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第二章 幼少期~領地編
31.まだ説明中
しおりを挟むリヒト先生とレオンに滞在中にやりたいことを細かく説明していった。
そうしたら、先生が答えにくいところを的確についてきたんだ。
「なんで清潔にすると病気の予防になるんだ? 温泉のお湯のことはどこで知ったんだ? そのいろいろ考えていることは教えてくれないのか?」
先生は、とっても楽しそうな瞳で聞いてきた。
しかも、いつもより字数多いし…。
(うわーっ。ダメだ…。この瞳の時に回避できたことがないわ…)
(マズいよね。転生の話はできないからね…。どう説明しようか?)
(んー? お爺様にした薬草園の話から説明するかなぁ? よしっ!)
「先生。まずは、今日、お爺様と計画したことからお話ししますね。但し、領内の政策ですので他言無用でお願いします。
先生は、私が作っていた基礎化粧品やシャンプーなどはご存知ですよね? 私の手が回らなくなりつつあったこともご存知だと思います。それを領地で生産することができないかとお爺様にお願いしまして、上手く許可をいただけたんです。
その生産計画と関連して、原材料を含む薬草園の拡大も提案してみました。
カネッティ領は水が綺麗ですし、森には多種多様な薬草が自生しています。薬草が育つのに適した気候風土だと思ったからです。
ここまでが、お爺様達と話して計画を立てた部分です。
ここからは、お爺様達にはまだ話してはいませんが、私が考えていることをお話しします。
お爺様達には、薬草園が軌道に乗ってから話そうと思っています。
薬草園の規模を拡大することで、シャンプーなどの材料の確保と同時に、領内に調合薬を浸透させたいと考えています。
そして、薬草学に基づく考え方を広めて、公衆衛生の徹底で病気の予防にもつなげたいと思っています。
一番は病気の予防ですが、調合薬をもっと活用することで、領内で軽い病気やケガで亡くなる命を、少しは救うことができるようになるんじゃないかと思うんです。
さらに、上手くすれば領内のために提案した薬草園の規模拡大で、調合薬の種類も量も増やせるはずです。これを他領へも流通させることができるかもしれません。
そこで問題になるのが物流です。無限収納はレアスキルなので、消費期限の問題で調合薬の流通が無理なら、治療のために滞在する方法を考える必要があるかもしれません。
滞在型の治療なら、温泉があれば湯治ができてもっと良いだろうと思いましたので、領内で温泉が出るのかを調べようと考えたんです」
「うん。それで?」
(ダメだ……。やっぱりこれじゃあ納得してくれないよ。どうしよっか? んー…)
「では、王都で考えてみてください。
王都では、飲み水は王領にあるドスタル湖から引いています。取水口には、ミネラル成分はそのままで、滅菌処理だけするように魔法陣が組まれていると聞きました。
そして、下水道が整備されていて、汚水は<ピュリフィケーション>の魔法陣が組まれている排水口を通って、湖から流れ出る川の下流に流されています。
トイレも魔石で<クリア>されてから汚水処理されます。これは貴族に限らず、王都の住宅では義務づけられていますよね。
これらの仕組みが一番大切なんです。
王都では、子供や老人や病人がやたらとお腹をくだすとか聞きませんよね?
飲み水確保や汚物と汚水の処理方法が良いので、感染症予防になっているのだと思います。
これは、公衆衛生のひとつの例です。
しかし、王都でも、庶民の間で時々感染症が発生しています。この時、貴族での発症は少ないのはなぜかを考えたんです。
もちろん食事の栄養も違いますし、すぐに治癒士にかかることも違いがありますが、一番違うのは、毎日入浴することだと考えました。
毎日入浴して身体を清潔に保ち、清潔な服を着ること。これが大きな違いだと思います。
それで、今回の滞在中に領内を廻り、まず飲み水や汚物と汚水の処理状況の確認をします。それを踏まえて、お爺様達に改善案を提示するつもりです。そして、改善の必要があれば、私が魔法を使います。
領内の環境改善は領主の役目です。ですので、必要ならば、滞在中に土木工事などはやってしまうつもりなんです。
しかし、毎日の入浴は難しい問題です。
お話ししたように、庶民の各家庭には風呂がありませんし、王都にも、我が領の領都にも公衆浴場がありません。それなので、入浴の習慣が育ちません。これをどうするかが難しいんです。
だから、温泉を探ってみようと思ったんです。見つかっても、最終的な入浴の習慣づけまでが大変ですけど、やらなければ何も始まりませんよね。
もう一つ実践したいことが、外出から帰った時の手洗いとうがいです。
これは、私が実践していますのでご存知かと思います。我が家では全員に実践してもらっています。これを始めてから、風邪をひくことが減りましたので、一緒に広めようと思っています。
清潔にすることと病気予防の関連はこのように考えています。
こちらで病気予防のための環境を整えてから、領民の生活習慣の改善を促すつもりです。
温泉が身体に良いっていうのは、どこでかは忘れてしまいましたが、以前に本で読んだように思います。王宮だったかもしれません。
先ほど言った王都の上下水の環境は、建国当時に造られたと聞いたことがあります。もしかしたら、初代の国王がそういう知識を持っていたのかもしれません。
いろいろ実行しようと考えていることも、もう話してしまいましたね」
(誤魔化せた? 誤魔化せたよね? 前世知識を建国の王様に肩代わりしてもらっちゃったけど、いいよね? 手洗いうがいも誤魔化せたよね? ね??)
「うん。わかった。面白そうだ」
(うっ、そうきたか…。うん。リヒト先生は乗り気になってくれたようだね。まあ、良かったよ。ホッとした)
先生の瞳が、とっても楽しそうにキラキラ輝いている。
こうして、私は、最強の味方を一人ゲットした。
*************
※ ついにストックが無くなってしまいました。
さらに、3月末まで忙しい状態が続きますので、更新が不定期になりそうです。
次話も半分くらいで止まっています。なんで1日36時間じゃないんでしょうね?
書きあがり次第UPしていきますので、のんびりお待ちいただければ幸いです。
今日も仕事です~ぅ(涙
はぁ~。頑張らねば…。
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