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冒険者登録 2

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「はい、喜んで担当をさせていただきます。 よろしくお願いします」

 私が下げていた頭を上げると、今度は綺麗な受付さんが満面の笑みを浮かべながら頭を下げてくれた。

 頭を上げた受付さんと目を合わせて、2人で微笑み合う。

 従魔たちハクとライムも受付さんを気に入ったようでカウンターの上に飛び乗って愛想を振りまいているし、受付さんも2匹に挨拶をしてくれながら「か、かわいいっ…」と呟いて見悶えている。

 うん、とってもうまくやっていけそうだね♪

 冒険者登録の為に必要なことを書類に書き込んだら、手をハクの口元に。ハクが慣れた様子で指先に❝かぷっ❞と噛みつき、にじみ出てきた血液をプレートに垂らすと今度はライムが受け取って受付さんに渡してくれる。 

 私たちの一連の動きを見ていた受付さんが目を丸くして、

「なんだか慣れていますね? どこかで経験が?」

 と聞くので商業ギルドの会員であることを説明すると、とても感心したような目で見られて思わず苦笑いだ。

 商業ギルドでは2度もギルドカードを作っていて、今回で3回目だからね~。恥ずかしいから言わないけど。

 ここで❝ランクのスキップ試験❞のことも説明されたけど、自分の能力を不特定多数に宣伝するつもりはないのでやめておく。大人しく❝F❞ランクのギルドカードを発行してもらって登録は終了だ。

「では、改めまして……。
 ラリマーの冒険者ギルドへようこそ! ギルドへのご登録、誠にありがとうございます。これからのご活躍を楽しみにしております!
 わたくし、アリス様の担当をさせていただく」
「おいっ、もう登録は済んだんだろう? だったらさっさとこっちへ来て酌をしろや~!」

 綺麗な受付さんの挨拶の途中、彼女が名前を名乗ろうとしてくれたタイミングで邪魔が入った。

 酒場で飲んだくれていた内の1人がこっちへ近づいて来ていたことには気が付いていたけど、まさか私に用だとは思っていなかったので気にも留めていなかったんだけど……。

 彼女の名乗りを邪魔してくれたばかりか突然私の腕を掴んで強引に引っ張る男に、私の機嫌は急下降だ。

「何をしているの! ギルド内で冒険者同士の諍いは厳禁よ! その手を放しなさい!」

 受付さんが男に注意してくれたけど(普段はそんな話し方なんだね~? 私にもそんな風で構わないのになぁ)、男は、

「新入りの歓迎をしてやるだけだろ~? ギルドは冒険者同士の交流には口出ししない方針だよなあ? ビーチェちゃん!」

 受付さんの言葉には耳を貸さずに、最初に受付に座っていた、とても失礼な彼女に声を掛けた。 ……どうして綺麗な受付さんの前に、彼女なんかの名前を知らなくてはいけないの? 

「ええ、そのとおりですぅ~。 せんぱぁい? せっかくの交流の機会を邪魔しちゃだめですよぉ」

 ……一瞬、誰!?って声の主を探してしまったほどに甘ったるい話し方をした彼女に、男はデレデレした顔を向けながらも私の腕を掴んだ手の力を抜く様子がない。

 私たちの声が聞こえているであろう周りを見回してみると、カウンターの向こうのギルドの職員は半数弱は見ないフリを決め込み、残りの半数強は不愉快そうな目で男を見てはいるけど何も言わない。…この様子は❝言えない❞のかな?

 酒場にいる男たちはニヤニヤと笑っていて、少数いる女たちはなんだか不愉快そうな目で私を(男ではなく私を!)見ているだけで止める気配はない。 酒場のマスターだけは、まるで「どうするんだ?」とでも言いたげな表情で私を見ているけど。 

 ……なんだか、私の行動をマスターに試されている気がしてとても不愉快だ。 これが❝新入りの歓迎の仕方❞だっていうのなら、私は全力で歓迎を拒否する。

 ただ1人、私を庇おうと声を荒げてくれている綺麗な受付さんに感謝の微笑みを贈り、男に向き直る。 もちろん微笑みはひっこめて。

「その汚い手を離しなさい」

「はぁ!? なんだと?」

「私の腕を掴んでいるその汚い手を、今すぐに離しなさい!」

 私の怒声が聞こえた男の仲間らしき男たちが立ち上がって笑いながらこちらに歩いてくる。

「おいおい、先輩に対する礼儀を知らないお嬢ちゃんだなぁ? 女は可愛げが大事だぜ?」

「あなた達はこの男の仲間なの? だったらこの男の行動を止めなさい! 5つカウントをする間に私の腕を離さないと、この男の腕を潰すわよ? 5…、4…」

 私が警告をしても男たちはゲラゲラと笑い、腕を掴んでいる男は「やれるものならやってみな~?」とにやにやと笑ったまま、腕の力を強めた。 強がりだと思われているらしい。 ……仕方がないな。

「3…、2…、1」

 ❝ザシュッ!❞
「グァァアアアアーッ!」

 カウントが終わっても腕を離す気配がないので、私はマントを払って<鴉>を引き抜き、そのまま私の腕を掴んでいる男の腕を胴体から切り離す。

 ちゃんと警告はしたからね? 

 私の腕にぶら下がっている男の腕を引きはがして床に投げ捨て、我慢できなかったため息をそっと吐き出した。
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