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第二章 婚約破棄編
告白
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アビスの長話とシャイニーの力説が終わり、僕達は解散となった。シャイニーは次の報告会で、残念な者という目を向けられるに違いない。エルシャさんの話から想像すると、天界での言動もやや残念な方向。改心してくれと思いながら帰路についた。
シャイニーさんの両親と執事・使用人・メイドは、平民区に住むことを決めた。貴族街のある東区よりの平民区で、そこそこ値が張る場所だが就職に向けて励んでおり、商業ギルド、冒険者ギルド、役所と適材適所で別れるようだ。
ヴァイスは闇の大精霊アビスと共に、少しだけ魔界へ行き両親と話をしたようだ。孤児のことも過去も知らず十年王族として過ごしたことには、ヴァイス自身途中から涙したと言う。
母親の過去や僕との出会いも聞いて来たと言い、何やらカイトと話し込んでいた。
リズの魔界での戦いやその後を知らない僕は、安堵しながらヴァイスの話に耳を傾けた。魔界は実力至上主義で、力はもちろん、礼節にも気を配っていて王族教育があって良かったと話していた。
◆
アルバ魔法学園高等部もそろそろ卒業間近になってきた頃、修行を終えた少女はよろよろと師匠であるアクロの隣に腰掛けた。
「シュウ君、私もう疲れたよ~」
カウンター席に座るや否や突っ伏して泣き出すミーナ。
「アクロさんの弟子ってさ、何してんの?魔法の練習?」
「え、えっと……秘密、かなぁ?」
急に焦り出すミーナに、シュウ少年は少し考えてから口を開いた。
「…………なんか、すっげぇー怪しい。アクロさん!弟子の修行って何してるんですか?」
「ん?それはもちろん…ゎぷっ…ちょっと!みーちゃん?危ないでしょう、それに濃茶アイスが!!」
「わわ!ご、ごめんなさ~い!」
すんでのところで風魔法【浮遊】を使い、アイスを浮かせ皿に戻したアクロは隙ありと見てシュウ少年に伝えた。
「告白の練習してるのよ」
「な、何で、言うんですかぁ!!」
「はぁ?告白?ミーナって好きなやついたのか」
オロオロとするミーナを他所に、シュウ少年を除いた僕や他の客はニヤニヤしたりハラハラしていた。
ミーナが勇気を出して伝えれば良いだけのこと。だがこの少女はとんでもなく気弱でシャイなのだ。その為、集団行動はもちろん慣れた人以外と話すことも輪に加わることも、難しいを通り越して不可能に近い。そんな少女が、三年という長い月日を費やして一世一代の大舞台に挑もうとしている。
見なければ損。
これは常連の共通認識だ。
「シュウ君、あのね……」
「おう」
「シュウ君…す、す」
「す?」
いけ!言え!あと少し!そんな思いを全員が抱いていたその時!
「戻りましたー」
タイミング悪く、買い物組にと外へ出されていたヴァイスとカイトが戻って来てしまった。
『はああぁぁぁぁ……』
ほとんどの人がため息を吐いたことで、動揺し始める男性二人に少女が声を上げた。
「もう!タイミング悪いです!今からシュウ君に『好きです』って告白しようとしてたのに!!」
『えっっ』
突然の告白…いや、失態とでも言うべき状態に、ミーナ以外は唖然として彼女に目をやった。これにいち早く気づいたのは、頭は良いのに恋愛に鈍感なシュウ少年だった。
「ミーナ、お前今…」
「ん?」
「俺のこと好き…なのか?」
「え…………あっ!ああああああああぁぁぁ!!」
見てる側としては素直に喜べない状態で、言った本人にとっては黒歴史並の失態、言われた方は困惑とバラバラだった。言った本人はその場で丸くなっていて恥ずかしがっているのは一目瞭然。
しかし臆することなくシュウ少年はミーナに近づき、想いの答えを返した。
「俺もお前なら良いぜ。よろしくな、ミーナ!」
シュウ少年は二つ返事で了承した。
告白相手に背を向けるという新しい手法で想いを伝えた少女は、少年の返答を予想しておらずそのまま倒れてしまう。
「ま、告白出来たんだし結果オーライね」
アクロの言葉に店内の者達は同意した。
今日のことをきっと彼女は忘れたくても忘れないだろう。生きてる限り今回のことを知る者からイジられることは明白であり、それだけ彼女が他者から愛されてると言っても過言ではない。
