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女学校時代①出会い

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蝉がけたたましく鳴く夏真っ盛りのある日。
会社帰りの朝子がうちに遊びに来ていた。

この春女学校を卒業して、三越でエレベーターガールをしているそうな。
ほっと一安心というところか。

仕事で忙しいのだろうと最近は顔を出していなかったのだがやっと先週、一度顔を出してくれた。

今回は朝子が就職後、2回目の訪問である。

朝子が買ってきてくれたお茶菓子を食べながら紅茶を飲んでいたらフミの女学校時代の話になった。

「そういえば前にも聞いたけれどフミさんの女学校時代ってどんなやったん?」

「女学校時代かあ。長くなるでえ?」

「ええよ?明日は久々に休みやし」

「大変やねえ」

「自分じゃ大変かどうかあんまりわからんねんけどな―」

そう言い紅茶を一口すする朝子はなんだか大人になったように見える。

「さて、どこから話そうかね?」

「どこからでも!」

朝子は興奮しているようだった。

「仲良し三人組やったんよ。うちら」

「ほんまに!?」

「そうなんよ」

「どんなことしたん?」

「若気の至りもようやったし、外の世界とか楽しみとか、本当にいろんなこと教えてくれてんよ」

そしてゆっくり紅茶を飲むとフミは懐かしそうに話し始めた。

フミが女学校に入学してからはなかなか友達を作れず、一人で過ごす日々だった。

蝶よ花よと育てられ、ずっと家庭教師で育ったフミにとって女学校は未知の領域だった。

何が流行なのか、何を話せば人と仲良くなれるのかすらわからなかったのだ。

先生は女学校は慣れた?と気にかけてくれており、その気持ちがとても嬉しかった。

一人で過ごすこと一週間。

ついに声をかけてくれる人が現れた。

授業が終わり、昼食の準備をしようと風呂敷包みを開けていると、
短髪の女子生徒に声をかけられる。

袴も短く、まるで男子のような井出立ちだった。

「ねえ、あんたってさ、山本家の娘さんかい?」

今まで自分のことを知っている人に出会うことはなかったのでとてもびっくりする。

「そうですが……。あなたのお名前は?」

「私の名前は清子。キヨって呼んでくれたらええよ」

目の前にいる女性は本当に女性なのかと疑うくらい豪快だった。

「私は山本芙美子です。よろしく」

「いっつも一人でいるからさあ、気になってたんだよ」

「あ、ありがとう。私、学校というところに通うこと自体が初めてで」

「そうなん??」

「そうなんです。だから何話していいか全然わからなくって」

「キーヨー!どこにおるんー??一緒にお弁当食べる約束やったやん!!」

今度は長髪で髪を後ろに結び、リボンで一纏めにしている可愛い女性がこちらに向かってくる。

「悪い悪い!ねえ!この子も一緒に混ぜて昼飯食べようぜー!」

「まーたもうそんな言葉遣いして!せんせに何言われても知らんで!」

「へえへえ。こちとら田舎育ちなんですー!!妙はほんま細っかいことばっかり気にするんやから!」

「妙ちゃんって言うんだ……。よろしくお願いします。私は……フミって呼んでください」

ニコニコとお上品に笑うフミは良家のお嬢様の雰囲気を早速醸し出している。

「こんな良家のお嬢様にキヨはまだ早いんちゃうかあ?」

「ばか言わんといてやー。うちかて良家のお嬢様やでー」

「ま、ごはん食べよかそしたら」

これがフミとキヨ、そしてタヱとの出会いだった。
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