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第二章 幼少期~領地編
48.視察の報告~フォルツ~
しおりを挟む今日の報告をするために執務室で、まったりとお茶を飲みながら、お爺様達の到着を待っている。
エルンストさんのお茶は今日も美味しい。
間もなくお爺様が入ってきて、向いの椅子に座った。お婆様は今夜はもう休むそうだ。これから行う報告にお婆様が同席しないことに、小さくホッと息をついた。
「アル、おかえり。ずいぶん遅かったようじゃな?」
「ただいま戻りました。ご心配をおかけして申し訳ございません」
「うむ。リヒトが一緒じゃったから心配はさほどしていなかったが、無事に戻ってきて何よりじゃな。で、どうじゃったかな?」
「はい。今日は冒険者ギルドでギルドマスターにお会いして、今後領内を探索する話をしました。それから、魔道具屋等を覘きながら街を歩いてまわり、最後にスラムに行きました。その後に城壁の外に出て温泉の探査をしました。スラムでは、ある出来事がありまして、その件でご報告ありますが、最後にお話しします。まずは、市街地とスラムの視察について、更に温泉についてのご報告とご相談があります」
「うむ。早速、スラムに行ったか…。では、続きを頼む」
「はい。まず一つ目は、スラムに限らずフォルツ全体の下水道の整備を提案いたします。
市街地を歩いてまわってみて、所々で糞尿のような悪臭がする場所があったので、地中を探査してみました。それでわかったのですが、下水道が壊れている所が何ヶ所かあり、そこから汚水が地中に漏れていました。それと、元々の下水道施設が古いので、汚水を浄化しきれずに川に放流されているようです。
次にスラムですが、こちらは、上下水ともに整備されていませんでした。飲み水は、スラムの中に古い教会があり、そこの井戸を人々に開放しておりました。下水道はないので、糞尿は垂れ流しでした。これは、いつ疫病が発生してもおかしくない状況です。早急に対策をとらなければなりません。
そこで、下水道の整備なんですが、私の魔法で、地中だけでドンドン配管していくことができそうです。フォルツ全体の下水道整備をそれでやろうと思います。そして、スラムですが、これは少しの間、場所を空けてもらって、上下水道と区画整理と公営住宅建設をまとめてやってしまおうと思っています」
「ほう、下水道か…。そこまで気が回らんかったわい。下水道が壊れて悪臭がするなんて、民に申し訳ないのう。して、スラムの立ち退き期間はどれくらいじゃ? その案じゃと1年で済むかのぉ?」
「いいえ、3日を予定しております」
「なに! 3日じゃと?」
「はい。スラム程度の広さですと、区画整理と地中の上下水道の整備等の土木工事、それに1日かかります。次に上物ですが、長屋のような構造で造ろうかと思っています。家族で住めるようにある程度の広さを持った続き家です。これも地魔法で造ろうと思っています。これに1日をみています。最後に扉や床などの建具や内装に1日をみています」
フォルツの街は広いから、臭いが気になる場所は漏れているあたりだけで、きっと苦情も採り上げてもらえなかったんだろう。お爺様のところまで声が届かなかったのも想像はつくが、それが問題でもあるんだ。お爺様の領政の今後の課題となるだろう。
因みに、スラムは本当に臭かった。空気が澱んでいるんだが、その澱んだ空気が糞尿臭いから…。
スラムに入ってすぐに、先生と二人、マスク代わりに布で鼻と口を覆った。怪しい人みたいになったが、場所が場所だけに気にする人もいなかった。
スラムを出るときにマスク代わりにした布は火魔法で焼却したし、全身に<浄化>をかけた。
たぶん、空気中の粉塵は絶対危ないと思うんだ。スラムを再生させる時に、健康チェックをしてみよう。スラムの住人全員が何かしら引っかかりそうだ。
区画整理するときに、表面の糞尿が堆積した汚泥は、高温で焼いてしまおうと考えている。病気の元と考えられるものは、とにかく滅菌、浄化を施すのみだ。
「うむ。アルができるというなら良いじゃろう。任せてみるかの? それで、フォルツの下水道の整備は、どう進めるのじゃ?」
「はい。全体の下水道整備は、2日で仕上げようと思っています。初めてのことですので、私の魔力次第となりますが、たぶん大丈夫でしょう。最初に全域に配管してしまいます。そして、各戸からの排水管と接続する際に、トイレに<クリア>の魔法陣と、汚水の排水口に<ピュリフィケーション>の魔法陣を組み込む予定です。トイレに<クリア>の魔石が組み込まれていないのは、庶民の中でも低所得の家庭のようですので、この機会にやってしまうつもりです。これに時間がかかりそうですので2日間をみています。下水道整備をしている2日間で、スラムの人達にどこかに移動していてもらい、スラムの整備に3日、計5日ほどで区画整理が済んだ新しい公営住宅に入ってもらう予定です。
そして、スラムですが、整備ついでに教会に孤児院を増設し、身寄りのない子供が心配なく育つことができる環境を整えたいと思います。お世話係には、子をなくした女性や母子家庭の親子に住み込みでお願いできないかと考えています。
さらに、仕事です。これから始める薬草園や基礎化粧品工場、更にはお菓子や温泉とありますので、スラムの人々にも仕事を斡旋してほしいですね。働く場所がないなら場所を造り、働けないなら病気やケガを治して働けるようにして、生きるための気力を持ち直してほしいと思います」
そうなんだ。スラムの人々は気力を失っていた。
病気やケガが原因ならば今回だけは私が治し、単純に働く場所がないことが原因ならば、仕事を斡旋して働いてもらえば良いだろう。しかし、一番厄介なのが心の病かもしれないなぁ…。本人もままならない心の病気。何か癒しがあればいいのだろうか? 考えておこう。
「うむ。孤児院か。フォルツには今までなかったんじゃ…。教会が他の街には造っておって、フォルツの教会で保護した子供らは、他の街の孤児院に入れるという話じゃった。じゃが、やっぱり必要じゃの。教会の本部への根回しはワシのほうでしておくわい。下水道はその予定でいいんじゃが、いつ始めるんかの?」
「建具や内装用の木材がなく、用意をする時間が必要ですので、3日後に始めようと思います」
「うむ。その予定で、通達を出すかの」
「はい。よろしくお願いします」
フォルツの街の視察で感じたのは、主にハード面。中でも大きな問題二つを、下水道整備とスラム再生の提案をして、フォルツの報告は終わった。
さて、次の温泉の報告をどういうふうに進めようか…。
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