異世界でのんびり暮らしたい!?

日向墨虎

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第二章 幼少期~領地編

26.突撃

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 領都に到着した次の日、良く晴れた初夏の暑くなりかけの朝だ。
 窓を開けてもう少し自然の風を感じていたいから、今日は昼まで涼しくする魔法はお休みにしよう。うんうん。そうしよう。

 初日に馬車の中が暑くなってきたから、コッソリ水と風の混合魔法で空気を冷やしていたら、エリアにばれていたようで、次の日からは、当たり前に『アル様。暑くなりましたね』って呟いて、眼で強請ってくるんだ。
 この旅に出てから、エリアが遠慮しなくなってきている気がするんだけど…うーん?

 レオンはなにも言わないけれど、冷房すると、小さくホッと息を吐くんだ。無表情・眼鏡男子が…。ちょっとカワイイかも…。

 そんなことを思いながら、いつも通り魔力制御の練習をして、顔を洗って着替えていたら、部屋の外が騒がしくなった。

 (んー? なんだろう?)
 《ニャンダリョネー? バアバモイリュヨ!》

 エリアとレオンが部屋に入ってきて、お婆様と使用人達が私に面会を求めているとのこと。
 
 (なんだろう…? 考えてもわからん!)

 「エリア、お婆様と使用人の代表者一名を通して。残りは仕事に戻ってもらって。レオン、お茶淹れて」
 「「はい。畏まりました」」

 エリアが出て行き、すぐさまレオンがお茶の用意をする。
 レオンでは、きっと女性パワーには勝てないからね…。
 エリアが、お婆様と使用人頭を伴って入ってきた。
 ソファーを勧めながら聞いてみよう。

 「おはようございます。どうされたんですか?」
 「アル。おはよう。朝からごめんなさいね。実は昨日の試供品なんだけれど、まだあるかしら?」
 「えーっと…? それはどういう?」
 「あのね。あの後、私の侍女二人と廊下で会った使用人三人に試供品を渡して、その日に使って感想を伝えるように言ったのよ。そうしたら、一緒にお風呂に入った人達と全部使ってしまったらしいの。私も昨日使ってみたのね。とにかく素晴らしいわ。どれも使用感はいいし、香りも柔らかくて良いし。それと、あの化粧水と乳液?だったかしら? あれも素晴らしいわ。肌の状態がとてもいいの。驚いたわ。みんなの感想も大体同じね。それでね、みんな一回しか使えなかったから、もっと使いたいと思ったそうなの。だから、あなたの所に来てしまったようね」

 お婆様が話している間も、使用人頭は眼をキラキラさせて、期待を込めたように私を見ている。
 うーん。またか…。屋敷のあの日の再来かしら…?
 まあ、取り囲まれないだけマシかも……〈遠い目〉 

 「そうですか…。そんなにたくさん持って来ませんでしたから…。うーん…。今日はお爺様はいらっしゃいますか?」
 「ええ。確か、今の時間は執務室にいるはずよ」
 「では、お婆様もご一緒願います」
 「わかったわ。行きましょう」
 「はい。では、後で説明しますので一旦戻ってください」
 
 そう言って、使用人頭には仕事に戻ってもらい、お婆様と連れ立ってお爺様の執務室に来た。ルカも尻尾をフリフリついてきた。
 因みに、エリアとレオンには用事を言いつけた。今回の話は聞かせられないからね。
 ノックをして中に入り時間をもらおうとしたら、バンッ!!お婆様がノックもなしに突撃した!

 「ジーク、話を聞いてちょうだい!」
 「うおーっ! ビックリしたー!! 何事じゃい?」
 「お爺様、申し訳ありません。少し時間をいただけますか?」
 「ぁああ。大丈夫じゃ」

 お爺様は、エルンストに目で確認して許可を出した。
 エルンストは居ても大丈夫かな。屋敷でもセバスとサラは全部知っているし。
 お父様には、お爺様達に話す許可はもらっている。話すタイミングも一任されている。
 そして、私は、音が漏れないように遮音結界を張って、私のステータスについて話し始めた。

 「今、音が漏れないように、この部屋に結界を張りました。これから見聞きする事柄は極秘事項ですので、他言無用でお願いします。エルンストもよろしいですね?」

 魔力の流れで、魔法を使ったことが分かったんだろう。私の話を真剣に聞いてくれている。エルンストも真剣に頷いてくれた。

 「これから見聞きする事柄を極秘にすることは王命ですので、申し添えておきます」

 その言葉に、三人とも目を見開いている。
 
 「実は、私のステータスが少々特殊でして、王様に極秘にするように言われております。これからお見せしますね」

 まずは、ステータスの<隠蔽>を転生者だけ“偽装”したまま解除する。
 それから、みんなに見せることを意識して、声に出して唱える。

 「<ステータスオープン>」

 =====

 【名前】アルフォンス・フォン・カネッティ
 【性別】男
 【年齢】五歳
 【種族】人族
 【職種】鑑定士・魔法士・薬師・召喚士・魔道具士・剣士
 【称号】アーレント王国カネッティ侯爵家三男・魔法バカ(転生者)
 【Lv】59
 【HP】770/770
 【MP】64280/64280
 【能力】A
 【スキル】鑑定・並列思考・気配察知・隠蔽・調合・無限収納・空間転移・生産
      剣術・短剣術・体術・弓術・召喚士・念話
 【魔法】火魔法Lv.10・風魔法Lv.10・水魔法Lv.10・地魔法Lv.9
     光魔法Lv.10・闇魔法Lv.9・無属性魔法Lv.10・生活魔法Lv.6
 【耐性】状態異常耐性Lv.6・物理攻撃耐性Lv.9
     魔法攻撃耐性Lv.9・精神異常耐性Lv.7
 【加護】創造神シャッフェンの加護・風神ベルトホルトの加護
     水神アーダルベルトの加護・光神ルキアナの加護

 =====

 うん。とんでもないね…。また伸びたんだよ。
 五歳になってから、職種も剣士が増えた。どんどん森に行って実戦を重ねているからかな…?
 最近は、騎士団との実戦練習の他に、長距離転移でルカと飛んで、ガンガン魔獣を狩ってたしね。夜の魔道具作りで、魔石がたくさん必要だったんだよ。
 念話は、ルカと話し始めて増えたんだ。
 
 半透明のボードが見えているんだろう。三人の視線がボードを捉えて固まっている。

 しばらく復活しないだろうから、お茶を飲んどこう…。うん。美味しい。
 クッキーは…あんまり美味しくないなぁ…? 何が違うんだろう?
 今度、作るところを見せてもらおっかな。どうせなら、美味しいお菓子食べたいしー。

 ルカは、こちらの話なんて興味ないんだろう。床で丸くなっている。
 ルカの背中をしばらく撫でていると、お爺様達がようやく復活したようだ。

 「アル。このステータスはどうしたんじゃ?」

 (あーっ、まずそこ聞いちゃう? 面倒くさいなぁ…。ざっくり説明するか?)

 「私が、早い段階で、魔力操作ができていたことはご存知かと思います」
 「うむ。一歳の頃に、教師が一新された件じゃな」
 「はい。その頃から、魔法を使っておりました。ドンドン使っていたら、こうなったという話です。武術に関しては、王宮の事件が切っ掛けで、三歳から始めました。これも、ドンドン訓練していったら、こうなりました。以上です」
 「いやっ、端折りすぎじゃろー!!!」

 私の簡潔な説明に、お爺様は思わず叫んでいた。


 

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