女神の代わりに異世界漫遊  ~ほのぼの・まったり。時々、ざまぁ?~

大福にゃここ

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街歩き2日目 2

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「朝飯は食って来た」と言って朝ごはんを辞退しようとしたイザックだけど、代わりに出したお茶とお茶請けの香りに反応したお腹が❝ぎゅるるるるるる❞と空腹を訴えたので、イザックが嘘を言ったことがわかってしまう。

 ごはんを遠慮するなんてイザックらしくないなぁ。よほどに厄介な相談事でも持ち込んできたのかな? 

 でも、イザックの相談なら大抵のことを了承するつもりの私には、イザックが空腹のままで暗い顔をしている方が気になる。だから、

「話はきちんとごはんを食べた後! 朝ごはんは一日の基本だよ? イザックがとごはんを食べ終わるまでは、話を聞かないからね」

 少し押しつけがましいけど、さっさと朝ごはんを用意してイザックを席に着かせる。 何にもないコネクティングルームに敷物と天板を置き、両脇にハクとライムを座らせて接待役に任命した。 

 2匹の報酬は2度目の朝ごはん。 2匹のブラックホールの様なお腹なら、2度目の朝ごはんでも軽~く消化できちゃうからね。 

 芋粥・椎茸出汁のだし巻き卵・ハーピー骨から出汁を取ったお野菜たっぷり卵スープ・桃ジャムを掛けたヨーグルトといった、イザックの顔色があまり良くないことを考慮して胃に優しいシリーズ=イザックには少し物足りないシリーズにしてみたんだけど、イザックは「ああ、美味そうだな」と目じりを下げるだけだった。

 ……見た目がとっても淡白なこのメニューにイザックが何の不満も持たないなんて、最近まともな食生活を送っていなかったと判断する。 一体何があったのかな……? 気にはなるけど、まずはイザックに食事をしてもらうことが優先だ。

「ちょっと味を改良してみたんだ。味わって食べてね?」

 食事をしない私が席についているとイザックもゆっくりとできないだろうから、私は少しだけ離れて調理を始める。

 昨日手に入れた野菜を様々な形にカットして、使いたい時にすぐに使えるようにしておけるのはインベントリ様様だね。リズミカルに野菜を刻みながらイザックの様子をうかがっていると、両脇で旺盛な食欲を見せるハクとライムせったいやくに釣られたのか、イザックがやっとスプーンを口に運んで「美味い……」と呟いた。

 その呟きを聞いたハクとライムの食事のペースがぐっと遅くなったのには、ちょっと感動を覚えたよ。 うちの仔たち、❝接待役❞の使命をきちんとこなしてる! 

 ゆったり、のんびりとした雰囲気を作りながらイザックを気遣うように食事を進める2匹に気が付いたイザックが、「ありがとうな!」とお礼を言いながら前向きに食事を始めたので私も一安心だ。 

 2匹には後でオークカツとフローズンヨーグルトを貢いでおこう♪











「へぇ。あの子たちはほとんどがGランクの冒険者なんだ?」

「ああ。そうではない子供もいるが、冒険者の登録をしている子供の方が仕事にありつける確率は高い」

 食事中の話題は主に、宿の裏口にいた子供たちのこと。 イザックの用件は食事がすんでからしか聞かないと言っているからね。

 あの子供たちは大きな宿やお店などの裏口に待機していて、店やお客から何か用事を言いつかることでお金を稼いでいるらしい。

 冒険者と言ってもGランクみせいねんしゃでは討伐依頼はあまり受けられないし、採取依頼も手に余るものが多いから街の中で手伝いのような仕事を受けることが多く、使い走りや雑用がほとんどだから端金にしかならないけど、その分危険が少なく安全に稼げるので、彼らが直接依頼を受けることを<冒険者ギルド>も黙認している。

 本来は依頼主と冒険者の間での金銭トラブル(依頼料未払いなど)を防ぐためにギルドを介した依頼でないとよろしくないんだけど、子供たち相手のこういった仕事は前払いが基本だし、Gランクかりとうろくの内に顔を売っておくとFランク昇格ほんとうろくの際にご祝儀代わりの依頼が入ったりするから子供たちも真剣に仕事をするので、トラブルは少ないようだ。

下積みGランクが長いと最低限の口の利き方や礼儀を覚える奴らが多いから、Fランクに上がった時に有利だしな。
 今回の依頼はアリスぼうけんしゃからディアーナギルドしょくいんへの依頼だから、ギルドへのアピールにもなるって大喜びしていたぞ」

 そう言いながら微笑ましそうに笑うイザックの言葉に、私はちょっとだけ引っかかりを覚えた。

 あの少女のことを思い出すと……、彼女は依頼主わたしに丁寧な口調で話していなかったかな?

「ねえ、イザック? 私はジャスパーの冒険者組みんなから、丁寧な口調はやめろって言われていたよね?」

 確か、依頼主に舐められるからとかなんとか言っていたような気がするんだけど……。どういうことかと説明を求めると、

「ん? 個性と実力で状況は変わるだろ?」

 イザックは❝何を当たり前のことを?❞という顔で軽~く答えた。

 依頼主には当然感情がある。実力もないのに尊大な口を利く子供を相手に依頼をしてやろうという奇特な人は少ないこと。 これは自分が依頼主だと想像して考えたら、当然のことだと思う。

 実力があるのに謙虚な冒険者を相手にすると、少しでも自分に有利なように話を進めたいと思う依頼主は決して少なくないこと。 これもまあ、理解はできる。

 でも、それがどうして私が口調を崩すことにつながるのかは納得しがたい。

 ジャスパーのみんなだけでなく、マルゴさんにもオスカーさんにも忠告されたことだから気を付けてはいるけどね?

 唇を尖らせて不満を表現する私を見て、ハクとライム、そしてイザックは顔を合わせて……、大きなため息を吐いた。

 イザックがちょっと呆れたように「個性と実力だ」と呟いて、ハクとライムと共にもう一度大きなため息を吐く。

 ……ちょっと、あなたたち! その態度は失礼だからね!?

 今度は頬を膨らませて不満を表現してみる。 が、効果はなかったようだ。

 ……ちょっと、3人とも。そろそろ笑うのを止めないと、今日のおやつ、抜いちゃうぞ!
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