【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます

猫足

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オフの日に君と2

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二名がけのテーブルに通されて、向かい合って麺をすすっていると、こいつと俺がもう何度も共にメシを喰ってきた仲のような気さえしてくる。

スバルの言う通り、ラーメンは本当に美味しかった。店もこざっぱりとしていて雰囲気がよく、夜中に食べても胃もたれしない、程よいあっさり感がいい。
普段こってり派の俺も、かなりおいしくいただくことが出来た。


「そういや、スバルの家はどの辺りなの?」


どうでもいいことだが話の種に聞いてみた。


「なに急に。もしかして、また僕と遊んでくれんの?」
「そう簡単に次があると思うな」
「じゃあ言わないよっ」


スバルはふふふ、と、さも面白そうに笑うとれんげでスープをすする。


「たまには僕もさ、女の子と同伴とかじゃなくて、友達と気軽にご飯食べたりしたいわけよ」
「そんで誘うのが、一週間前に出会ったばかりの俺なわけ?」


言いながら、哀子もそうかと思い出した。元の友達とはなかなか予定が合わず、夜に誘えるのは同業の子か俺か、と前に言っていた。
つまり、俺は誰から見ても暇そうだと認定されているらしい。不服だが、仕事以外はほとんど予定がないので間違いではなかった。
スバルはにっこりと笑った。


「うん、僕、優也くんすげータイプだからさ」
「はあ?」


なんか初めて会った時もそんなこと言ってたような。


「意外だろ?こう見えても、好きになったら一直線なタイプなのよ」
「なんなんだ、そのキャラは」
「かわいい弟キャラ?」
「だとしたら設定に無理があります」
「なかなかいないけどな、こんなにかわいい弟は」


自信満々にそう断言するスバルの顔を、ラーメンの湯気越しに眺めた。
まつげが長いアーモンド型の大きな目と、すっと通った鼻筋。笑うと時折八重歯が見え、相手に人なつこい印象を与える。
ホストらしく長めで薄銀色に染めた髪の毛は、店にいる時のようなヘアメイクを今日はしていなくて、自分で軽くセットしただけのようだ。しかしその無造作ヘアも、顔がいいからサマになっている。


比べるように、俺は25年間見てきた自分の顔を頭の中で思い浮かべた。
社会人になってからは黒を貫いている短めの髪。人からよく指摘される三白眼。高くもなく低くもない鼻。軽薄そうな唇。唯一身長だけはスバルより高いが、他で優っている部分は一つもないような気がする。


勝手にふてくされて不愉快な気分になったので、勢いよく麺を吸い込んだ。
神様は不公平だ。俺もスバルのような見た目があったら、ホストにでもなって女をはべらかし、荒稼ぎもしただろう。



「…ホストってもっと性格悪いやつばっかりなのかと思ってたよ」



これほどの美形で、中身が嫌なやつだったら納得もできただろうに、スバルの天真爛漫さが逆に鼻につく。でもなぜか、嫌いにはなれそうもない。


「えっ、もしかして褒めてくれてる!?」
「褒めるっていうか、おまえは強引で迷惑なやつだけど、なんか憎めない。もし計算でやってるとしたらそれはそれですごい」
「け、計算もあるよ!」
「嘘つけ。怖いわ」


思わず笑ってしまった。


「哀子が気に入ってる夕陽くんもいい子だったし、なんかすごいんだな、ホストって」
「すごいかなあ。俺からしたら、昼間働く方がすごいと思うけど」


それはもちろんそうで、昼と夜どっちの方が上ということもないんだけど。俺がすごいと言ったのは、なにも職種や働く時間だけのことではない。


「なんかその、ありのままで価値ある感じ。自信ある感じ。尊敬するし、実際におまえたちはキラキラしてる。すごい」


スバルは不思議そうな顔をした。


「優也くんは自信がないの?」
「ないこともないけど、あるとも言えないな。そういうの、今まで考えたこともなかった」
「へー。背高いしかっこいいのに意外だな」
「そんなこと言うの、おまえくらいだよ」
「まじで?嬉しい」


食べ終わった器を脇においやって、スバルは頬杖をついて俺の方を見ている。なんなんだ。こいつに貢ぐ女の子の気持ちが、理解はできないが少しだけわかると思ってしまった。

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