女神の代わりに異世界漫遊  ~ほのぼの・まったり。時々、ざまぁ?~

大福にゃここ

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馬具職人 4 

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「鞭をお忘れでは?」

「そんな物いらないわ」
「んなもんいらねぇよ」

 納品から戻って来たお弟子さんが、私たちの注文を書面に起こしながら<鞭>を忘れていると指摘してくれたけど、私とトーニオさんの返事は「いらない」で合致した。

 賢いスレイとニールはそんなものむちで叩かなくったって、自分たちでより良い判断をできるからね。

 鞭を必需品だと思っていたお弟子さんは驚いていたが、トーニオさんの「嬢ちゃんの従魔たちはみんな利口なんだ。俺たちの常識は必要ねえ」の一言で納得してくれる。

 お弟子さんがスレイとニールをまじまじと見つめて感嘆のため息を零し、「これは失礼しました」と2頭に向かって頭を下げてくれたので、❝鞭❞と聞いて少しだけ機嫌を悪くしていた2頭も大きな鼻息1つで機嫌を直してくれた。

 その2頭の態度に「本当に賢いな…」と呟いたお弟子さんはスレイ達を撫でたそうにソワソワし始めたけど、2頭が揃って❝プイッ❞と顔を背けるのを見て残念そうに、本当に残念そうにしながらも、きっぱりと諦めてくれた。

 お弟子さんの教育もきちんとできているようで、トーニオさんの株がますます上がったことは言うまでもないかな。










 オークの皮の剥ぎ取り方に注文があると言うトーニオさんを連れて冒険者ギルドに戻ると、事情を説明する前にディアーナさんが出て来て<ギルドマスター室>に案内してくれる。 

 スレイとニールはもう一人の私の担当であるシルヴァーノさんと訓練場でお留守番だ。

 促されるままにドアをノックすると、中から入室を促す女性の声がすると同時にドアが開いた。とりあえず部屋に入ろうと一歩踏み出したんだけど……、

「………何してるの?」

 部屋の中央に憔悴した顔で正座している男性たちがいるのを見て、自然と足が止まってしまう。 よく見ると、昨夜ギルドマスターくまと一緒に私の睡眠を邪魔したこぐまたちだ。

 屈強な男たちが部屋の真ん中で体を縮めながら正座をしていて、その後ろには数人の女性たちが立ってこちらを見ている。 ……どうして私がこんな場面に案内されるの? 

 ディアーナは戸惑う私だけを部屋に入れると、そのまま部屋を出てドアを閉めてしまった。 

 訳が分からず、抱っこしていたハクとライムを抱きしめていると、

「「「本当に、すみませんでしたぁっっ!」」」
「「「「「昨夜はうちのバカがすみませんでした」」」」」

 部屋の中にいた人たちが一斉に頭を下げる。

 ただただ戸惑っている私の状況を察した1人の女性が、「今朝早くにサブマスターからの使いの方が来て、愚兄たちのしでかしたことを教えてくれました」と、なぜ自分たちがここで揃って頭を下げているのかを説明してくれた。

 彼女たちはそれぞれ、冒険者こぐまたちの親族やパーティーのメンバーらしい。その彼女たちが、

「集団で女性の寝込みを襲うなんて」
「そんな真似をしても自分たちなら笑って許されると思っていたなんて」
「「思い上がりも甚だしい!」」
「若くて綺麗なお嬢さんの心を傷つけた責任の取り方が❝自分たちとの結婚❞だなんて」
「得をするのは自分たちだけで、お嬢さんからしたら迷惑な話だと分からないとは」
「「「「「この勘違い男どもが、本当にごめんなさい!!」」」」」

 一言何かを言うたびにこぐまたちは身を縮こまらせ、彼女たちが揃って頭を下げると❝もう身の置き場がないっ❞とばかりに床に突っ伏した。 ………いわゆる土下座の姿勢だね。

 私の中では❝買い物の代金を肩代わりしてくれる❞ということで折り合いがついている話だから、重ねての謝罪は必要ないんだけど…。 とっくに成人している身内こぐまたちの不始末の為にわざわざ謝りに(子熊たちへのお説教を含む)来てくれた彼女たちを無下にしようとは思えなかった。

 彼らからはお金で謝罪をしてもらうことを伝え、彼女たちの謝罪の気持ちは受け取ったこととわざわざ来てくれたことにお礼を言うと、

「「「「「こんなに優しいお嬢さんになんてことをしてくれたのよ……」」」」」

 なぜか女性たちが落ち込んでしまったので、私は慌ててしまった。 

 結構な額を使わせる気満々なのに、そんな風に言われると私の心が痛むからやめて欲しいなぁ。










 待たせていたトーニオさんと一緒に解体場に向かうと、なぜか酒場でごろごろしていた冒険者たちが一緒について来る。 オークを2頭解体してもらうだけなのにね?

 一応それとなく伝えてみたんだけど、みんな気にする様子もなくついてくるので放っておくことにした。

「なんだよ、アレ! さっき以上に大物じゃないか!」
「なんで初めにあれを出さなかったんだ? ってか、もしかしてまだ持ってるんじゃないか?」

 という外野の声は無視してトーニオさんが詳しく皮の剥ぎ取り方を注文し終わるのを待って、

「そのお肉は私たちが食べようと思っていた分だから、鮮度を保つためにすぐにアイテムボックスに入れたいの。 割り増し料金がかかっても良いから先に解体してもらえる?」

 とお願いすると、

「自分で食うのかよっ!」
「あれ2頭でいくらの金になるんだっ?」
「「「「「もったいねぇ……!!」」」」」

 なぜか解体室が大騒ぎになった。

 ……ハクが耳を抑えてうるさがっているから、もうちょっとだけ静かに騒いでくれないかなぁ?
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