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ホストへの気持ちがわからないらしい。1
しおりを挟む好きではある。好きではある、のだが。
俺はアイスコーヒーに口もつけず、所在なくただそわそわとし、ルミちゃんが来るのを待っている。女性と密会していることがスバルにバレたら殺されるかもしれない。でも、ほかに話を聞いてもらえそうな人が思い浮かばなかったので、俺は命がけで彼女にすがることにした。
ルミちゃんは待ち合わせ時間ちょうどにやって来た。
「お待たせ!優也さん、お久しぶりですね」
「ルミちゃん、ほんっとうに申し訳ない。急に呼び出したりして」
「いえいえ。私もそろそろ、スバルさんとの詳しい話を聞かせてもらえないかなって期待してたころでしたから」
久々に見たルミちゃんは相変わらずキャバ嬢っぽくなく、ふわふわしたピンクのワンピースがよく似合っていてとても可愛い。まさか彼女が生粋の腐女子だとは、誰にも予想できないだろう。
「……で、相談ってなんです?」
「相談というか」
俺はここ最近考えていたモヤモヤとした事柄を、一つひとつ述べていった。
◆
一番はじめに強く感じたのは、水族館に行ったときのことだ。哀子と夕陽くんに遭遇し、人がいる館内で俺たちが付き合っているという話題に触れたあとで、スバルはしょげていた。ひどく反省している様子だった。
「……優也、ごめんね」
あいつはあのとき、そう言ったのだ。そして俺は驚いた。
なにを謝ることがあるのだ、と、本気で思った。
スバルが時折そういう繊細な一面を見せると、愛おしく思う反面で、たじろいでしまう。包み込んでやりたいのに、どう対応するのが正解なのかわからなくなってしまうから。
結局俺はその日、気持ちを言葉にすることから逃げた。日頃の態度で好きだと表しているつもりだし、それはあいつだってわかっているはずだ。その考えに逃げたものの、胸の中にはわだかまりが残った。伝えたいことを正しく伝えられていないというもどかしさが、あれ以来ずっと、俺の体内に渦巻いている。
◆
「男同士が付き合うって、どういうことなのかなって思って……」
「どういうこと、と申しますと」
ルミちゃんはカフェオレを一口飲み、目をぱちくりさせている。俺はため息をついた。
「正解とか、ないのはわかってるんだけど。俺のあいつに対する好きは、どういうものなのかなって……。別れたいわけじゃないし、一緒にいて楽しいけど、泊まった日もあいつ、背中向けてさっさと寝ちゃったんだよな。距離感を掴みかねてるというか……」
「優也さん、スバルさんのこと見て、変な気持ちになることないんですか?」
「へ、変な?!」
変な声が出た。思い巡らしてみる。……ない!絶対にない!
「ない!」
「あるから気にしてるのかなって思ったんですけど……あるけど踏み込む勇気はなくて、もしかしたら向こうも傷ついてるのかとか、俺はどうしたいんだろうとか、そういう悶々とした感情に振り回されてる、みたいな」
「ないない!」
俺は否定した。泊まった夜の、俺の中ではなかったことにすると決めたあの夜中のキスを今、思いっきり意識してしまっている。だからこそ、俺は強く否定した。
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