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長生きするのに必要なスキルを考えよう 準備終了
しおりを挟む「他に心配なことはない?」
「私はこのまま『ビジュー』に行くの?」
異世界移住の先輩達の生存率を考えると、このままパジャマで転移?して、魔物の世界に行くのは怖すぎる……。
「愛凜澄は今、魂の状態なの。 だから『ビジュー』に馴染む体を創るわ」
魂の状態? 私は今、幽霊みたいなものってこと!?
ビジューの出してくれた、とってもおいしいけど高カロリー確実なケーキ、実は食べていなかった?
おいしい思いだけして体重は増えない、夢のようなラッキー状態?
「愛凜澄……」
ビジューには苦笑されたが、
「ビジューみたいなプロポーション完璧美人にはわからない悩みっていうものが……」
好きなだけ食べても太らない、それは甘いもの好きな女子の夢!
日本の女性たちが、どれだけダイエットに苦心していたか。 ダイエット特集の番組や雑誌の需要の高さと言ったら!
「では、そういう体質にしましょうね」
「本当!? そんなことができるの!?」
「できるわよ。わたくし神ですもの。
愛凜澄の体を今から創造するんだから、食べても太らない体質にするくらい簡単なことよ♪」
本当に、女神様だっ!
“ぎゅううううううううっ!!”
嬉しさのあまり、ビジューに抱きついて力いっぱい抱きしめてしまった。
「愛凜澄ったらどのスキルよりも嬉しそうね? 他にも希望があれば反映できるわよ。 髪や瞳の色も変えられるし」
自分の浮かれっぷりが恥ずかしくなって離れると、慈愛に満ちた目で見られた(気がした)。
「容姿はビジューに任せるよ。
長生きできたら結婚とかもしてみたいから、『ビジュー』の平均より少し上くらいに整えてもらえると嬉しい。
地球では流威の世話を焼くのが楽しくて、結婚とか興味なかったし……」
あ、でも、恋とかしたら、全部ビジューに筒抜けになっちゃうのか。ちょっと恥ずかしい気も……。
「ふふふっ♪ 愛凜澄の全てを見られる訳じゃないから大丈夫よ。 多分、ね?」
あ~、多分なんだね。 多分……。
「愛凜澄の希望が特にないなら……。 愛凜澄はとっても可愛い顔立ちをしているから、基本はそのままでいいわね。 あとは、わたくしが適当な体を創造していいのかしら?」
「病気になりにくい体質も欲しい」
医療が発達していないなら、健康な体は大事だ。
「あと、服はこのままパジャマなのはちょっと……」
「そうね、そのパジャマも可愛いらしいけど、もう少し、攻撃面や防御面を考えて……。
愛凜澄はどんな武器が好みかしら?」
好みも何も、ナイフとか銃とかしか想像ができないんだけど。
「銃はあるの?」
「銃はないわ。弓ならあるけど」
弓と魔法だと、接近戦が不安だな。 猪や熊の突撃速度の速さをTVで見たことがある。
「じゃあ、剣で。スキルで何とかなる?」
「ええ、【剣術スキルのレベル3】を付けておきましょう。人間の集落付近に出る魔物なら、十分に撃退できるわ」
「レベルは何段階まであるの?」
「1から10までよ。数が大きくなるほど熟練のスキルになって、威力が増したり、できることが増えていくの」
10分の3。下から3つ目か。
「【取得経験値倍増】のスキルもあるんだけど…」
あるけど?
「このスキルを足すと、魂の負荷が大きくなりすぎるわね」
「負荷が大きくなるとどうなるの?」
「愛凜澄としての記憶を覚えていられなくなるかも」
今まで生きて来た記憶とここでビジューと話したことを忘れる? 向こうに着いた瞬間から、能力だけ高い記憶喪失者の出来上がり?
「いらない! そんな能力より、記憶の方がずうっっっっと!大事!」
私である記憶や今の時間を忘れるくらいなら、頑張って魔物を倒して、倒して、倒しまくって、レベルを上げて生存率を上げる!
