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第三章
犬の真実
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桃太郎はキビ団子と2年前に隣村の侍から奪った刀を腰に差して旅に出た。
道中、旅人を見かけると襲い金目のものを持っていないか脅し、奪い、盗賊としての領分を発揮していた。
桃太郎は盗賊なのだ。しかし、桃太郎は殺人鬼ではない。大人しく金品を差し出せば命までは取ることはしない。
裏を返せば、騒がれれば躊躇なく旅人を切り捨てるということだが。
そんな血にまみれた旅を続ける桃太郎の前に、煌びやかな着物と見るからに高価そうな刀を腰に差す旅人が現れた。
その旅人は屈強な体つきで背丈も桃太郎より、頭1つ分大きかった。
此奴はいい金づるになりそうだ。桃太郎はそう考えてその男の後を付けた。
だが、その男は桃太郎の尾行に気が付いていた。桃太郎の目論見は甘かったのだ。
目の前の大男が、藪の中に入っていった。桃太郎は後を付ける。
しかし、藪の中に入ると、大男の姿は見えなくなった。桃太郎が思わず立ち止まると、頭に強い衝撃を受けた。
そして、そのまま気を失ってしまった。
気が付くと桃太郎は、木に縛られている状態だった。目の前には、大男が刀を片手にこちらを睨んでいた。
「おめぇ、この俺から追い剝ぎしようとはいい度胸してるじゃねぇか。その度胸に免じて、俺の自慢の刀でぶった切ってやるよ。」
大男は目を血走らせながら、刀を振り回していた。
ここで桃太郎の物語は終わってしまうのか!?
否、ここは狂人夫婦に盗賊としての英才教育を受けた桃太郎。
そのよく働く悪知恵を活かしてここを上手く乗り切ってくれるだろう。
「おっちゃん。勘違いしないでくれよ。俺はあんたから追いはぎしようなんて考えちゃいないよ。」
「ほら吹いてんじぇねぇ、この餓鬼!」
大男が今にも切りかかりそうな勢いで近づいてくる。
「聞いてくれよ。おっちゃん。あんたは相当名の売れた盗賊だと見た。俺を弟子にしてほしいんだ。」
「こう見えて俺は地元じゃ、盗賊の端くれだった。でもよ、侍の刀盗っちまったら流石にヤバいことになってよ。
こうして逃げてきたんだ。でも、俺はもっと立派な盗賊になりたいんだ。頼むよ、師匠。」
「調子いいこと言っても無駄だぞ。お前を弟子にだ?そんなの俺になんにも旨味がないじゃねぇか。」
「そんなことないよ。師匠。この刀を盗った時に、侍からそれはそれは高級な食い物を盗ってきたんだ。」
大男に足が止まる。
「なんだそれは。早く出せ!」
「出すよ。出すから、縄をほどいてくれ。師匠なら俺なんて縛らなくても怖くないでしょ。」
「あたりめぇだろ。クソガキ。」
大男は体の大きさとは裏腹に、脳みそは桃太郎のそれより幾分か小さいようだった。
桃太郎の縄が切られる。ここが、大男の運の尽きだった。
桃太郎は大男に礼を言いながら、懐の中の巾着からキビ団子を一つ取り出す。
「これだよ。貴重なものだからゆっくり食べてよね。」
大男は桃太郎からキビ団子を奪い取り、一口でそれを食べる。
「不思議な味だな。こりゃなんだ。」
「どうだい?気分は。」
桃太郎は冷たい笑みを浮かべて大男に尋ねる。
突如、大男の目には、今まで少年に見えた桃太郎がこの世のものではない怪物に見えた。
「う、うわぁぁ、く、くるな!バケモン!」
桃太郎は親譲りの不愉快な笑い声をあげる。
「馬鹿だね。おっさん。俺が化け物に見えるのかい。あんたは俺の言うことを聞くんだよ。じゃないと頭がおかしくなってよ。」
「死ぬぜ。」
大男の目には恐怖の色が浮かぶ。
桃太郎にはそれが楽しくして仕方がないようだ。
「名前を付けてやるよおっさん。そうだな、うーん。そうだ、あんたの名前は犬だ。」
「俺に忠実な犬になれ。でかいおっさん。」
「俺に呼ばれたら、ワンと言って尻尾を振って走ってくるんだよ。」
