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街歩き1日目&2日目
しおりを挟む「おいしいにゃ! 生ハムは何にでも合うのにゃ!」
一口大にカットして果肉に生ハムを巻いただけの<生ハムメロン>はお肉大好き!なハクのお気に召したらしく、
「これはすっごく!米に合うのにゃ~!」
皮に近いかたい果肉を使った<メロンの浅漬け>も大好評なので、無駄なくおいしくメロンを使い切れて言うことなしだ! これはスイカで作ってもおいしいんだよね~。スイカが手に入ったら作ってみよう♪
サクランボのジャムは甘酸っぱい爽やかなおいしさで、パンに塗って良し、ヨーグルトやアイスに掛けても良い、なかなか使い勝手の良いものになった。
「とってもきれいでおいしいね。 でも、ありすのおみずでつくるほうがぼくはすき~!」
赤ワインにりんごと桃と木苺を加えた<サングリア>と、白ワインにオレンジとりんごと桃とサクランボを加えた<サングリア・ブランカ>は一応及第点を貰えたけど、ライムにはお水と果物と野菜で作る<フレーバー・ウォーター>の方がおいしいらしい。 サングリアは少し大人向けの味だから仕方がないかな~?
「これもおいしいにゃ」
「おいしいね」
果肉た~っぷりのメロンゼリーとメロンのシャーベットは安定のおいしさなんだけど、なんだか2匹の反応がイマイチだったので、少し工夫をしてみる。
「なんだか食べ応えがあるのにゃ!」
「さいごはぼくがたべてあげるからね! いっぱいつくって!」
果肉を3㎝ほど残したメロンの皮を器にして作ったゼリーは2匹にも気に入って貰えたようで一安心。見た目が豪華だから、露店とかで少しお高く売ってもいいかもしれないな♪
そして最後に<メロンミルク>。これは半分に切ったメロンの種とワタを抜いてアウドムラのミルクを注いだだけのお手軽メニューなんだけど、
「僕はここで溺れてもいいのにゃ♪」
「そうしたらぼくがみるくをのんでたすけてあげるね。いっぱいおぼれてもいいよ~!」
元々が濃厚で素晴らしくおいしいアウドムラのミルクを使うことで、ハクとライムのお気に入りメニューになった。
今日買った食材は他にもいっぱいあるんだけど、今夜はメロンとサクランボのメニューを考えるだけでギブアップだ。もう、眠たくて眠たくて仕方がない。
ハクとライムはまだまだ食べられそうだったけど、私が大きな欠伸を噛み殺しきれなかったことで❝保護者モード❞を発動してくれた。
2匹に追い立てられるようにベッドに入りおやすみのキスを交換したら、すぐに意識は夢の中へ。
お買い物って意外に体力を使うんだよね~。
明日もいっぱい良い物に出会えますように!
昨夜は遅くまで試作&試食をしていたせいか、2匹の食欲があまりない。……と思っていたら、
「僕はアリスのごはんが食べたいのにゃ!」
「ぼくもありすのつくるごはんのほうがいい!」
宿の食事に不満があるだけで、食欲は普通にあるようだ。
「ふふっ、ありがとう! 私がずっとごはんを作っても良いんだけど、この宿は朝・夕の2食付きなんだよね。食べないともったいないし……」
この宿は元々食事代が宿泊費に含まれている宿で、今私の泊っている部屋の場合は、この部屋に泊る主格の人+コネクティングルームに泊まれる最大数、つまり2人分の合計3人分の食事が付いているんだ。
食べても食べなくても宿泊費は変わらないので、食べないと守銭奴さんに叱られると思っていたんだけど、
「インベントリに入れておけば腐らないんだから、いつかどこかで誰かに高く売るのにゃ~♪」
ハクは宿の食事を食べないことで食材や宿泊費を無駄にしない方法を簡単に口にした。
この宿の主な客は貴族や豪商なので基本食材が肉なのはいいんだけど、どの料理も高級調味料である胡椒などをふんだんに使っていて、ハクには辛いものがあるらしい。 ……神獣って、そんなに繊細だっけ?
若干の疑問は残るけど、可愛い従魔たちが声を揃えて訴えるのだから無下にするわけにもいかないし……。宿で宿泊客に出している食事を転売するわけにもいかないから、ここは素直に食事をお断りする方向で調整することにする。
手早く外出の支度をすませ、フロントで「この街の色々な食べ物を楽しみたいから、しばらく食事はいらない」ことを伝えると、普通に「かしこまりました」と返してもらえて安心した。 それでもなんだか申し訳ない気分でそそくさと逃げるように庭に出ようとすると、
「アリスさまにお客さまがいらっしゃっています。お会いになりますか?」
と呼び止められた。
お客さま? ディアーナはお昼前に迎えに来てくれる予定だし、まだ朝ごはんを食べている人もいる時間の来客に心当たりがなくて困惑していると、
「アリス! こっちだ!」
フロントに背を向ける形でソファに座っていた男の人が立ち上がり、振り返りながら私の名を呼んだ。
この少しだけ懐かしさを感じる声は、
「イザック!」
スフェーンの森付近で別れた頃よりも少しやつれた感じのするイザックだった。
「無事に街に着いたようでよかった。 ……こんな時間に悪かったな。少し時間をもらえないか?」
イザックが困ったような顔で笑うので、二つ返事で了承して自分の泊っている部屋に招待することにする。
どうしてこの宿に泊まっていることが分かったのかは不思議だけど、こんな時間から宿を訪ねてくるなんて、何かよほどの事情があるに違いない。
話が長引くことも想定してディアーナに約束の時間をずらしてもらおうと思ったんだけど……、私はディアーナの住んでいる所も連絡先も知らないぞ……。
困った顔で立ち止まった私を見て、ベルパーソンさんの1人が声を掛けてくれる。
「何かお手伝いできることはありますか?」と言ってくれたベルパーソンさんに事情を話し、ディアーナに連絡を取る何かいい方法はないかと尋ねたら「だったら子供たちに頼んでみては?」と、とてもあっさりと返事が返って来た。
「子供たち?」
何のことかわからずに辺りを見回してみても、子供の姿はどこにもない。 話を聞いていたイザックが「裏口だよな?」とベルパーソンさんに確認すると同時に歩き出し、裏口のドアを開けてさっさと表に出てしまう。 私も続いてドアを開くと、イザックと少女が1人、とその後ろの方に何人かの子供たちが思い思いに立っていた。
少女が<冒険者カード>を見せてくれながら「ディアーナさんへの伝言ですね? その依頼、あたしにしてください」と言うのでディアーナの家を知っているのかと聞くと、少女はあっさりと首を横に振る。
困ったぞ、と思っていたら、少女は「冒険者ギルドへ行って事情を話せば家を教えてくれます。きっと伝言を伝えますから!」と続けて言って頭を下げた。
個人情報の扱いはそれでいいのか?と思いながらも、イザックが頷くのを見て、少女にディアーナへの伝言をお願いすることにする。私が、
「❝今日の約束の時間をずらして欲しい。 何時になるかのメドが付いたら改めて連絡をするから❞って伝えてね」
と言うと、イザックがポケットからお金を出して少女に渡してしまう。いくらかは見えなかったけど、少女のとても嬉しそうな表情から判断すると、それなりの金額なのかな?
イザックにお金を返す為に少女にいくら渡したのかと聞くと、イザックは、
「俺のせいでアリスと先方の約束の時間をずらさせるんだ。 それを伝える為の依頼料を俺が払うのは当然だろう?」
と言って取り合ってくれないので、ここは素直に奢ってもらうことにした。
とりあえずは朝ごはん、でいいのかな?
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