女神の代わりに異世界漫遊  ~ほのぼの・まったり。時々、ざまぁ?~

大福にゃここ

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初級ポーション

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 どれくらいの間眠っていたのか、目が覚めると辺りは真っ暗になっていた。

「起きたのにゃ?」

「うん」

「きゅっ」

 耳元で聞こえるハクの穏やかな声とふわふわの温もりに、背中から包み込んでくれているライムのぷにぷにボディの柔らかな感触はいつもの朝と同じで、一瞬だけ状況が理解できなかったけど、起きて辺りを見回すとフランカたちのお墓が目に入り、意識を手放す前のことを思い出した。

「にゃぁ……」
「ぷきゅ……」

「…大丈夫だよ」

 2匹が心配そうに寄り添ってくれるのを感じて、❝1人じゃない❞ことのありがたさをしみじみと感じる。

 積まれた魔物の死骸を見ても、自分が守られていたことがよくわかる。

「大丈夫。 もう、暗くなっちゃったから、今日はこのまま……」

 ここで野営しよう。と言いかけて、近づいてくる赤いポイントがマップに映っていることに気が付いた。

 注意して見ると、ゴブリン3体のグループが、ゴブリンの群れがいた洞窟に向かっている。

「…フランカ。ここでお別れするよ。 いつかビジューの元で会おうね!」

 お墓に向かって簡単に挨拶をすませ、魔物の死骸を回収してから足早に洞窟に向かう。 

 歩きながら<鴉>を取り出して腰に佩き、ライムをハウスに避難させたら準備完了だ。 ハクと一緒に洞窟に向かって走り出した。












「ゴガァァァッ!!」

「……ふぅん。 今度は足で」
「グギャァァァッ!!」

「……もう一回、腕で試そうか」
「ガアアアアアアッ!!」

「……やっぱり、半分強って所かな?」

 3体いたゴブリンの内の2体はさっさと退治して、最後の1体を生け捕りにして木に縛り付けて自由を奪い、私とハクは❝検証実験❞を開始した。

 私の作った<初級ポーション>の効能を調べる実験だ。

 方法は簡単。 ゴブリンの両腕なり両足なりに同じ深さの傷をつけ、市販のポーションと私のポーションをそれぞれの傷に使って違いを見るだけ。

 この検証は最初からこの森に来る理由の一つだったんだけど、なかなか実験を始めることができなかった。 魔物とはいえ、命を弄ぶようで抵抗を感じていたからだ。

 でも、私は<ゴブリン>という種族に対しての認識を改めた。 ……今は憎悪を感じるくらいだ。抵抗を感じることなく、実験を進めることができた。

 結果、私のポーションは市販の物の半分強で同じ効き目があることがわかる。 

「ちゃんと、高く売るにゃ!」

 ハクのアドバイスに従って、少し高めの価格を設定しよう♪








 洞窟へ戻って来るゴブリンを残らず退治するために、今夜はこのまま洞窟の前で野営をすることにした。

 ハクとライムがころころと転がりながらじゃれ合っているのを眺めていると、今日1日の出来事が悪い夢だったように錯覚してしまうけど、泣きはらしたせいでひりついている目元が、あれは現実のことだと教えてくれる。

 無邪気に遊んでいるように見えて、2匹が私の様子を心配そうにうかがっていることにも気がついちゃったしね。 現実から目を背けることはできないな。

 フランカからの預かり物をインベントリから取り出して、簡単に目録を作成する。と言っても、あまり多くはないけど。

 野営に必要な道具や着替えと財布。それから真っ黒に変色してしまったギルドカード。後は、小さいけれど宝石の付いた髪飾りが1つ、大切そうにハンカチに包まれていた。

 フランカは売って孤児院に寄付して欲しいと言っていたけど、全てこのまま持って行った方がいいだろう。どれも使えるものだし、髪飾りは彼女の形見になってしまったものだし。 現金化するのは孤児院の責任者に任せよう。

 道具を丁寧に磨き、服のほつれを繕っていると、2匹が近づいて来て膝の上に乗った。 お腹が空いたのかな?

「何が食べたい?」

「アリスが食べたいものにゃ!」
「ありすがたべたいもの~!」

「え?」

「食べないと体に悪いにゃ……」

 てっきり遊び疲れて腹ペコさんなのかと思ったら、2匹は私を心配してごはんタイムに誘ってくれていたようだ。

 いろいろとあったせいで食欲がないのは確かなんだけど、2匹の気遣いが嬉しかったので、少しだけおかゆを食べることにした。 「それだけにゃ?」と心配そうに聞かれたけど、今日はこれで十分だ。 2匹にはおかずもたくさん食べてもらったけどね。 

 従魔たちが食事をしているのを眺めているだけでも、栄養になる気がする。

 食べ終わるなり「アリスはゆっくりと眠るのにゃ!」と言ってくれるハクに夜番を任せて、私は眠ることにした。 

 昼間にたくさん寝てしまったので、寝られないかも?と思ったんだけどそんなことはなく、2匹に寄り添われて目を閉じると簡単に意識が遠のいていく。 

 ……いつもありがとうね。

 両頬に感じる優しいぬくもりに、心の中で感謝を伝えた。
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