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Story1 みるくとの出会い
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「いって・・・」
ひろは転んだ衝撃でその場から動けずにいた。
ゆっくり自分の胸元に目をやると、ふんわりと優しい匂いの漂う色素の薄い髪が見えた。
その直後に髪がぶんぶん揺れたと思うと、ゆっくりと上を向いてその顔が露わになった。
小動物のような顔のその女はしばらく呆然とひろの顔を見つめていたが、急に何かに気付いたようにはっとなったかと思うと、慌てた様子でひろから離れた。
「あわわ、ごめんなさいっ。大丈夫ですかっ」
そしておろおろしながらもこちらに手を差し出す。
ひろも呆然となりながら手を取ったが、ぶつかってこられたことを思い出しムッとなって女を睨みつけた。
「廊下走るんじゃねえよ。そこそこ痛かったんだけど、どうしてくれんの」
女はへこへこと頭を下げる。
「ほっ、ほんとにごめんなさい。友達に呼び出されて急いでたんですっ。あの、保健室行かれるなら付き添います」
「いや、別にいい」
「でも、もしかしたら怪我してるかもしれないし・・・」
その様子を見て、ひろは彼女に感心した。
小学校高学年の頃から数々の女に好意を寄せられてきたが、ひろが睨みを効かせ少し低い声で毒を吐くだけで大抵の女はそそくさと離れていった。
自分に悪態をつかれて怯まないだけでも珍しかったが、その上で自分の身をまだ案じられる人間にひろは初めて出会った。
物珍しそうにまじまじと彼女を見つめていると、少し困ったように作り笑いを浮かべはじめたので皮肉の一つでも返してやろうかとひろが思ったその時だった。
「みるくーっ」
遠くから別の女の声が聞こえ、それに反応して彼女が振り向く。
ひろもつられて声の方向を見ると、彼女の友達と思われる茶髪の女がこちらに向かって走ってくる。
彼女の側まで来た茶髪の女はひろに気付くと、一瞬びくんと反応して目を丸くした。
そして慌てた様子で彼女の手を引き去っていった。彼女は茶髪の女に引っ張られながらも心配そうにひろを振り返って見つめている。
彼女の姿が見えなくなってからも、ひろはしばらくそのまま硬直していた。
その間、ひろの頭には彼女の心配そうに自分を見つめる目と茶髪の女が口にしたみるくという単語がしこりのように残っていた。
ひろは転んだ衝撃でその場から動けずにいた。
ゆっくり自分の胸元に目をやると、ふんわりと優しい匂いの漂う色素の薄い髪が見えた。
その直後に髪がぶんぶん揺れたと思うと、ゆっくりと上を向いてその顔が露わになった。
小動物のような顔のその女はしばらく呆然とひろの顔を見つめていたが、急に何かに気付いたようにはっとなったかと思うと、慌てた様子でひろから離れた。
「あわわ、ごめんなさいっ。大丈夫ですかっ」
そしておろおろしながらもこちらに手を差し出す。
ひろも呆然となりながら手を取ったが、ぶつかってこられたことを思い出しムッとなって女を睨みつけた。
「廊下走るんじゃねえよ。そこそこ痛かったんだけど、どうしてくれんの」
女はへこへこと頭を下げる。
「ほっ、ほんとにごめんなさい。友達に呼び出されて急いでたんですっ。あの、保健室行かれるなら付き添います」
「いや、別にいい」
「でも、もしかしたら怪我してるかもしれないし・・・」
その様子を見て、ひろは彼女に感心した。
小学校高学年の頃から数々の女に好意を寄せられてきたが、ひろが睨みを効かせ少し低い声で毒を吐くだけで大抵の女はそそくさと離れていった。
自分に悪態をつかれて怯まないだけでも珍しかったが、その上で自分の身をまだ案じられる人間にひろは初めて出会った。
物珍しそうにまじまじと彼女を見つめていると、少し困ったように作り笑いを浮かべはじめたので皮肉の一つでも返してやろうかとひろが思ったその時だった。
「みるくーっ」
遠くから別の女の声が聞こえ、それに反応して彼女が振り向く。
ひろもつられて声の方向を見ると、彼女の友達と思われる茶髪の女がこちらに向かって走ってくる。
彼女の側まで来た茶髪の女はひろに気付くと、一瞬びくんと反応して目を丸くした。
そして慌てた様子で彼女の手を引き去っていった。彼女は茶髪の女に引っ張られながらも心配そうにひろを振り返って見つめている。
彼女の姿が見えなくなってからも、ひろはしばらくそのまま硬直していた。
その間、ひろの頭には彼女の心配そうに自分を見つめる目と茶髪の女が口にしたみるくという単語がしこりのように残っていた。
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