集団行動を苦手とし学園に小テストや試験を受けに通うだけの彼女は、いつの間にか輪の中心にいた。
「努力は報われる」
誰かの言った言葉は、彼女の黒歴史と共に王国民に広まるのも時間の問題だった。
シャイニーさんの両親と執事・使用人・メイドは、平民区に住むことを決めた。貴族街のある東区よりの平民区で、そこそこ値が張る場所だが就職に向けて励んでおり、商業ギルド、冒険者ギルド、役所と適材適所で別れるようだ。
ヴァイスは闇の大精霊アビスと共に、少しだけ魔界へ行き両親と話をしたようだ。孤児のことも過去も知らず十年王族として過ごしたことには、ヴァイス自身途中から涙したと言う。
母親の過去や僕との出会いも聞いて来たと言い、何やらカイトと話し込んでいた。
リズの魔界での戦いやその後を知らない僕は、安堵しながらヴァイスの話に耳を傾けた。魔界は実力至上主義で、力はもちろん、礼節にも気を配っていて王族教育があって良かったと話していた。
◆
アルバ魔法学園高等部もそろそろ卒業間近になってきた頃、修行を終えた少女はよろよろと師匠であるアクロの隣に腰掛けた。
「シュウ君、私もう疲れたよ~」
カウンター席に座るや否や突っ伏して泣き出すミーナ。
「アクロさんの弟子ってさ、何してんの?魔法の練習?」
「え、えっと……秘密、かなぁ?」
急に焦り出すミーナに、シュウ少年は少し考えてから口を開いた。
「…………なんか、すっげぇー怪しい。アクロさん!弟子の修行って何してるんですか?」
「ん?それはもちろん…ゎぷっ…ちょっと!みーちゃん?危ないでしょう、それに濃茶アイスが!!」
「わわ!ご、ごめんなさ~い!」
すんでのところで風魔法【浮遊】を使い、アイスを浮かせ皿に戻したアクロは隙ありと見てシュウ少年に伝えた。
「告白の練習してるのよ」
「な、何で、言うんですかぁ!!」
「はぁ?告白?ミーナって好きなやついたのか」
オロオロとするミーナを他所に、シュウ少年を除いた僕や他の客はニヤニヤしたりハラハラしていた。
ミーナが勇気を出して伝えれば良いだけのこと。だがこの少女はとんでもなく気弱でシャイなのだ。その為、集団行動はもちろん慣れた人以外と話すことも輪に加わることも、難しいを通り越して不可能に近い。そんな少女が、三年という長い月日を費やして一世一代の大舞台に挑もうとしている。
見なければ損。
これは常連の共通認識だ。
「シュウ君、あのね……」
「おう」
「シュウ君…す、す」
「す?」
いけ!言え!あと少し!そんな思いを全員が抱いていたその時!
「戻りましたー」
タイミング悪く、買い物組にと外へ出されていたヴァイスとカイトが戻って来てしまった。
『はああぁぁぁぁ……』
ほとんどの人がため息を吐いたことで、動揺し始める男性二人に少女が声を上げた。
「もう!タイミング悪いです!今からシュウ君に『好きです』って告白しようとしてたのに!!」
『えっっ』
突然の告白…いや、失態とでも言うべき状態に、ミーナ以外は唖然として彼女に目をやった。これにいち早く気づいたのは、頭は良いのに恋愛に鈍感なシュウ少年だった。
「ミーナ、お前今…」
「ん?」
「俺のこと好き…なのか?」
「え…………あっ!ああああああああぁぁぁ!!」
見てる側としては素直に喜べない状態で、言った本人にとっては黒歴史並の失態、言われた方は困惑とバラバラだった。言った本人はその場で丸くなっていて恥ずかしがっているのは一目瞭然。
しかし臆することなくシュウ少年はミーナに近づき、想いの答えを返した。
「俺もお前なら良いぜ。よろしくな、ミーナ!」
シュウ少年は二つ返事で了承した。
告白相手に背を向けるという新しい手法で想いを伝えた少女は、少年の返答を予想しておらずそのまま倒れてしまう。
「ま、告白出来たんだし結果オーライね」
アクロの言葉に店内の者達は同意した。
今日のことをきっと彼女は忘れたくても忘れないだろう。生きてる限り今回のことを知る者からイジられることは明白であり、それだけ彼女が他者から愛されてると言っても過言ではない。
集団行動を苦手とし学園に小テストや試験を受けに通うだけの彼女は、いつの間にか輪の中心にいた。
「努力は報われる」
誰かの言った言葉は、彼女の黒歴史と共に王国民に広まるのも時間の問題だった。
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