苦い僕と甘い君

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Story3 初めての気持ち

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ひろは駅前をぶらついていた。考え事をする時うろうろしてしまう癖を誤魔化すためだった。
ずっとさっき会ったあの子のことが頭から離れなかった。こんなにも人を気になったことは初めてだったので、ひろは軽く混乱していた。
なぜ彼女のことがこんなにも気になるのだろう、そういう疑問と彼女の顔が頭の中をとめどなく循環していた。
この流れを断ち切ろうとさっきから色々な店を回っているが、買い物に集中して忘れようとするほど循環のスピードは上がっていった。いつもなら寄れば必ず何か買っていくお気に入りの服屋に行ってもそれは変わらず、珍しく何も買わずに店を後にしてしまった。
そんなこんなで一時間程駅前を歩き回っていた。いつもなら一時間経っても店を数件回ったくらいでなかなかバテないのだが、今日はどっと疲れてしまった。
疲れを認識すると今度は喉の乾きを覚え、ひろはカフェに入ることにした。
列に並びながら、ひろは冷静に彼女が気になる理由の分析を試みる。気になるということは、他の人間と何かが違うはずなのだ。
少し考えると、すぐに思い至った。彼女は初めて自分に好意を持ったり恐れたりしない人間だったのだ。ひろは昔から顔立ちもよく勉強も運動も非凡な才能を発揮し、そのポテンシャルは両親にさえも末恐ろしいと言われたほどだった。
だから、自分を色眼鏡で見ない人間というのがとてつもなく新鮮だった。これまでに一度もなかったと言っても過言ではない。彼女は確実に今まで出会った中で一番自分を敬遠しない人間だ。
ひろは謎が解けてすっきりしたと同時に、心臓が一回強く脈打ったのを感じた。不思議に思った直後、注文の順番が回ってきた。
ひろはいつも通りブラックコーヒーを頼もうとしたが、彼女がみるくと言われていたのを思い出し、気づけば「カフェラテください」と注文していた。

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