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第二章 幼少期~領地編
70.量産計画
しおりを挟む朝食後、デザートが運ばれてきた。
冷やしてあるから、ほのかに甘い卵の匂いがする程度だ。
お爺様とお婆様の前にプリンが置かれた。
お爺様とお婆様がこちらを見たので、ニッコリとして言った。
「このお菓子はプリンという名前です。卵とモーの乳と砂糖で作りました。どうぞ召し上がってみてください」
そういうと、お爺様は砂糖に反応したが、とりあえず食べることを優先してもらった。
スプーンですくった感触に驚きながら、そーっと口へ運んでいる。
口に入れた瞬間、目を見開いて、次いで目を閉じてじっくり味わっている。
お爺様とお婆様がほぼ同じ動きなのが、なんとも微笑ましい。
最後まで味わって食べてくれたから、嬉しくてニコニコしちゃう。
私も自分の分を味わいつつ少し急いで食べる。
感想を言いたそうなお爺様達に、報告があるのでその時に感想を聞かせてほしいと言って執務室に送り出した。
エルンストさんに、調理場の様子を見てからすぐに行く旨を話して、残りのプリンが上手くできたか確認しに行く。
ちょうど、あの後何度かに分けて蒸されたプリンを冷ましているところだった。
あ…。やっぱり冷ますのに時間がかかるよね?
朝食に食べられないと残念だし、なんといっても数が多いから場所を占領しているんだ。
これは、いくら大きな冷蔵庫でも、全部は入らないかもしれないね。
パーティー用に大きな冷蔵庫もあるんだけど、材料の保管用途なんだ。
料理もデザートも冷やして食べるという食文化がないんだよ。
いずれはアイスクリームも食べたいし…う~ん…。
今度、冷蔵倉庫を作るかな? その中に冷凍庫作っちゃおうか? 王都の屋敷にも欲しいよね…?
お爺様に聞いてみようかなぁ…。
とりあえずは、全部まとめて冷やしてしまおう。
料理長に魔法で冷やす話をして、プリンの載ったテーブルの上に小さく結界を張り、中の温度を下げていく。
凍らないように中まで冷やしてから結界を解くと、冷え冷えのプリンができあがった。
朝食にみんなで一人一個食べるように伝えて、執務室へ急ぐ。
執務室では、お爺様達がお茶を飲んで待っていた。
「遅くなり申し訳ございません」
「うん。いいんじゃがどうしたんじゃ?」
「はい。みんなのプリンも作ってもらったんですが、朝食までに冷やす時間がないので魔法で冷やしてきました」
「おおっ、そうじゃな。皆もあのプリンを食べたら嬉しいじゃろう」
「ええ、そうよね。甘くてとろーりとして、それでいて濃厚で…。初めての味と食感だったわぁ」
お爺様もお婆様も思い出して、幸せそうにうっとりしている。
ふふっ。プリンにして正解だった。短い時間で大量に作れて、この世界の料理にはない味と食感だもんね。
でも、砂糖が安価で手に入れば、作りたいお菓子がたくさんあるんだ。
小麦粉もバターもあるんだからね。
とりあえずは、今日のおやつにスイポの大学芋でも作ろうかな?
醤油と砂糖とサツマイモがあるんだし、久しぶりに食べたいかも。
そんなことを考えつつ、お爺様に冷蔵倉庫の話をする。
食材だけでなく、冷やして食べる料理やお菓子のために、大きな冷蔵庫がいるんじゃないかと。
まだ構想段階だから、すべてこれからの話だけれど、作ってみてもいいだろうかと。
そうしたら、お爺様は、『アルの良いようにやってみなさい』と言って許可してくれたんだ。
どういうふうに作ろうか、今から考えるのが非常に楽しみだ。
さて、次はサトウサンの話だ。
「先程のプリンに使ったのは、最初の村の牧草地で採取して、試験栽培してもらっているサトウサンを精製した砂糖です」
「なんじゃと? あれはまだ植えたばかりじゃったはずじゃ」
「はい、そうです。ですが、今朝見たらすでに根をしっかり張っていました。相当に生命力の強い植物かもしれません。栽培すればすぐに畑いっぱいに茂りそうですが、逆に強すぎて生態系に影響しそうで、少し心配ではありますね」
「うむ…。砂糖は魅力じゃが…。そうなると困るのぉ…」
「はい。それならば、畑の周りも地中にも結界を張ってしまえばいいかと思っています。
それか、地魔法で深いところで岩盤のようにして囲ってしまうかですね。ただ、この方法だと水捌けの場所から根を伸ばす可能性があります」
私が考えたのは、温室のように結界で畑全体を囲うこと。それで地中も囲うんだ。魔法陣を刻んだ魔道具を基点にして、魔石を動力としてね。
この際、多少のコスト増はしようがない。原料のサトウサンが無料なんだから、プラスマイナスゼロだと思う。
サトウサンの脅威の生命力の前では、生態系保全を優先したい。
お爺様に魔道具による結界の方法を説明し、それを勧めて許可をもらった。
それと一緒に砂糖精製工場も造らなければならないだろう。
一つは、無駄な部分を取り除き、細かく砕き、汁を搾る。
一つは、搾った汁の不純物を取り除き、煮詰める。
もう一つは、できあがった砂糖を個装して出荷できるようにし、保管する。
これらの工程で工場三つあれば良さそうだ。
工場の詳細は、後でお爺様とエルンストさんと三人で詰めることになった。
これが軌道に乗れば、砂糖の価格がかなり下がるだろう。
食生活に革命が起きるだろうし、ほとんどの人々は歓迎するだろうが、高価な砂糖で利益を得ていた一部の反発も当然あるだろう。
その話をしたら、お爺様が大変悪い顔でニヤリと笑い『任せておけ』と言ったんだ。
私には想像もつかない世界があるようです…。
砂糖の量産の話が終わったところで、お婆様の目がキラリと光った気がした。
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