは食料を市場で購入してから帰宅した。
主の眠りを妨げないよう、戸締りをして静かに自室へと戻るのであった。
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