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検証 2

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 どこか遠くで鳥の鳴き声が響く中、目の前でフランカのお墓が掘り返されるのをじっと見ていた。

 鳥の鳴き声もいつの間にか聞こえなくなり、土を掘り返す音だけが聞こえるのを何となしに認識していると、

「何にも出てこねぇぞ! どれだけ深く埋めたんだよっ!? アリス、おまえ…さん1人でどうやって穴を掘ったってんだ!?」

 ギルマスの困惑の声が辺りに響いた。

「ん? 獣に掘り返されないように、少し深めに埋葬したの。 穴を掘るときは魔法でね」

 掘り返すことなんて想定していなかったから、結構深めに掘った気がするなぁ。【アースウォール】の応用で簡単に掘れたし。 

 ❝魔法で掘った❞と聞いたギルマスが、

「だったら」
「手伝わないからね」

 ❝手伝え❞と言う前に拒否の姿勢を示しておく。

「私は埋葬前にフランカと少女、そして小さなゴブリンの死亡を確認してるんだから」

 私には死者の眠りを妨げる理由がないと告げると、ギルマスは意外なほどあっさりと諦めてくれた。……報告内容を疑われて不愉快だ!って聞こえたのかもしれない。

 ギルドが遺体を検証することは仕方がないと思ってるんだけどね。 いち冒険者の報告を全て鵜呑みにするような組織だと反対に困るし。

 ただ、私は❝お墓を掘り返す❞といった行為をしたくないだけだ。 なんとなく、の感情だから説明はむずかしいんだけど。

 心の中で言い訳を呟いていると、埒が明かないと判断したメラーニアたち冒険者が掘り返し作業を手伝い始め、同時にサブマスが鞭を取り出し、ギルド職員のイルマが私の横に移動してくる。 

「……そんなに近くで見張らなくても、逃げたりしないよ?」

 別に疾しいことは何もないし?とアピールするように座り込んで膝を抱えると、

「み、見張りなんて…っ! ………観察していたことに気が付いていたのですね」

 言い繕うことを諦めたイルマが困ったように私を見下ろした。

「まあ、ね。初対面の私の言うことを頭から信じろって言う方が無理な話だし、気にしてないからそんな顔しなくていいよ」

 今回は私を疑うことがイルマの仕事でしょ?とフランカのお墓を見つめながら言ってあげる。本当に気にしてないからね。

「虚偽の報告例が過去に何件かあったので……。すみません。
 でも、今は見張りに来たとかそういうんじゃなくて、その……。近くにいたら守ってくれるかな?と」

「うん?」

「ギルマスと冒険者2人が穴掘りをしているあの状態だと、守りがサブマス頼りになります。 サブマスの武器は鞭なので邪魔にならないように距離を取るんですが、そうすると心細くて……。 
 アリスさんの側にいれば、守ってもらえるかな?って…。 すみません」

 警戒されているとばかり思っていたのでイルマの告白にはちょっとびっくりだけど、まあ、彼女1人を守ることくらいは大した手間じゃない。 でも、

「私はギルドで<コンパニオン>だと思われていたんだよ。他人を守る実力ちからがあると思うの?」

 ちょっとだけ意地悪を言ってみる。暇つぶしの代わりだ。

 だから彼女が、

「アリスさんの実力は、ギルマスと解体担当者が保証してくれました!」

 と言い切ったことに驚いた。 

 解体担当者?と首を傾げる私を見て、イルマは唇に指を1本当てながら楽しそうに説明を始める。

 ベテランの解体担当者たちは持ち込まれた魔物の倒され方を見て、持ち込んだ冒険者の腕前を推測しては、❝今のランクを当てる❞または❝いつくらいにランクアップする❞かを❝賭け❞て遊んでいるらしい。

 その彼らが私の倒したオークやハーピーを見て、<Aランク>や<Bランク>と高ランクの冒険者だと推測した上に、現在ラリマーの冒険者の中で一番強いギルマスが私の実力を保証したことで、ギルドの職員の中に私の実力を疑う者はいないそうだ。 

 ……一部の目が曇って耳が詰まっている人を除いては。

 その上、出発前にサブマスが「冷静にアリスを観察するように」と指示した上で「不測の事態が起きて危険を感じたらアリスの側にいけ。守ってくれる」と言っていたらしく、彼女はそれを実行したようだ。

 チラリとサブマスに視線を送ると「ついでにわたしも守ってくれて構わないぞ?」と唇の端を吊り上げるので、「依頼するなら受けてあげる」と微笑みかける。 

 イルマが得意そうにアイテムボックスから依頼用紙を取り出すのを見て、3人と従魔たちで笑っていると、

「おっ! やっと……。 おいおい、なんだこれ?」
「え、花? こんなにたくさん?」

 穴の中からギルマス達の声が響いた。 やっと掘り返し終わったみたいだ。

 埋葬しているフランカたちの遺体を傷つけないように慎重に掘っていたようだから、後で【クリーン】をサービスしてあげようかな♪
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