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冒険者ギルドに到着!
しおりを挟む人の好さそうな門番さん達に冒険者ギルドやお風呂付きの宿の評判などを聞いてみる。 やっぱり地元の人たちの評判は大事だよね!
門番さん達が教えてくれた宿をマップで確認すると、ここから離れた街の中心にほど近い場所にあることが分かった。 ここから近い所にはお風呂が付いている宿はないらしい。
この街にお風呂付きの宿は3軒。 3軒とも街の中央付近に建っているが、この時間からの予約なしの宿泊は難しいだろうとのこと。
今夜は冒険者ギルドへ行って寄ってから、ギルドの近くの宿に泊まるのがよさそうかな。
なんとなくの予定を立てながら冒険者ギルドへ向かっていると、
(アリス。冒険者ギルドに登録をするのにゃ!)
ハクからの心話が届いた。
(うん。ギルドの雰囲気が良かったら登ろ)
(ギルドの雰囲気は、登録をしてからアリスが良くすればいいだけにゃ! どこへ行っても嫌な奴はきっといるのにゃ。 だからもう、ここで登録をするのにゃ!)
(オスカーさんからのアドバイスは?)
(オスカーは依頼内容を吟味するように言っていただけで、ギルドの雰囲気のことは言わなかったのにゃ)
……言われてみればその通りだ。オスカーさんが言っていたのは❝自分の特性に合う依頼が多いギルドで登録する❞ということだけだった。
それならスフェーンの森関連の依頼が多くあるようなら、ここで登録するのも悪くない。 …モレーノお父さまの話では、ここの領主も悪い人ではなさそうだしね。
(わかった。この街のギルドで登録するつもりで行く。だったら宿もギルドで紹介してもらおうか)
確かギルドが経営している宿があると聞いた。これだけ大きい街のギルドなら、宿泊施設もそれなりに用意しているだろう。登録してから1年間は割引があるって言っていたしね。 お風呂のある宿は逃げないし!
今後の予定に目処がついて、急ぐ足が少しだけ軽くなった気がした。
ギルドまでの通り道に門番さんから聞いていた宿があったので前を通ってみたんだけど……。 なんて言うか、ドアパーソンの態度が良くなかった。
この街で2番目と3番目に高級だと聞いていた宿のドアパーソンたちは宿の外観を見ていた私と目が合うと、羽織っているマントと私の背後に人がいないことを視線で確認するなり❝ここはお前の来るところじゃないぞ❞とばかりに鼻で嗤ったり、見下す視線を投げて寄越したのだ。
……ホーンラビットのマントはルシアンさんが私を心配して譲ってくれたものだし、マントの中はモレーノ邸のメイドたちが目の色を変えて褒めてくれた着物ドレスだし、私の連れているのはちっちゃくても神獣。 見た目で見下される覚えはないんだけどなぁ。
いくらお風呂が付いていても、宿の❝顔❞の態度がこれでは宿の❝格❞も推して知るべし、だ。 野営の方がずっとましだね。
がっかりした気分を引きずったまま、予想よりも随分と大きかった冒険者ギルドの扉を開いた。
門をくぐってからここまでの道は灯りが落ちて人通りもまばらだったのに、ギルドの中には人が多く喧騒が広がっていた。
このギルドは入ってすぐが受付の座るカウンターで奥の方が酒場の作りになっているんだけど、受付付近は閑散としている代わりに酒場の方はなかなかの混み具合だ。 祝杯を挙げている人、管を巻いている人、酔いつぶれている人……。
……なぜか視線が私に集まっているのが気になるけどね。この時間の来訪がそんなに珍しい?
酒場の奥の方に階段があって、そこから上の宿泊施設に上がる様になっているみたいだけど、あんまり近づきたくない雰囲気だ。
(アリス! 早く依頼ボードを確認して、登録を済ませるのにゃ!)
私の戸惑いを他所に従魔たちは落ち着いたものだった。
❝くんっ❞と鼻を鳴らしただけで後は興味なさげに欠伸をしながら(イマイチにゃ)(いまいち~)と不服そうな心話を送って来る。 ……酒場の食べ物が、イマイチ興味を引かなかったらしい。
どこまでもマイペースな従魔に微笑みを浮かべながら、カウンターに近づいて行くと、
「パーティーの募集ならあっちの酒場のマスターに言って」
受付のカウンターに座っていた女性が、頬杖を突いた姿勢で面倒そうに酒場の方を指差した。
「……は?」
一見すると可愛らしい容姿を持っている女性は私の反応が気に入らなかったらしく、❝シッシッ❞と犬猫でも追い払うように手を払って酒場を指差す。
(ハク、ここはイヤ! 他の街へ行くよ!)
自分の眉間にしわが寄るのを感じながら、ハクに(今日はその辺で野宿だ)と伝えて踵を返すと、
❝バシッ!❞
「きゃあ! 何すんのよっ、痛いじゃない!」
「黙ってそこをどきなさいっ!!」
何かを叩く音と耳に障る悲鳴、そして受付の彼女を叱責する厳しい声が聞こえた。
反射的にそちらを振り返ると、綺麗な女性が私を見ながら片手で彼女を椅子から引きずり降ろしている。
上品な顔に似合わずパワフルな行動にびっくりしている私と目が合うと、
「この者の非礼をお詫びいたします。大変申し訳ございませんでした。 …本日はどのようなご用件でいらっしゃったのですか?」
深く頭を下げた後に、しっかりと目を合わせて用件を聞いてくれた。
「このギルドでは、パーティー加入が冒険者の必須条件なの?」
このギルドに来たのは依頼ボードの確認と冒険者登録のためなんだけど、まずは気になったことを優先して確認してみる。
「いいえ、そのような条件はございません。 ……この者の非礼を重ねてお詫びいたします」
別にソロ活動でも問題はないらしい。 だったらどうして彼女はいきなりあんなことを言ったのか? その疑問は、
「ちょっと、何すんのよっ! 痛いじゃない! 私は面倒を省いただけでしょ!? あの女が早く媚を売れるように、時間を節約してあげただけじゃない!」
……新しく受付に付いた綺麗な女性に、強引に頭を下げさせられた彼女の言葉で合点がいった。
どうやら私は、例の❝コンパニオン冒険者❞と思われたらしい。
ふぅん? なるほどねぇ……。
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