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第三章 転生編
国王への報告
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アズラクさんと話し終えてギルドに戻ると、〈竜の牙〉の面々はいなくなっていた。依頼でも受けに行ったんだろうか。
ヒンセク国を出て、付近の森に足を運んだ。誰かテイム出来そうな魔物に会えるかな…そんな気持ちで入っていった。
◆
俺は、王都の冒険者ギルドマスターで元Aランク冒険者のアズラク。男だ。俺は今この国の国王に、謁見という名の談笑寄りの報告をするところだ。
国王で旧友のランゼル・フォン・ヒンセクが入室して来た。
国王の証である王の冠を載せた、俺と同じでガタイが良く懐の深い奴だ。波打ったやや長めの白髪に、首元が白くふわふわした赤のマントを羽織っている。
「久しいな、アズラク」
「はっ。この度は急な謁見、申し訳なく」
「よい。お主に敬語を使われるとむず痒くて仕方ない。宰相もよいな」
頷く宰相に会釈して、早速本題へ入ることにした。
「〈竜の牙〉っつぅ冒険者パーティがいるんだが、Aランクと高いから良いパーティーなのかと思ってたが、どうも違うようでな。前任のやつが何かやったかも知れん」
「〈竜の牙〉とやらは聞いたことがある。確か…攻撃こそ至高とかなんとか」
「まぁそうだな。でだ、そのパーティーを追放されたやつがいる。俺の鑑定で見ると、補助系の身体強化スキルがあった」
そう言った瞬間、ランゼルは即座に反応。「ほう」と小さく呟いた。
身体強化は自分自身にしか使えない自己強化スキルで、他の者にスキルの効果は及ばない。しかし補助系なら別だ。自己強化は出来ないが、他者にスキルの効果を与えられるのだ。だからこそ重宝されるべき存在だが、追放された。攻撃を受けたという理由で。
「そのパーティーは頭の弱い集団なのか?」
「自分は強いと錯覚してる節はある。さて、何故俺がわざわざ報告に来たのかには、理由が二つある。一つはそいつが転生者だからだ。別の世界の記憶を持ったやつがこの世界の住人に宿って、今生きてる。転生して目が覚めパーティーから追放された、そんなもん普通に考えれば何かしらしてもおかしくない。要注意人物だ、復讐があってもおかしくねぇ」
「もう一つの理由が、いやこっちのが危険だな。テイムスキルっつぅ見たこともないスキルを持ってやがる。この世界の神に貰ったらしいが、要は魔物を従えることが出来るスキルだ」
「処刑か?」
「そう、急ぐな。条件があるんだよ、まず魔物は悪とか敵意に敏感だ。ムリやり従わせるようなことは、出来ない。純粋な優しい心で魔物と接して親密度を上げた善人、これが条件だ」
「ふむ。ならば近くに悪人や敵意を持った者がいれば、その者も魔物にとっては敵となるし、優しき心を持ち続けなければならんのだな?厳し過ぎんか」
「むしろ、戦力が増える点で言えば妥当な条件だな。従える数はわからん。そう多くはないだろうが、仲間と言えども魔物に変わりはない。テイムされた魔物を討伐する者や恐怖する者もいるだろう。だが本人からすりゃ、神経すり減らして失敗覚悟で仲間にしたのに、門前払いだとか討伐されたら激怒もんだ」
「その為の報告か。その者がこの国にいる限りは下手な対応をしないよう、騎士団に通達しておこう」
こうして俺は無事、話し合いを終えて帰路についた。
タイヨウが何の魔物をテイムするかはわからん。不安しかないが当分、見守ることにしよう。
ヒンセク国を出て、付近の森に足を運んだ。誰かテイム出来そうな魔物に会えるかな…そんな気持ちで入っていった。
◆
俺は、王都の冒険者ギルドマスターで元Aランク冒険者のアズラク。男だ。俺は今この国の国王に、謁見という名の談笑寄りの報告をするところだ。
国王で旧友のランゼル・フォン・ヒンセクが入室して来た。
国王の証である王の冠を載せた、俺と同じでガタイが良く懐の深い奴だ。波打ったやや長めの白髪に、首元が白くふわふわした赤のマントを羽織っている。
「久しいな、アズラク」
「はっ。この度は急な謁見、申し訳なく」
「よい。お主に敬語を使われるとむず痒くて仕方ない。宰相もよいな」
頷く宰相に会釈して、早速本題へ入ることにした。
「〈竜の牙〉っつぅ冒険者パーティがいるんだが、Aランクと高いから良いパーティーなのかと思ってたが、どうも違うようでな。前任のやつが何かやったかも知れん」
「〈竜の牙〉とやらは聞いたことがある。確か…攻撃こそ至高とかなんとか」
「まぁそうだな。でだ、そのパーティーを追放されたやつがいる。俺の鑑定で見ると、補助系の身体強化スキルがあった」
そう言った瞬間、ランゼルは即座に反応。「ほう」と小さく呟いた。
身体強化は自分自身にしか使えない自己強化スキルで、他の者にスキルの効果は及ばない。しかし補助系なら別だ。自己強化は出来ないが、他者にスキルの効果を与えられるのだ。だからこそ重宝されるべき存在だが、追放された。攻撃を受けたという理由で。
「そのパーティーは頭の弱い集団なのか?」
「自分は強いと錯覚してる節はある。さて、何故俺がわざわざ報告に来たのかには、理由が二つある。一つはそいつが転生者だからだ。別の世界の記憶を持ったやつがこの世界の住人に宿って、今生きてる。転生して目が覚めパーティーから追放された、そんなもん普通に考えれば何かしらしてもおかしくない。要注意人物だ、復讐があってもおかしくねぇ」
「もう一つの理由が、いやこっちのが危険だな。テイムスキルっつぅ見たこともないスキルを持ってやがる。この世界の神に貰ったらしいが、要は魔物を従えることが出来るスキルだ」
「処刑か?」
「そう、急ぐな。条件があるんだよ、まず魔物は悪とか敵意に敏感だ。ムリやり従わせるようなことは、出来ない。純粋な優しい心で魔物と接して親密度を上げた善人、これが条件だ」
「ふむ。ならば近くに悪人や敵意を持った者がいれば、その者も魔物にとっては敵となるし、優しき心を持ち続けなければならんのだな?厳し過ぎんか」
「むしろ、戦力が増える点で言えば妥当な条件だな。従える数はわからん。そう多くはないだろうが、仲間と言えども魔物に変わりはない。テイムされた魔物を討伐する者や恐怖する者もいるだろう。だが本人からすりゃ、神経すり減らして失敗覚悟で仲間にしたのに、門前払いだとか討伐されたら激怒もんだ」
「その為の報告か。その者がこの国にいる限りは下手な対応をしないよう、騎士団に通達しておこう」
こうして俺は無事、話し合いを終えて帰路についた。
タイヨウが何の魔物をテイムするかはわからん。不安しかないが当分、見守ることにしよう。
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