女神の代わりに異世界漫遊  ~ほのぼの・まったり。時々、ざまぁ?~

大福にゃここ

文字の大きさ
406 / 754

街歩き1日目&2日目

しおりを挟む




「おいしいにゃ! 生ハムは何にでも合うのにゃ!」

 一口大にカットして果肉に生ハムを巻いただけの<生ハムメロン>はお肉大好き!なハクのお気に召したらしく、

「これはすっごく!米に合うのにゃ~!」

 皮に近いかたい果肉を使った<メロンの浅漬け>も大好評なので、無駄なくおいしくメロンを使い切れて言うことなしだ! これはスイカで作ってもおいしいんだよね~。スイカが手に入ったら作ってみよう♪

 サクランボのジャムは甘酸っぱい爽やかなおいしさで、パンに塗って良し、ヨーグルトやアイスに掛けても良い、なかなか使い勝手の良いものになった。

「とってもきれいでおいしいね。 でも、ありすのおみずでつくるほうがぼくはすき~!」

 赤ワインにりんごと桃と木苺を加えた<サングリア>と、白ワインにオレンジとりんごと桃とサクランボを加えた<サングリア・ブランカ>は一応及第点を貰えたけど、ライムにはお水と果物と野菜で作る<フレーバー・ウォーター>の方がおいしいらしい。 サングリアは少し大人向けの味だから仕方がないかな~?

「これもおいしいにゃ」
「おいしいね」

 果肉た~っぷりのメロンゼリーとメロンのシャーベットは安定のおいしさなんだけど、なんだか2匹の反応がイマイチだったので、少し工夫をしてみる。

「なんだか食べ応えがあるのにゃ!」
「さいごはぼくがたべてあげるからね! いっぱいつくって!」

 果肉を3㎝ほど残したメロンの皮を器にして作ったゼリーは2匹にも気に入って貰えたようで一安心。見た目が豪華だから、露店とかで少しお高く売ってもいいかもしれないな♪

 そして最後に<メロンミルク>。これは半分に切ったメロンの種とワタを抜いてアウドムラのミルクを注いだだけのお手軽メニューなんだけど、

「僕はここで溺れてもいいのにゃ♪」
「そうしたらぼくがみるくをのんでたすけてあげるね。いっぱいおぼれてもいいよ~!」

 元々が濃厚で素晴らしくおいしいアウドムラのミルクを使うことで、ハクとライムのお気に入りメニューになった。






 今日買った食材は他にもいっぱいあるんだけど、今夜はメロンとサクランボのメニューを考えるだけでギブアップだ。もう、眠たくて眠たくて仕方がない。

 ハクとライムはまだまだ食べられそうだったけど、私が大きな欠伸を噛み殺しきれなかったことで❝保護者モード❞を発動してくれた。

 2匹に追い立てられるようにベッドに入りおやすみのキスを交換したら、すぐに意識は夢の中へ。

 お買い物って意外に体力を使うんだよね~。

 明日もいっぱい良い物に出会えますように!













 昨夜は遅くまで試作&試食をしていたせいか、2匹の食欲があまりない。……と思っていたら、

「僕はアリスのごはんが食べたいのにゃ!」
「ぼくもありすのつくるごはんのほうがいい!」

 宿の食事に不満があるだけで、食欲は普通にあるようだ。

「ふふっ、ありがとう! 私がずっとごはんを作っても良いんだけど、この宿は朝・夕の2食付きなんだよね。食べないともったいないし……」

 この宿は元々食事代が宿泊費に含まれている宿で、今私の泊っている部屋の場合は、この部屋に泊る主格の人+コネクティングルームに泊まれる最大数、つまり2人分の合計3人分の食事が付いているんだ。

 食べても食べなくても宿泊費は変わらないので、食べないと守銭奴さんしっかりもののハクに叱られると思っていたんだけど、

「インベントリに入れておけば腐らないんだから、いつかどこかで誰かに高く売るのにゃ~♪」

 ハクは宿の食事を食べないことで食材や宿泊費を無駄にしない方法を簡単に口にした。

 この宿のおもな客は貴族や豪商なので基本食材が肉なのはいいんだけど、どの料理も高級調味料である胡椒などをふんだんに使っていて、ハクには辛いものがあるらしい。 ……神獣って、そんなに繊細だっけ? 

