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第七章
鬼の真実
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とうとう桃太郎の元に、犬・猿・雉の三匹の家来が集まった。
お腰に付けたキビ団子を桃太郎に与えられ、彼の家来となったのだ。
言い伝えられている物語と異なる点は、三匹は桃太郎に対する忠誠心ではなく、恐怖心で支配されているところか。
桃太郎軍団が遂に完成したところで、彼はいよいよ鬼討伐に向けて本格的に乗り出した。
犬には、各地で鬼の悪い噂をあること無いこと言い回らせた。
猿には、鬼の数や住処の正確な情報を文字通り体を張って、取ってこさせた。
雉には、鬼の仕業に見せかけて様々な村で無差別に人を殺して回らせた。
彼らは、悔しさと情けなさに涙を零しながら、桃太郎の命令に従うしかなかった。それしか、桃太郎の恐怖から逃れる術がなかったからだ。
準備は着々と進んでいた。世間はいつの間にか、鬼の悪行の噂でもちきりになった。それは、罪のない人から金品を奪い、そして遊び半分で人間を殺す。
そんな、怪物たちであると噂は広まっていったのである。勿論、それらの鬼畜の所業はすべて桃太郎一味の仕業である。
そして鬼についても、瀬戸内海の小さな島で100匹ほどの鬼が小さな集落を作り、暮らしていることが分かった。
そこには、大量に金銀財宝も蓄えられているとの情報も入手していた。
いつの間にか、その島は鬼を憎む人間たちからこう呼ばれた。
「鬼ヶ島」と。
時を同じくして、通称鬼ヶ島では、鬼たちが平穏な生活を享受していた。
彼らはまだ気づいていなかった。自分たちが少しづつ、しかし確実に破滅の道に近づいていることを。
"そして、その時を舌なめずりしながら好機を伺っている魔物の存在に。
"
「お父さん。僕も仕事がしたいよ。もう大人だよ!人間を悪党から守ることなんてわけないさ。」
小さな、赤色の肌をした子供の鬼がそう言った。
「お前には、まだ早いよ。人間を舐めてはいけないよ。確かに彼らは私たちより小さく、力も弱い生き物だ。
だけどね、彼らが知恵を絞って、本気で何かを成し遂げようとする時、とてつもない力を発揮することがある。
私はそんな人間たちを何人も見てきたんだ。」
大きい、これもまた赤色の肌の大人の鬼がそう言った。
「そんなこと言われても、僕まだ人間を見たことないからわからないよ。」
「あはは。そうだね。お父さんたちも最近はあんまり人間から仕事が来ないから、島の外には出てないな。
それでも蓄えはたっぷりあるから、まだ問題はないけどね。」
大きい鬼は笑う。
「人間たちはね、最初こそ私たち鬼を怖がるけども、言葉が通じるとわかるとすぐに打ち解けてくれる。
大事なのは、相手を怖がらせてはいけない。ということだよ。彼らに会ったら笑顔で話しかけるんだ。
そうすればきっと、彼らも鬼と友達になってくれるよ。」
「本当!?僕にも、人間の友だち出来るかな!」
「ああ、出来るさ。彼らは心優しく接すれば、きっと答えてくれる。」
鬼の親子はそんな会話をしながら、お互いに微笑んでいた。
それから、一月後、鬼ヶ島に悪魔が舞い降りた。
お腰に付けたキビ団子を桃太郎に与えられ、彼の家来となったのだ。
言い伝えられている物語と異なる点は、三匹は桃太郎に対する忠誠心ではなく、恐怖心で支配されているところか。
桃太郎軍団が遂に完成したところで、彼はいよいよ鬼討伐に向けて本格的に乗り出した。
犬には、各地で鬼の悪い噂をあること無いこと言い回らせた。
猿には、鬼の数や住処の正確な情報を文字通り体を張って、取ってこさせた。
雉には、鬼の仕業に見せかけて様々な村で無差別に人を殺して回らせた。
彼らは、悔しさと情けなさに涙を零しながら、桃太郎の命令に従うしかなかった。それしか、桃太郎の恐怖から逃れる術がなかったからだ。
準備は着々と進んでいた。世間はいつの間にか、鬼の悪行の噂でもちきりになった。それは、罪のない人から金品を奪い、そして遊び半分で人間を殺す。
そんな、怪物たちであると噂は広まっていったのである。勿論、それらの鬼畜の所業はすべて桃太郎一味の仕業である。
そして鬼についても、瀬戸内海の小さな島で100匹ほどの鬼が小さな集落を作り、暮らしていることが分かった。
そこには、大量に金銀財宝も蓄えられているとの情報も入手していた。
いつの間にか、その島は鬼を憎む人間たちからこう呼ばれた。
「鬼ヶ島」と。
時を同じくして、通称鬼ヶ島では、鬼たちが平穏な生活を享受していた。
彼らはまだ気づいていなかった。自分たちが少しづつ、しかし確実に破滅の道に近づいていることを。
"そして、その時を舌なめずりしながら好機を伺っている魔物の存在に。
"
「お父さん。僕も仕事がしたいよ。もう大人だよ!人間を悪党から守ることなんてわけないさ。」
小さな、赤色の肌をした子供の鬼がそう言った。
「お前には、まだ早いよ。人間を舐めてはいけないよ。確かに彼らは私たちより小さく、力も弱い生き物だ。
だけどね、彼らが知恵を絞って、本気で何かを成し遂げようとする時、とてつもない力を発揮することがある。
私はそんな人間たちを何人も見てきたんだ。」
大きい、これもまた赤色の肌の大人の鬼がそう言った。
「そんなこと言われても、僕まだ人間を見たことないからわからないよ。」
「あはは。そうだね。お父さんたちも最近はあんまり人間から仕事が来ないから、島の外には出てないな。
それでも蓄えはたっぷりあるから、まだ問題はないけどね。」
大きい鬼は笑う。
「人間たちはね、最初こそ私たち鬼を怖がるけども、言葉が通じるとわかるとすぐに打ち解けてくれる。
大事なのは、相手を怖がらせてはいけない。ということだよ。彼らに会ったら笑顔で話しかけるんだ。
そうすればきっと、彼らも鬼と友達になってくれるよ。」
「本当!?僕にも、人間の友だち出来るかな!」
「ああ、出来るさ。彼らは心優しく接すれば、きっと答えてくれる。」
鬼の親子はそんな会話をしながら、お互いに微笑んでいた。
それから、一月後、鬼ヶ島に悪魔が舞い降りた。
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