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第二章 幼少期~領地編
55.村に行く
しおりを挟むいよいよ次の街に出発する。
実は、冒険の始まりのようでワクワクして、今朝はいつもより早く目が覚めてしまった。
一週間の予定で、代官が治めるフォルツの東の街を視察するんだ。
事前に、代官が治める東の領地の資料と報告書や納税書類を見せてもらって、しっかり勉強してきた。
農業と酪農の地だという。農作物は主に小麦だ。一部で果樹栽培をしているらしいが、出荷量は多くない。酪農は乳牛のモーと馬、あの巨体一角馬だ。
どんなところかとっても楽しみだ。
本当は馬車なり騎馬なりで行くほうが、途中の様子がよくわかっていいんだけど、時間がかかりすぎるから、転移で代官の治める村のはずれに飛ぶ。
今回も長距離転移の発動は、リヒト先生にお願いした。先生は、冒険者時代に、カネッティ領はほとんど回ったらしく、これから飛ぶ村の場所も知っていた。
「気をつけるんじゃよ」
「はい。では、行ってまいります」
「行ってきます。アル、行くよ?」
「はい」
見送りに起きてきていたお爺様に挨拶をしてから転移した。
先生は、村の手前五キロくらいの、街道を少し逸れた森のはずれに転移したようだ。あんまり朝早くに村に入ると怪しまれるらしいから、少し森で狩りをして時間を潰して行くことにする。
<探索>をしてみたら、この森では魔素濃度が濃い場所がないからか、魔獣はいないようだ。代わりに野獣の反応がチラホラとあるので、少し狩っておくことにする。反応があった野獣の中にワイルドボアがいるようなんだ。ワイルドボアは、冒険者でも単独で狩るのなら、Cランク以上でないと厳しい。今回は、強そうな個体のみを狩ることにしよう。先生とそう相談して、森の中に入っていった。
二時間後、私達は、森の中にぽっかりと開けた小さな草原で、テーブルと椅子を無限収納から出して、まったりとお茶を飲んでいる。
もちろん、森の端までくまなく確認して、強い野獣だけを狩った。結構大きなワイルドボアの個体が村寄りにいて、今日このタイミングで来て良かったと思う。
もう一つ<探索>に引っかかって、どうしても狩る必要があったのがゴブリンだった。まだ小さな集団だったが、その異常な繁殖力で、あっという間に大きな集落になっただろう。本当に、今日この森に来て良かった。放っておけば、やがてあの村が襲われて壊滅するところだったんだ。
ゆっくり休憩してから出発する。森を完全に抜けると、緩やかな丘の上に出た。まだ青い小麦畑が広がる景色の中に、所々に果樹らしい木が数本ずつ植えられている。遠くに、丸太の塀に囲われた小さな集落が見える。
「先生、あの集落ですか?」
「ああ、そうだ。 でも、俺も立ち寄ってはいないから、どんな村なのかは知らないぞ? それと、言葉直せ…」
「あっ、そうだった! とりあえずは行ってみようよ」
「そうだな」
そう言って、二人は歩き出した。私は小麦畑が珍しくてじっと見ていて、あることに気が付いた。
「リヒト。小麦ってこんなに実がスカスカなの?」
「どれ? ……んっ、いや? この時期ならもっと実が詰まっているはずだが…」
「そうなんだ…。 なんだろう? 土地がやせているのかなぁ?」
私は、前世でも農業のことは詳しくなかったので、あやふやな知識としてだが、肥料不足や同じ場所で同じ作物を作り続ける連作を思い出していた。
たぶん、そのどちらもなのではないだろうか?
小麦がこれだと、他の農作物や果樹も何かしら問題がありそうな気がしてきた。村に着くまで、よく観察して行こう。
小麦畑の他に野菜畑、果樹を見るために、あちこちに寄り道をして、やっと村の門に到着した。
門前には、今日の当番だろうおじさんが一人立っていた。手に持っているのは、槍とかではなく、…クワのように見える。
「おめえ達、なにようで来た?」
「ああ、俺たちは冒険者だ。そこの森で狩った獲物を、ギルドに買い取ってもらおうと思ってな…」
「ああ、冒険者だか? んだが、ここにはギルドなんかねーぞ?」
「なに…? そうか。どうするかなあ?」
「そんだら、村長のところに行ってみっか? もしかして、買い取ってくれっかもしんねーぞ?」
「おっ? そうか? 案内してくれるかい?」
「おー。いーぞ。ついてこい」
そう言って、おじさんは歩き出した。門番の仕事を放って案内してくれるようだ。いいんだろうか…?
先生も気になったようで聞いている。
「おい。門番はいいのか?」
「あー? ちょっとぐらい、いいんだっ。誰も気にしねーぞ?」
そう言って、ニカッと笑った。
村の中心の辺りに広場があり、広場を囲む家のうち一軒のドアをノックした。
「村長! 冒険者のあんちゃんたちを案内してきたぜー」
「あんだ? 冒険者だぁ?」
「おうよ。あんちゃんとチビッ子だ。なんでも、森で狩った獲物をギルドに買い取ってもらおうと思って来たらしいぞ?」
「あー? わかった。後はこっちで話をするから、おめーは戻れ!」
そう言って、家から出てきたのは……クマ?だった。
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