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第二章 幼少期~領地編
25.相談
しおりを挟む王都を出発して五日目の午後、領都フォルツに到着した。
領主館の玄関には、お爺様とお婆様が待っていてくれた。使用人達も可能な限り出迎えに出てくれているようだ。
「おおっ、アルフォンス。ルカ。よく来てくれたな」
「アルフォンス。久しぶりです。待っていましたよ」
「お爺様、お婆様。お久しぶりです。お招きくださりありがとうございます。しばらくお世話になりますね」
「ガウッ。ワフッ!《ジイジ、バアバ。ヒチャチブリー!》」
「まあ、一年見ない間に立派になりましたね。いろいろお話を聞かせて頂戴ね。ルカも少し大きくなったみたいね。さあ、まずはお部屋に案内してあげて」
「アル。後でお茶を一緒にな」
「はい。ありがとうございます」
お爺様もお婆様も、嬉しそうに微笑んで出迎えてくれた。私の頭を撫でて、ルカの頭をワシャワシャしていた。お元気そうで良かった。
お爺様とお婆様は念話ができるらしく、ルカとの会話も、初めての対面から不自由なくできている。
因みに、他には、お父様とセバス、シュテファン先生とリヒト先生は念話ができるんだ。
後ろに控えていた、背筋のピンと伸びた綺麗な立ち姿の壮年の男性が、『ご案内いたします』と言って先導してくれた。
彼はお爺様の執事で、セラの父親だ。お爺様が爵位をお父様へ譲って引退した時に、家令の職をセバスに譲り、お爺様の執事として一緒に領地へ引っ込んだんだ。
案内された部屋は、客室かと思ったら私の部屋だそうだ。なんと自分の部屋を用意してくれていた。クリーム色に淡いブルーをアクセントにした壁紙やカーテン。家具は、落ち着いた濃茶のヨーロピアンウォルナットに似た木材で統一され、広い執務机が特に気に入ってしまった。王都の屋敷の家具もこれにしようかな…?
エリアによると、両親や兄姉達の部屋もあるそうだ。こちらも我が家なので当たり前なのかな? いつでも、遊びに帰ってこられるね。
ふんふん♪ 一回の長距離転移でここまで来られるように練習しようっと。たぶん二回で来ることができるとは思うんだけど、まだ一回で飛べる距離がここまで届かないんだよね。
マジックバッグから出すふりをして、旅行鞄を無限収納から出して、エリアに片付けてもらっている。エリアにステータスを詳しくは教えていないからね。
レオンには、冒険旅行に一緒に行ってもらおうと考えているから、いつか話そうとは思っているけれど…。
ボーっと考えながら、ルカ用の特大クッションを出していると、お爺様達からお茶のお誘いが来た。
中庭に面した窓の大きな談話室では、お爺様とお婆様がソファーにゆったりと座っていた。
「失礼します。お誘いありがとうございます。まずは、紹介しますね。侍女のエリアはご存知ですよね。こちらの彼は、新しく私の侍従になりましたレオンハルトです。セバスとサラの三男で六歳です」
「レオンハルトと申します。よろしくお願いいたします」
「うむ。セーリングに行ったときに、何度か見かけたことがあるな。よろしくな」
「まあまあ、こちらこそ。アルフォンスをお願いね」
「はい。精一杯務めさせていただきます」
セバスとサラの子供だから面識はあったようだね。お爺様達に受け入れられて良かったよ♪
執事のエルンストが、一年ぶりの孫をとっても優しい目で見ていた。
それから、美味しいお茶をいただいた。セバスの師匠だけあって、エルンストの淹れてくれる紅茶は、とっても美味しかった。
レオンもセバスにお茶の淹れ方を習っていて、少しずつ腕は上がってきている。
ここに滞在している間に、エルンストにもいろいろと教えてもらうらしい。
私としては、美味しいお茶が飲めるように、レオンには是非とも頑張って習得してもらいたいと思っている。期待しているんだよ♪
さて、早速なんだけど、お爺様にお願いがあるんだ。ここでは、誰が入ってくるかもわからないからな…? 人払いできるところだと、執務室がいいかな?
「お爺様、早速で申し訳ないのですが、お話しさせていただきたいことがございます。少しお時間をいただいてもよろしいでしょうか?」
「うむ、なんじゃな?ここではマズいのか?」
「仕事に関係のある話になりますが、よろしいでしょうか?」
「うーん。そうか。では、執務室に移ろうか。テレジアも一緒で構わぬのか?」
「はい。お婆様も一緒に聞いていただきたいのです」
「あらあら。そうなの? なにかしら? じゃあ、行きましょうね」
やはり、お爺様は人払いしたいってわかってくれたね。
それから、場所を執務室に移して、お爺様達の後ろにエルンストが立ち、対面のソファーに座った私の後ろにエリアとレオンが控えている。
「場を移していただきありがとうございます。まずは、こちらをご覧ください」
そう言って、マジックバッグから、私が作っている化粧水と乳液、シャンプー、石鹸、練り香、ハンドクリームを出して、テーブルの上に置いた。
お爺様はいぶかしげな表情だ。お婆様の目がキラッキラしているよ。早く説明してほしそうだな。
「これらは全て私が作りました。試しに作ってみたら、王都の屋敷の者達に好評で、既に、私の手では回らなくなりつつあります。そこで、領地の方で生産して特産品にできないかと思い、試供品を持ってまいりました」
それから、作るに至った経緯と、それぞれの特色を話した。
「アルちゃん。いいわ~。使ってみたいわ~♪ ねえ、ジーク。まずは使ってみて、良ければ考えましょう」
「うっ、うむっ。では、そうしなさい」
「まあ、あなたも使うんですよ! はい。これ!」
と言って、男性用に爽やかな香り付けをした、シャンプーと石鹸と練り香とハンドクリームを持たせていた。
「エルンストも使って意見を聞かせて頂戴」
「畏まりました。奥様」
「私は、侍女や使用人達にも使うように言ってみるわ」
「ありがとうございます」
「そんなに人気なの?」
「はい。好んで使ってくれているようです。お母様や屋敷の女性達に受け入れられまして、日常使いなものですから、作る量も多いんです。でも、領地であれば、手に入れられる薬草も多いですから、比較的簡単に作ることができそうですし、販路に乗せるのも領地の方が上手くいきそうだと思ったんですよね。まあ、まずは使用後の感想を聞いてからですね」
そう言ってその話は終わり、その後は両親や兄姉達の話をしたり、妹のティナがどんなに可愛いかを力説したりして、まったりとお茶を楽しんで過ごした。
その時は、次の日にお婆様や使用人達の突撃を受けるとは思ってもいなかったんだ。
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