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八つ当たり? 2
しおりを挟むまずは3頭の意識をこちらに向ける為に、大きな【アイスボール】を作って雄たちの間に投げ込んでみる。
様子見のつもりだったんだけど、驚いて後ろ足で立ったバイコーンを見て嫌悪を感じた私は思わず、
「【ウインドカッター・ダブル】!」
バイコーンの下半身で元気に反っているモノごと下半身をぶった切り、同時に首を落としていた。
アイスボールに驚き、今にも自分に襲いかかろうとしていたバイコーンが突然倒されたことに驚いたスレイプニルが私を見て反射的に「ブルルルルルルッ!」と威嚇の声を上げる。 まあ、当然の反応だよね。
「無事だね? 怪我の治療をしてあげるけど、私たちに襲いかかってきたらバイコーンと同じ目に遭わせるよ?」
馬の魔物に言葉が通じるかはわからないけど、精いっぱいの優しい声で言ってみる。
敵意はないと示す為に穏やかな微笑みを浮かべながらスレイプニルたちの出方をうかがっていると、意外にも雌の方が私たちに近づいて来た。 とっさに止めようとした雄を蹴り飛ばして近づいてくると嘶く。
「ヒヒン、ブルルル…?」
「助けてくれてありがとう。本当に治してくれるの?って言ってるにゃ」
「ハク! 馬語もわかるの!?」
「当然にゃ! 僕は神獣にゃ!!」
ハクが馬語(魔物語?)をわかることにも驚いたけど、それ以上にスレイプニルが私の言葉を理解したことに驚いた。 しまった! ❝バイコーンと同じ目に遭わせる❞って言っちゃったよ…。
私が内心で焦っていることは気が付かないのか、ハクと馬の魔物はお話を続けている。 面倒になったのか、ハクの通訳はない。 治療をしてもいいのか迷うなぁ…。
ハクと魔物のお話は和やかに進んでいるようだし、雄の方も攻撃をしてくる気配はないので、手持無沙汰な私はさっさと雄の治療を済ませることにした。
今回使う魔法は【ヒール】だけ。 いつものように完璧に治すわけじゃなく、出血を止めて大きな怪我を治すだけならこれで十分だろう。
「ヒ、ヒヒン…」
「ありがとう、って言っているのにゃ」
本当に治療されるとは思っていなかったのか、雄が戸惑いながら声を上げたのをハクが通訳してくれた。
雌もそうだったけど、ちゃんとお礼を言ってくれるなんて<魔物>の中でも理性的な種族らしい。
❝助けた相手から襲われる❞なんて間抜けなことにならなくて良かったと安堵しながらバイコーンを回収し、スレイプニルたちに別れを告げる。
せっかく意思の疎通ができる魔物と遭遇したんだから、少しお話をしてみたかったんだけどね。 今は街へ急ぐ方が優先だから仕方がない。 またいつか会えたら、たくさんお話してみたいな!
急ぎ足で森を進んだけれど、夜までに森を抜けることはできなかった。最低限の戦闘と採取ですませたんだけどな…。 やっぱり全部スルーした方が良かった? でも、そんな勿体なこと……。
「まだ、いるにゃ」
1人反省会をしていると、ハクの呆れたような声がした。
「どうするのにゃ?」
「ん~、害はなさそうだから放っておく」
少し前からずっと付いてくる赤ポイントだけど、攻撃してくる様子もないしスルーでいいだろう。 さっさと野営の場所を決めてライムを出してあげないと!
ちょうど良さそうな場所が見つからないので、自分で場所を作る。
木を何本か切り倒し、丸太のままインベントリに収納する。 程よい空間を作り出してからライムを出してあげたら、寂しかった!とばかりにすりすりして来たので、ハクと一緒にライムのぷにぷにを心ゆくまで堪能した。
ライムが寂しくない様にハウス内を改善できたらいいんだけどね。 私はハウス内がどうなってるのかすら知らないんだから、ちょっと難しいかな。
火であぶり、チーズを乗せた丸パンと卵と野菜たっぷりのスープ、マッシュポテトのオムレツとハーピーの赤ワイン煮込みで簡単に晩ごはんをすませると、ライムが私の背中に張り付いた。
「【アイスボール】食べる?」
「たべる!」
「たべるにゃ!」
食後のデザートにアイスボールを出してあげると2匹とも喜んでくれたけど、ライムは私の背中から離れるつもりはないらしい。 随分とさみしん坊になっているようだ。
何を思ったのかハクまで一緒になって私に張り付きだしたので、私は身動きが取れなくなってしまった。 ……仕方がないからもう寝ようかな。
毛皮の敷物の上にマントを広げると、
「今夜も僕が守っているから、アリスはゆっくりと休むのにゃ!」
ハクが胸を張って安全を請け負ってくれたので私は安心して身を横たえた。
ライムがおやすみのキスをねだりに背中から離れたので、そのまま抱きしめて抱き枕にしてしまう。
びっくりしたのかじたばたしていたけど、すぐに「ぷきゃ~♪」と可愛い声で鳴いて大人しくなったので、そのままゆっくりと目を閉じた。 ハクも腕の中に潜り込んできたので、とっても贅沢な抱き枕のできあがり!
おやすみなさ~い。 明日も頑張ろうね!
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