犬と呼ばれた男は先ほど刀を振り回していた人物とは思えないほど、小さく丸まって震えていた。
それはまるで雷鳴に怯え、尻尾を丸める犬の様だった。
道中、旅人を見かけると襲い金目のものを持っていないか脅し、奪い、盗賊としての領分を発揮していた。
桃太郎は盗賊なのだ。しかし、桃太郎は殺人鬼ではない。大人しく金品を差し出せば命までは取ることはしない。
裏を返せば、騒がれれば躊躇なく旅人を切り捨てるということだが。
そんな血にまみれた旅を続ける桃太郎の前に、煌びやかな着物と見るからに高価そうな刀を腰に差す旅人が現れた。
その旅人は屈強な体つきで背丈も桃太郎より、頭1つ分大きかった。
此奴はいい金づるになりそうだ。桃太郎はそう考えてその男の後を付けた。
だが、その男は桃太郎の尾行に気が付いていた。桃太郎の目論見は甘かったのだ。
目の前の大男が、藪の中に入っていった。桃太郎は後を付ける。
しかし、藪の中に入ると、大男の姿は見えなくなった。桃太郎が思わず立ち止まると、頭に強い衝撃を受けた。
そして、そのまま気を失ってしまった。
気が付くと桃太郎は、木に縛られている状態だった。目の前には、大男が刀を片手にこちらを睨んでいた。
「おめぇ、この俺から追い剝ぎしようとはいい度胸してるじゃねぇか。その度胸に免じて、俺の自慢の刀でぶった切ってやるよ。」
大男は目を血走らせながら、刀を振り回していた。
ここで桃太郎の物語は終わってしまうのか!?
否、ここは狂人夫婦に盗賊としての英才教育を受けた桃太郎。
そのよく働く悪知恵を活かしてここを上手く乗り切ってくれるだろう。
「おっちゃん。勘違いしないでくれよ。俺はあんたから追いはぎしようなんて考えちゃいないよ。」
「ほら吹いてんじぇねぇ、この餓鬼!」
大男が今にも切りかかりそうな勢いで近づいてくる。
「聞いてくれよ。おっちゃん。あんたは相当名の売れた盗賊だと見た。俺を弟子にしてほしいんだ。」
「こう見えて俺は地元じゃ、盗賊の端くれだった。でもよ、侍の刀盗っちまったら流石にヤバいことになってよ。
こうして逃げてきたんだ。でも、俺はもっと立派な盗賊になりたいんだ。頼むよ、師匠。」
「調子いいこと言っても無駄だぞ。お前を弟子にだ?そんなの俺になんにも旨味がないじゃねぇか。」
「そんなことないよ。師匠。この刀を盗った時に、侍からそれはそれは高級な食い物を盗ってきたんだ。」
大男に足が止まる。
「なんだそれは。早く出せ!」
「出すよ。出すから、縄をほどいてくれ。師匠なら俺なんて縛らなくても怖くないでしょ。」
「あたりめぇだろ。クソガキ。」
大男は体の大きさとは裏腹に、脳みそは桃太郎のそれより幾分か小さいようだった。
桃太郎の縄が切られる。ここが、大男の運の尽きだった。
桃太郎は大男に礼を言いながら、懐の中の巾着からキビ団子を一つ取り出す。
「これだよ。貴重なものだからゆっくり食べてよね。」
大男は桃太郎からキビ団子を奪い取り、一口でそれを食べる。
「不思議な味だな。こりゃなんだ。」
「どうだい?気分は。」
桃太郎は冷たい笑みを浮かべて大男に尋ねる。
突如、大男の目には、今まで少年に見えた桃太郎がこの世のものではない怪物に見えた。
「う、うわぁぁ、く、くるな!バケモン!」
桃太郎は親譲りの不愉快な笑い声をあげる。
「馬鹿だね。おっさん。俺が化け物に見えるのかい。あんたは俺の言うことを聞くんだよ。じゃないと頭がおかしくなってよ。」
「死ぬぜ。」
大男の目には恐怖の色が浮かぶ。
桃太郎にはそれが楽しくして仕方がないようだ。
「名前を付けてやるよおっさん。そうだな、うーん。そうだ、あんたの名前は犬だ。」
「俺に忠実な犬になれ。でかいおっさん。」
「俺に呼ばれたら、ワンと言って尻尾を振って走ってくるんだよ。」
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