【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます

2LDKで君と3

「だよね、僕もお腹すいた。すぐ準備するから座ってて！」


スバルは飛び跳ねるようにしてキッチンに向かう。


「……本当にお前が作るの？手伝う？」
「作るってほどじゃないよ。お客さんにお土産でもらったレトルトのカレーあるから、食べよ。一日三組しか入れない有名店の、数量限定のやつらしいよ。ごはんはもう炊いてあるし」
「カレー最近食べてなかったな。いいね」
「あっためるだけだから座ってて。なんでもそのへんにあるもの、適当に見てていいし」
「はいよ」


そのへんにあるものと言っても、スバルの家は綺麗に片付いているので、手の届くところにはほとんど何もなかった。
几帳面なのかわざわざ片付けてくれたのか、などとさっきは想像したが、ひょっとすると定期的にやってくる女の子でもいて、掃除をしてくれているのかもしれない。すべての可能性の中でそれが一番しっくりくる気がした。別にどれでもいいけど。



ふと、ポストに届いたのであろうまだ開けていないハガキ類や公共料金の封筒が、テーブルの角にまとめておいてあるのに気づいた。


……あいつ、源氏名は碧スバルなんて気取った名前でかっこつけてるけど、本名なんて言うんだろ。


あの見た目でめちゃくちゃ古風な名前とかだったらウケるなー、と、いたずら心が湧いてニヤニヤしてしまう。


ダイニングキッチンだが、スバルは食器棚と電子レンジを行き来していてこっちを気にしている様子がない。
まあ、好奇心に駆られて宛名を見るくらいどうってことないだろうが、一応こっそりとはがきを一枚手に取った。


裏返してみると、そこには、青木昴と書かれている。


アオキスバル。


ほぼ本名じゃねえか。


「あーあ、つまんねっ」
「んー？なんか言った？」
「なんでもねーよ！」


俺はハガキを乱暴に元に戻すと、少しでもスバルの財政を圧迫してやるという名目でごはんを三杯もおかわりしてやった。
腹いせのつもりだったのに、何も知らないスバルはそんな俺を見て「おいしい？」なんて、さも嬉しそうにニコニコと笑っている。カレー以外のおかずまで色々と出してくれたりして、甲斐甲斐しいことこの上ない。


……なんか不愉快だ。