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第一章

王立ホテル

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「嬉野様、これから私が申し上げる内容に、驚かれるかと思いますが、どうか落ち着いて聞いてください」


「は、はい…」



前回の調査とは違い、担当官から緊張感が伝わってきた。


私も、胸中穏やかではなく、一体何を伝えられるのか恐怖感に襲われる。



「今回の全国の無戸籍調査は、全くの架空のもので、嬉野様だけを対象とした調査でした。」


「えっ、私だけ?」


「はい。嬉野様の出自とこれまでの生活などを調査する必要があったのです。」


「それは何のために?」


「実は…嬉野様は、25年前に失踪した王女のお子様であることが判明しました。」


「え?」


「その王女は、現国王から見て「はとこ」よりも先の「みいとこ」に当たります。ただ、お母様の先々代で、一族は王族からは離脱されていますので、お母様と嬉野様は、正確には旧王族の子孫の御身分となります。」


「え?あ、は、はい」


私は、頭をフル回転させ、担当官の話を理解しようとしていた。冷静を装うこともできないほど、頭の中はパニック状態になっている。


「家系図もございます」


「…、これは…」


家系図には、現在の国王などの王族のほかに、旧王族の記載もあった。


そして、私はそこで初めて母の名前を知った。


「お母様のお名前は、美嘉宮 和華子様、私生活では美嘉 和華子様と名乗られておりました。」


「みかのみや わかこ…。みか わかこ…」


「お母様のことは…」


プルルルプルルル…


担当官が、母の話を切り出そうとした瞬間、担当官の胸ポケットから携帯の着信音が鳴り響いた。


担当官は、私に断ったあと、すぐに電話を取った。


「え?今向かっている?いえ、まだその話までは…。はい、分かりました。そのようにします。」


小さな声であったが、何やら焦っている様子で、電話をしていた。


「嬉野様、あと1分ほどで、王太子様が到着される見込みです。王太子様がお声をおかけするまでは、目を伏せ、言葉も発してはなりません。お声がけがあったら、お顔をあげ、お目にかかれて光栄ですと、お申し出ください。王太子様から質問があった際のみ、お言葉を発してください。間違えてもこちらから質問をしてはなりません。それから、何を言われても逆らってはなりません。不当な要求だと感じても、答えは「はい、殿下」とだけ、おっしゃってください。それから、ご起立いただき、王太子様をお待ちください。座って良いと言われてから着席してください。」 


「ちょっと早すぎて聞き取れませんでした。」


「とにかく、はい殿下とだけ言ってください。では私共は、これから扉の開閉のために扉の外に待機します。接見中は、入室していますが、私共も不用意にお声をかけることはできませんので、殿下に失礼のないようにお話しください。」

「え、あの、…」


私の返事を聞く前に、担当官たちは扉の外に出た。


すると数十秒して、再度扉が開いた。
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