女神の代わりに異世界漫遊  ~ほのぼの・まったり。時々、ざまぁ?~

大福にゃここ

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新しい習慣

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 気が付くと、テーブルの上の料理はほとんどなくなっていた。

「ルシアンさんの分は?」

 別に取り置きしてあるのかな? 確認してみるとルシィさんが気まずそうに呟いた。

「忘れてた……」

「帰ってから作ってやれ…」

 親子揃って忘れていたらしい。

「マルゴさん、朝のパンが残っていたら貰っていいですか?」

 マルゴさんに甘えすぎかな?と思いながら聞いてみると、

「2つだけなら残っているよ」

 快く、アイテムボックスからパンを出してくれた。

「簡単なものをすぐに作りますので、これでも飲んでいてください」

 お礼も兼ねてりんご水を出すと喜んでくれたけど、冷えてないのが残念だ。

 マルゴさんの焼いてくれたパンは普通の丸パンなんだけど、びっくりするくらいにおいしいから、切れ目を入れてスライスした玉ねぎとローストポークをはさんでソースをかけると、とても美味しいサンドイッチになる。 
 残り物を全部使ったら、何とか見目良くできた♪

「これだけでは足りないかも知れませんが…。 こっちは明日の朝ごはんの足しに。まだ味が染みていないので、明日の朝まで涼しいところに置いておいてくださいね」

 サンドイッチと一緒に、おむすび3セットと煮ボア1本を鍋に移して煮汁を掛けて渡すと、

「ありがとう! 美味しそうなサンドウィッチね! ルシアンが食べなかったら私が食べてもいい?」

 ルシィさんが思った以上に喜んでくれた。 ……ルシィさん、ごはんをたくさん食べていたよね?

「本当に美味そうだ。朝から贅沢だな。 ルシィ、ルシアンの分は諦めろ」

 キラキラした目でサンドイッチを見つめるルシィさんに、ルベンさんがきちんと釘を刺している。 さすがお父さんだ。

明日の予定を確認すると、

「明日の朝は村民に肉を配布してやりたいんだ。解体はその後でも構わないかい?」

「俺も肉の配布を手伝ったあと畑を回るから、治療に回るのは午後からにしてもらっていいか?」

 マルゴさんとルベンさんが申し訳なさそうに言った。 

「大丈夫ですが、マルゴさんはお肉屋さんもあるし、治療の付き添いは無理ですね?」

 ルベンさんだけにお願いするか、誰か頼りになる人を紹介してもらおうか迷っていると、

「あら、マルゴおばさんのお店は私が店番をするわよ?」

 ルシィさんが笑って言った。 マルゴさんも、

「ああ、頼むよ」

 と簡単に答えている。 大丈夫なのかな?

「いつものことだよ。これでも村の顔役だからね。 店に手が回らない時は、手伝ってもらってるのさ」

 無理をさせているかとちょっと不安だったが、笑顔で説明されて安心した。

「じゃあ、明日は昼を過ぎてから治療に回ることにしますので、よろしくお願いします」

 そう言って頭を下げると、みんなも下げ返してくれる。

 ……会釈の習慣もあるらしい。








 話が落ち着くと、マルゴさんが増血薬の空ビンを返してくれた。

不味まずくて辛そうだったが全部飲んでいたよ。 飲んだ後しばらくしたら、顔色が良くなっていたねぇ」

 飲むのが辛いほどに不味いらしい……。 効き目はあったようだけど、味の改良が必要かな?

 空ビンがきれいになっていたので、わざわざ洗ってくれたのかと聞くと、

「【クリーン】を掛けたのさ」

 と言われて、【クリーン】の魔法が思った以上に使い勝手がいいことを思い出した。

 ボアの油がぎっとりと付いた鍋に【クリーン】を使うと一瞬できれいに落ちる! 面白くて、他の鍋や食器に使い続けると、あっと言う間に片付けが終わっていた。

(アリス、浮かれすぎにゃ…)

 呆れたようにハクに言われ、

「多いとは思っていたけど、アリスさんの魔力は本当に多いんだねぇ」

 感心したようなマルゴさんの言葉を聞くまで気が付かなかったけど、手当たり次第に魔力を使いすぎていたらしい。

(また、やっちゃった?)

(まあ、今さらにゃ。ヒールの連発で当りはつくにゃ)

(でも、問題はないよね?)

 魔力が多いことで、困ることが思いつかない。

「洗い物が一瞬で片付くなんて、うらやましいわ!」

 ルシィさんに羨ましがられた。 私も昨日、マルゴさんが羨ましかったから気持ちはわかる。

「本当だよ。羨ましいねぇ」

 でも、どうしてマルゴさんが羨ましがっているのかわからない。

「アタシはアリスさんほど連発して使えないし、ここまで綺麗には落ちないのさ。魔力量は立派な財産だよ。親御さんに感謝しておきな」

ビジューが“魔法やスキルを使いたいだけ使えるように”多めにしてくれたMPは、本当に使いたいだけ使えて、役立ってくれている。

「そうですね。心から」

 ビジュー、ありがとう!!  心の中で感謝を叫んだ。









 【クリーン】の便利さに浮かれた勢いで後片付けがすんでしまったので、ルベンさん親子は早々に帰って行った。

 見送った後、家の奥へ入って行ったマルゴさんが、朝の約束どおりに硬貨を出してきて説明をしてくれる。

 白金貨(1億メレ金貨)はギルドに預けているらしく、金貨までを見せてくれたのだが、家に金貨(1千万メレ)を置いているだけで十分に凄い。この上1億メレ以上も預金があるなんて、どれだけ稼いでいたんだ……。 

 マルゴさんの余裕の出所が少しわかった気がした。

 私もいっぱい稼いで、お金で解決するコトでおたおたしないように頑張るぞ!

 説明の後は、マルゴさんはお店の開店準備があるし、私もやりたいことがあるので早めに部屋に入ることにした。

 マルゴさんのおやすみのキスを額に受けて部屋に入ると、

「アリスはお休みのキスをしないのにゃー?」
「ぷっきゅー?」

 2匹が「どうして?」と聞くので戸惑った。 日本人には馴染みのない習慣だけど、

「して欲しいの?」

 と聞くと、

「んにゃん♪」
「ぷきゅ♪」

 可愛らしい返事が返ってきたので、魔物界にもある習慣なのかもしれない。

「おやすみなさい。いい夢をみてね」

 ハクとライムにおやすみのキスをすると、二匹ともとても喜んでくれたので、これからの習慣になりそうだ。
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