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第一章 幼少期
1.剣と魔法
しおりを挟む私が転生したこの世界は、剣と魔法の世界らしい。
まずは、剣。
普段の生活に当たり前に剣というものが存在している。
お父様が外出するときは、いつも腰に剣を佩いている。左右に一本ずつだから二刀流なのだろう。
お兄様達は、毎日午後から剣術や体術、馬術を習っている。
教えているのは、我が領の騎士団長のパウロ。薄茶の短髪、極太眉毛で糸目のホームベースみたいな顔をしている巨漢だ。
使っている剣は長大な両手剣。それをいとも軽々と振っている。
エリアの話では、カネッティ領の騎士団の実力は、王国の騎士団をも凌ぐほどだという。
それを率いる団長さんの実力は、『想像できますでしょう?』と頬を染めながら、尻尾をくねくね揺らしながら教えてくれた。
エリアの趣味は……。見なかったことにしよう!
裏庭が騎士団の訓練場なのを知ったのは最近のこと。
お母様やサラに抱っこされて、お兄様達の稽古を眺めながら、日向ぼっこをするのが日課になったからだ。
庭の木立ちの新緑が鮮やかで、爽やかなそよ風が吹いていてとっても気持ちがいい。
日本でいうと五月くらいの感じかな。
お兄様達は、軽いランニング、筋トレの後に、型を確認しながら素振りをする。
それから、ルートヴィッヒ兄様は、団長さんと乱取り稽古をする。
マティアス兄様は、まだ素振りだけのようで、型を確認するようにただ黙々と剣を振っている。
どちらもまだ幼いため、成長を妨げないような訓練になっているようだ。
二人とも剣の才能が高くて、将来を期待されているらしい。
私もいつかは剣を振うのだろう。
でも、実戦になったとき、躊躇なく剣を振り下ろすことができるようになるんだろうか?
剣を振り相手を倒す行為に、いつかは慣れることができるだろうか…?
そして、魔法。
侍女のエリアが、部屋の灯りをともす時やカーテンを引くときに、ぶつぶつ何かを呟いて使っていた。
触らずにどうやったのかって気になって、何度か目を凝らしてみていたら魔力の流れ?みたいなものがぼんやり見えるようになった。
この世界には魔法があるようだ。
生きるものすべてが、多かれ少なかれ魔力を持っているらしい。
その魔力をもとに魔法を使うという。
なので、少ない魔力量の人は生活魔法しか使えないし、多い人は攻撃魔法や防御魔法、回復魔法を使えるということ。
まあ、魔力量や属性によって使える魔法の種類やランクが違うようだけど。
実は、魔法があることがとても嬉しかった。
せっかく異世界転生したんだから、魔法がある生活に憧れるよね。
私も使えるんじゃないか?!って。
自分が使うことを想像してワクワクしてしまった。
グフフフフッ…。
カッコいい!ってニマニマしていたら、エリアにドン引きされたよ。
グフフッとニマニマ笑っている赤ちゃんは、さぞ気味悪かろうて。
自分でも引くから、今後は笑い方には気をつけよう。
エリアは、私の専属侍女で猫獣人の十二歳。白いふわふわの猫耳に薄茶のボブカットで、クリっとした濃茶の瞳で白い尻尾の毛先が薄茶なんだ。
細身でしなやかな体つきで、背と胸はまだ成長途中らしい。数年後に期待したい。
彼女はとっても優秀だ。可愛いし頭もいい。獣人だから身体能力が高くて体術が得意らしく、私の護衛も兼ねている。そして私を苦も無く抱っこする力持ちだ。
私は男なので、もう少し成長したら侍従もつくようだ。お兄様達にはすでに侍従がついている。
いい人で気が合う人だと良いなあ…。
エリアに抱っこされている時に、ピクピク動く耳が気になってずーっと見ていたら警戒されてしまった。
敵もさるもので、抱っこの時に触ろうとするとサっと避けるし、泣いていると尻尾を目の前でゆ~らゆ~らと揺らされて泣き止んでしまう。
うーーん。あしらわれているなぁ…。
私の目下の目標は、エリアの猫耳と尻尾をなでなでモフモフすることに決まった。
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