 若干の疑問は残るけど、可愛い従魔たちが声を揃えて訴えるのだから無下にするわけにもいかないし……。宿で宿泊客に出している食事を転売するわけにもいかないから、ここは素直に食事をお断りする方向で調整することにする。

 手早く外出の支度をすませ、フロントで「この街の色々な食べ物を楽しみたいから、しばらく食事はいらない」ことを伝えると、普通に「かしこまりました」と返してもらえて安心した。 それでもなんだか申し訳ない気分でそそくさと逃げるように庭に出ようとすると、

「アリスさまにお客さまがいらっしゃっています。お会いになりますか?」 

 と呼び止められた。

 お客さま? ディアーナはお昼前に迎えに来てくれる予定だし、まだ朝ごはんを食べている人もいる時間の来客に心当たりがなくて困惑していると、

「アリス! こっちだ!」

 フロントに背を向ける形でソファに座っていた男の人が立ち上がり、振り返りながら私の名を呼んだ。

 この少しだけ懐かしさを感じる声は、

「イザック!」

 スフェーンの森付近で別れた頃よりも少しやつれた感じのするイザックだった。

「無事に街に着いたようでよかった。 ……こんな時間に悪かったな。少し時間をもらえないか?」

 イザックが困ったような顔で笑うので、二つ返事で了承して自分の泊っている部屋に招待することにする。

 どうしてこの宿に泊まっていることが分かったのかは不思議だけど、こんな時間から宿を訪ねてくるなんて、何かよほどの事情があるに違いない。

 話が長引くことも想定してディアーナに約束の時間をずらしてもらおうと思ったんだけど……、私はディアーナの住んでいる所も連絡先も知らないぞ……。

 困った顔で立ち止まった私を見て、ベルパーソンさんの1人が声を掛けてくれる。

「何かお手伝いできることはありますか?」と言ってくれたベルパーソンさんに事情を話し、ディアーナに連絡を取る何かいい方法はないかと尋ねたら「だったら子供たちに頼んでみては?」と、とてもあっさりと返事が返って来た。

「子供たち?」

 何のことかわからずに辺りを見回してみても、子供の姿はどこにもない。 話を聞いていたイザックが「裏口だよな?」とベルパーソンさんに確認すると同時に歩き出し、裏口のドアを開けてさっさと表に出てしまう。 私も続いてドアを開くと、イザックと少女が1人、とその後ろの方に何人かの子供たちが思い思いに立っていた。

 少女が<冒険者カード>を見せてくれながら「ディアーナさんへの伝言ですね? その依頼、あたしにしてください」と言うのでディアーナの家を知っているのかと聞くと、少女はあっさりと首を横に振る。

 困ったぞ、と思っていたら、少女は「冒険者ギルドへ行って事情を話せば家を教えてくれます。きっと伝言を伝えますから!」と続けて言って頭を下げた。

 個人情報の扱いはそれでいいのか?と思いながらも、イザックが頷くのを見て、少女にディアーナへの伝言をお願いすることにする。私が、

「❝今日の約束の時間をずらして欲しい。 何時になるかのメドが付いたら改めて連絡をするから❞って伝えてね」

 と言うと、イザックがポケットからお金を出して少女に渡してしまう。いくらかは見えなかったけど、少女のとても嬉しそうな表情かおから判断すると、それなりの金額なのかな?

 イザックにお金を返す為に少女にいくら渡したのかと聞くと、イザックは、

「俺のせいでアリスと先方の約束の時間をずらさせるんだ。 それを伝える為の依頼料を俺が払うのは当然だろう?」

 と言って取り合ってくれないので、ここは素直に奢ってもらうことにした。

 とりあえずは朝ごはん、でいいのかな?
しおりを挟む
感想 1,118

あなたにおすすめの小説

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

処理中です...