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しおりを挟む「……………?」
「起きたのにゃ?」
「ありす、おはよう!」
「……うん、おはよう」
朝焼けに染まっている空は今朝も美しく、まだ柔らかい太陽の光の下で見るハクとライムは文句なく可愛い。
と言うことは、私の目は正常だってことだよね?
ハクとライムにおはようのキスを返しながらもう一度確認してみる。
……うん、やっぱり見えるよ。私の目の前、ほんの1m先に、白と黒の2つの塊。
「これ、何?」
「昨日アリスが助けたスレイプニルにゃ」
「……やっぱり? で、何がどうしてこうなってるの?」
昨日助けたスレイプニルは、大きな馬の魔物だった。 小さい方の雌だって私が見上げるほどには大きかったはずなんだけど、今私の目の前にいるのは、8本の足を折りたたみ、顎を地面にぴったりとくっつけて微動だにしない、まるで岩のような白と黒の塊。
「アリスの従魔になるのにゃ!」
「……なんで?」
「アリスがおいしいからにゃ!」
「っ!?」
「「ヒンッ!?」」
ハクの言葉を聞いて、とっさに迎撃態勢をとった私は間違っていないはずだ。 馬たちの驚いたような鳴き声が聞こえたことと、ライムが私の目の前に飛び込んで来たことで攻撃まではしなかったけど。
「魔力にゃよ?」
❝いたずら成功!❞とでも言いたげに楽しそうなハクの説明で、おいしいのは❝私❞ではなく❝私の魔力❞だとわかった。雄の治療に使ったヒールが、怪我を治しただけでなく活力も与えていたらしい。
それが理由で昨日からずっと私たちの後をついてきていたらしいけど…、
「ん~…、この度はご縁がなかったということで」
「にゃっ!?」
やっぱり受け入れるのは難しいかな。
お断りを口にすると、馬たち以上にハクが驚きの声を上げた。
「どうしてにゃ!?」
「旅はいろいろと危険だってわかっているでしょ? お馬さん達の為にも連れて行かない方がいいと思うよ」
「だいじょうぶにゃ! スレイプニルはなかなか強い魔物にゃ!」
「昨日、別の馬に負けかけてたけど?」
あまり強いとは思えなかったけど、昨日はバイコーンとの戦いの前に他の魔物と戦っていて、元々負傷していたところに不意打ちを食らったらしい。
「この森の主のような奴との戦いの後だったのにゃ!」
「ふぅん? でも、いきなり2頭も増えたら、食事の問題も出てくるしね」
「大丈夫にゃ! 基本は水と果物と生野菜で、時々魔物肉をあげればいいのにゃ。 手間はかからないし、アリスには複製があるのにゃ!」
「頭数が増えたら意見の食い違いっていうか、喧嘩になる確率があがるよ?」
「それも大丈夫にゃ! 夕べちゃんと教育して、ライムには逆らわないと誓いを立てさせたのにゃ♪」
……私が寝ている間に何があったのか。自分ではなくライムに逆らわせないというのは、やっぱりスライムが弱い魔物だからかな? 下手をすると危害を加える危険があったってこと?
ちょっとだけ不審の目で見てやると馬たちは慌てたように首を振り、まるで馬たちを庇うように近づいて行くライムに鼻を摺り寄せて甘えるような鳴き声を上げた。
従魔と従魔候補の間ではすでに話がついているらしい。 もう仲良しなのかな?
それにしても、どうしてハクがここまで乗り気なのかと不思議に思って黙っていると、焦れたようにハクが叫んだ。
「もう、乗合馬車に乗らなくてもいいのにゃ!!」
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