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街歩き4日目 1
しおりを挟む従魔たちとのスキンシップを兼ねてゆっくりと朝風呂を楽しみながら今日の予定を立てていると、浴室に響く低い音が2つ。ハクとライムのお腹が空腹を訴えていた。
「あはは^^ お腹が空いたね~。 上がってごはんにしようか!」
可愛い従魔たちを腹っぺらしにはしておけない。お風呂から上がろうと2匹を抱き上げようとすると、お湯の中で器用に逃げられてしまう。
「ごはんは後でいいからもう少しゆっくりするのにゃ! 温かいお湯は最高なのにゃ!」
ということらしいんだけど……。お腹の音は鳴りやまない。
確かに朝風呂は気持ちがいいけど、お腹が空いているのを我慢してまで楽しむものじゃないよね? 2匹が食欲よりもお風呂を優先することが意外でびっくりしていると、逃げていた2匹がスススッと近づいて来て、
「アリスは忙しすぎなのにゃ。たまにはゆっくりと寛ぐのにゃ」
「もっとありすといっしょにあそびたいんだ~。だからごはんはあとでもいいの」
可愛い顔で可愛いことを言ってくれる。
どうやら、私が思っている以上にスキンシップが足りていなかったようだ。 可愛い従魔たちに寂しい思いをさせていたことを反省して、このままお風呂タイムを延長することにした。 もちろん、ちゃんと水分補給してからね!
ハクを丁寧にブラッシングしたりライムを優しくマッサージしたりと穏やかな朝の時間を過ごしていると、ハクやライムの言う通り、最近は少し忙しない毎日だったことを実感する。
「今日はゆっくりと部屋で過ごそうか? ディアーナも毎日私たちに付き合ってくれて、疲れてるだろうしね?」
「悪くないにゃ!」
「さんせ~い!」
たまには何もしない日があってもいいだろうと提案してみると、2匹も嬉しそうに賛成してくれたので、今日は❝1日まったり過ごす日❞に決定だ。
ディアーナに連絡するために宿の裏口へ行くと、昨日依頼を受けてくれたGランクの少女が駆け寄って来た。彼女ならディアーナの家を知っているから丁度いい。
手紙を預け、依頼料300メレ(相場がわからないから少女に聞いた)と数枚のクッキーを渡すと本当に嬉しそうにお礼を言ってくれるので、依頼を増やすことにした。
「ディアーナからのお返事を持って戻って来てくれる? その時に追加で同じ料金を払うから」
「………おねえさん、そういうときは割り増しにするのが相場です。えっと…、半分くらい」
行きと同じ距離を戻ってくるのだから同じ金額でいいだろうと思って提示した金額だったけど、少女が言い難そうにしながら教えてくれた。
「わかった。返事を持って戻ってきたら450メレ支払うわね」
まさか割増料金になるとは思っていなかったんだけど、ただでさえ片道300メレという超低料金なのだからそんなものかと納得する。と、少女が慌てたように訂正した。
「違います! 初めの料金を割り増しして1件の依頼にするのです。……本当は、半分も増やして貰えないの。…ごめんなさい」
後半部分を小さく呟くように言った少女は、今にも泣き出しそうな顔をしながら話をつづける。
えっと…、Gランクの子供たちを相手に今回のように復路を追加するときは片道分を割り増しした料金でよくって、人によっては初めから往復で1件の扱い、今回のケースなら300メレで依頼をすることもある。割り増し金額もせいぜい1割から2割程度のようで、少女が言ったように半分もくれることは少ない、と。
……今回は私が相場を知らずに倍額を支払うと言ったことで、少女もほんの少しだけ欲を出してしまったらしいけど、私が勘違いをして彼女の思っていた金額以上を払うと言ったので、良心の呵責に耐えかねて本当のことを申告した、ということだ。
始めに少女が料金を訂正した時に言い難そうだと思ったのは、言いたくなさそうの間違いだったんだね。黙っていれば普段の倍の依頼料が手に入るのだから、言いたくないのは当たり前だ。 彼女を欲張らせてしまったのは私が相場を知らなかったから。つまりは私の責任。
彼女がそんなに泣きそうな顔をする必要はない。だから、
「そっか、わかった。 じゃあ、今回は往復の依頼にして300メレで受けてくれる? それとは別に、今の話の情報料として、戻ってきたら300メレを支払うね」
始めに私が提示した料金を支払うことにした。彼女が黙っていれば受け取れるはずだった料金。
「!? ……ありがとうございますっ! 絶対に、ちゃんとお返事をもらってきます!」
驚いたように顔を上げた彼女に微笑みかけると、本当に嬉しそうに破顔して元気いっぱいに走り出した。
「お返事は急がないからねーっ! 帰りはゆっくりと歩いて戻っておいで~っ!」
「は~い!」
返事をするためにわざわざ立ち止まって振り返った少女は、大きく手を振ってまた走りだす。
1件300メレではパンを2~3個買うのがやっとのはずだ。それでも嬉しそうに走っていく少女とそれを羨ましそうに見送る他の子どもたちを見て、ついつい忘れがちな、この世界の貧富の差を改めて実感した。
ビジューのくれた能力とハク達のフォローのお陰で、この先、私たちが食べる物に困ることはきっとない。感謝の気持ちを忘れないようにしないとね!
スレイとニールに朝の挨拶をしに行って、ついでにごはんの準備をしておく。私たちが部屋に戻ったら、ハクの心話を通して一緒に❝いただきます❞ができるように。 そのことを理解している2頭が嬉しそうに私たちを見送ってくれているので急ぎ足で部屋に戻ると、扉の前に少しだけ困り顔の総支配人さんが立っていた。
何かお話があるようだけど、私たちはスレイとニールを待たせているので立ち話に付き合う訳にもいかないし、とりあえずは部屋の中へ招くことにする。
事情を話し、すでに朝食を済ませていた総支配人さんにはお茶とお菓子をお出ししてから、私たちは朝ごはん。
今日はゆっくりとお風呂で体力を使ったし、もう、お腹がぺこぺこだ!
同じく腹ぺこさんなハクとライムの為にもたくさんのごはんを用意すると、それを見ていた総支配人さんがまた困ったように笑うのに気が付いた。
……どうしたのかなぁ?
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