神様のお楽しみ!

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第二章 婚約破棄編

真実

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 「入れ」
 王城の応接間に小綺麗な服装の女性と、メイド服を着た女性がそれぞれ椅子に座る。
 見届けた後、こちらから自己紹介をした。

 「初めまして、アースです。隣はアルバ王国のアグエイアス国王陛下で、あなた方はシャイニーさんとエルシャさんで良いかな?」

 「「はい」」

 「まず、王国で作られた三冊の本の内、一冊がこれです」

 「この本と共に、シャイニーさんの言い分を全て否定します」

 「私は間違ってないわ」

 「まず、本について話しましょう。さっきも言ったけど、王国で作られた三冊の内一冊がこの本になる。では、あとの二冊は?二冊の内一冊は、この国の宝物庫にあります。もう一冊は……」

 「アーテル聖国にあるわ」

 「何故?」

 「アーテル聖国の聖典は、三百年前に起きた襲撃事件を書き記した書物であり、ヒスク家の先祖が持ち帰った物よ。当時の国王陛下が渡したとヒスク家が主張しているもの」

 「その言葉には違う箇所がある。ヒスク家の先祖が渡されたらしい最後の一冊それは今、魔界にある。そして、アーテル聖国の聖典とやらは、三百四十六年前に起きた王国の事件を書き記した物ではない」

 「嘘だわ!」

 「君は、知らないことが多い。自分が信じたいものしか信じようとしないその姿勢は、エルシャさんをも傷つけるんだよ?気づいてないだろうけどね」

 「ここで、精霊について話をしようかな。この世界には精霊がいる。六属性の精霊がいて、その上に大精霊がいる。千五百年前にそれぞれの大精霊の元に六つの種族を生み出した。闇属性から天陰てんいん族、光属性から天陽てんよう族、火属性から龍族、水属性から魚人族、土属性からドワーフ族、風属性からハイエルフ族。そして、精霊ではない人族」

 「今この部屋には、僕を除いて三つの種族が集まってる。シャイニーを含む人族、リゲルさんはハイエルフ族…シャイニー、エルシャさんは何の種族だと思う?」

 「人族よ」

 エルシャさんはスッと立ち上がり、本来の姿を表した。鳥のようで真っ白な翼が輝きを放つ。
 その姿に皆、息を飲んだ。

 「シャイニー、彼女はまだ人族に見えるか?君の言う人族に見えるのか?」

 困惑した表情で固まった彼女は、答えることをせずただただ、長年そばにいた女性を見ていた。

 「彼女は天陽族。ハイエルフ族と同じで、神によって生み出された者達の子孫だ。君は、知らないことが多いんだよ」

 「さて、シャイニーが信じていたことが真実ではないとわかったところで、話は戻る。聖典とは、アルバ王国を拠点としていた〈白き翼〉というパーティのヒーラーであった、ヒスクという女性が三百四十六年前の事件を『悪魔族が人族を利用して起こしたこと』として書き記した、人族至上主義の書物だ」

 「真実はその逆で、『人族に利用された悪魔族が起こしたこと』だ。これを忘れない為に一冊目を宝物庫に、二冊目を魔界に、三冊目を閲覧可能にした。つまり、アーテルという国がやっていることは、アルバ王国への侮辱だ」

 「シャイニー、僕は後三つ君の知らないことを知ってる。一つは、彼女が話す方が良いだろう」

 エルシャさんが僕の言葉に頷き、話し始める。まず、人族ではないことを謝罪したエルシャさん。そして、アーテル聖国とアルバ王国の間にある海を渡った方法を話し始めた。
 結論から話すと、大精霊の助けを借りた。海に光の道を作り、人魚族や魚人族に海を渡る許可を貰って馬車で通ったのだ。
 

 エルシャさんが話し終えた後、シャイニーの顔は無表情だった。


 
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