「いきなり強い魔物がいる場所には送らないでね?」
「どんな魔物も盗賊も一振りで仕留められるように、強くて美しい武器を持たせてあげる♪」
強くて美しい武器! ちょっと期待しちゃうな♪
「防具は<ビキニアーマー>と<ドレスアーマー>、どちらがいいかしら?」
え、その2択!? 私、どこへ向かう予定なの?
「普通ので良いんだけど……」
「女性が冒険者になるなら、目立っておいて損はないわ」
私は冒険者になる予定だったのかぁ……。
「『ビジュー』でお金を手に入れるには、冒険者になって魔物を倒し、素材を売り払うのがてっとり早いわよ。
強くなるとレベルも上がって、死ににくくなるからお得だし」
そっか。落ち着くまでの宿代だって食料を買うのだって、何をするにしてもお金は必要。
ポーションを売るにしても、まずは作るための素材が必要になる。
「私の貯金とかは持っていけないよね? 通貨が違うだろうし」
貯金、そんなにある訳じゃないけど、持って行けるなら当面の資金にはなる。
「お金は無理だけど、代わりに地球からの持込を1点だけなんとかしてあげる」
持ち込みできるの!?
「何でもいいの? 何でも持って行けるの?」
「ええ、1点だけなら大丈夫よ」
「じゃあ、私が死んだ時に身に着けていた、ダイヤモンドのネックレスを持って行きたい」
流威からの誕生日プレゼント。 私の誕生石は高いのに、アルバイトして買ってくれたもの。
「流威が買ってくれたネックレスを持って行きたい!」
銃弾で壊れていないといいんだけど。 私、蜂の巣状態だったけど大丈夫かな?
「ダイヤモンドのネックレスね? 大丈夫、持って行けるわよ(血塗れでチェーンも壊れていたけど、直せるわ)」
!! 無事だったんだ! よかった!
「じゃあ、防具は<ビキニアーマー>でいいわね♪」
いやいやいやいや! 釣られて「うん」なんて言わないよ?
「ビキニアーマーなんて、ビジューくらいにしか着こなせないから!」
「そんなことないわよ~?」
「いやいやいやいや、むりむりむりむりっ。<ドレスアーマー>で!
ドレスアーマーが着てみたいっ!」
本当は普通のでいいんだけど…、その2択なら、ドレスアーマーの1択しかない。
「そう? じゃあ、(うんと可愛くて)丈夫なのにしてあげるわね♪」
なんだかビジューがとっても楽しそうだけど、気のせいかな?
「食料とかお金も持たせてあげたいけど、アイテムとして持っていけるのは、装備品と水の入った水筒が限界だわ。 その分、強い装備を創ってあげるから期待していてね♪
ネックレスは、向こうで何があっても壊れないように加工してあげる」
強い装備はもちろん嬉しい。だけど、食料とお金は持って行けないのは厳しいかも……。
向こうに付いたら、しばらくは大変な生活になりそうだな。食べ物とかすぐに見つかると良いんだけど……。
「そうね。簡単に食べ物を見つけられたらいいけど見つからなかったら困るし、買うにもお金が必要よね。 簡単に手に入るっていう保証はしてあげられないし……」
管理者のビジューにも保証できないんだ? かなり厳しい状況になるかも……?
「手に入れたものを【複製】できるスキルもつけましょう! これも愛凜澄だけの特別スキルよ♪」
複製?
「便利なスキルだけど、特別スキルは魂に負荷をかけやすいの。保護の為に回数制限をつけるわね。 向こうでスキルレベルを上げて、回数を増やせるように頑張って! その代わり毎日回数が回復するようにしてあげるから、上手に使ってね♪」
本当に、私のことを考えてくれているんだな……。 スキルを上手に使って、長生きできるように頑張ろう!
特別スキルもいっぱいもらったし、とりあえずの不安材料はないはず。 後は地上に降りてから、だ。
不足があった時は何とか頑張ってみよう。
「じゃあ、準備が整うまで、お茶を飲みながら待っていて?」
そう言って、ビジューは紅茶のおかわりと苺のミルフィーユを出してくれた。
さっきのシフォンケーキもだけど、私の好物ばかりなのは、地球の神の情報提供の賜物だろうか。
ありがたく、いただきます♪
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