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断罪 3

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「ゴブリンとの戦いで死亡したと報告されていたフランカは、つい最近までゴブリンの巣穴コロニーで生きていたことが分かった。 私がフランカの遺体を直接確認したから確かなことよ」

 メラーニアが大きな声でギャラリーに向かって言うと、

「フランカが死んだと思い込んだのは俺たちのミスだと認める! フランカには本当にすまないことをしてしまった……。 だが、俺たちもゴブリンから必死に逃げてきたんだ。どうしようもなかったんだ!」

 男は自分たちにはどうしようもなかったと主張し、

「フランカが私たちを逃がしてくれたんだから、あんたに何かを言われる筋合いじゃないわよ! そんなことよりも、フランカが最近まで生きていたなら、どうしてここに連れて戻ってこなかったのよ! やっぱりフランカの遺品目当てにそのアリスって女が殺したんでしょ!?」

 女はフランカを盾に自分を守り、私に罪を着せようとした。

 男女の言い分を聞いたメラーニアはとても不愉快そうに冷たい目で彼らを見て、

「アリスは自分の品格を貶めてまでお金を求めるほどお金に不自由はしていないわよ。卑しいあんた達と一緒にするな!」

 鋭く一喝した後、またギャラリーに向き直った。

「残念なことにフランカは死亡していたけど、ちゃんとお墓に埋葬されていた。 ギルマスとサブマス、私とBランクのエルダ、職員のイルマが確認したことだから間違いない。エルダはパーティーの連中との依頼遂行中で今日は街にいないけど、いたらきっと、そいつらがアリスに罪を擦り付けようとするのを止めようとするはずだ」

「あ! それって、多分、コレのことだ!! あたい、エルダから報告書ってのを預かってるよ! アリスとフランカの名前で何かが起こった時に、みんなに自分の見解として見せて欲しいって言ってた! もしも何も起きなかったら、捨てていいって言ってたけど」

 メラーニアが状況の説明を始めると1人の女性冒険者が立ち上がり、❝エルダの報告書❞をギャラリーたちに見せつけるように掲げて見せた。それを見たサブマスがニヤリと笑い、

「ああ、さすがエルダだね。頭が回る。 それはしばらくおまえが預かっていてくれるか? 必要になったらみんなの前で読み上げてくれ」

 顔色を悪くした男と女…、とビーチェに大人しく座るように命令し、ヤツらが座ったのを見て、メラーニアが改めて状況の説明を始めた。

「とある事情でフランカの遺体は損傷していたけど、とても丁寧に清められていた。服こそ着ていなかったけど代わりにとても美しい絹の布に包まれていてね。 お墓の中は遺体が見えなくなるくらいにカープリフォリオが敷き詰められていた。これは全てアリスがフランカの為にしていたことだよ。
 その上で、フランカの遺体を焼いて空と土に還す時には大量の甘味を❝お供え❞していた。それもそのまま置くんじゃなくて、上等な紙を何枚も使って皿を作りその上に供えてくれたよ。 その上で、また大量のカープリフォリオで遺体を飾ってね。遺体と一緒に燃やすってのに惜しみなく、フランカの為に……。
 フランカの遺品の髪飾りってのがどれほどの物かは知らないけど、アリスにはフランカを殺して持ち物を奪う必要はないって私が保証するわよ!」

「私はギルドの職員として培った知識を元に、アリスさんがフランカさんにしてあげたお供えを換算すると、フランカさんの遺品と同等以上の価値があったと明言します! アリスさんがフランカさんを殺す理由はどこにもありません!」

 メラーニアに続いてイルマが発言すると、大人しく聞いていたギャラリーたちからも賛同の声が上がった。

「カープリフォリオって言ったら、高額買い取り品じゃないか」「服がなかったからって、絹を燃やしちまったのか?」「甘味って…、死んだヤツの為に大量の甘味を? もったいないとは思わなかったのか?」

 と言う声を聞いて男は黙り込んだけど、女は、

「フランカとその女は親族じゃないんでしょ!? なのに、そんなことをするなんて逆におかしいじゃない! フランカを殺して遺品を奪うことの罪滅ぼしじゃないの!?」

 と声をあげ、ビーチェが大きく頷きながら、

「そうよ! アリスが弔いにお金をかけたからって、フランカを殺していない証明にはならないわよ! 殺したからこそ、それをごまかす為にそれだけのことをしたんじゃないの? 大体、手紙があるってことがおかしいのよ! その女の捏造じゃないの!?」

 鼻で嗤って手紙の存在を否定しようとする。

 3人の態度や言い分を聞いて、スフェーンに同行したメンバーだけでなく、ギャラリーからも軽蔑のまなざしが注がれたけど、3人はそれに気づくことなく、自分たちの潔白を言い募る

 自分たちが正しい!みんなはアリスに騙されているんだ!と言い張る3人を見て、ギャラリーたちの中から、私に不審の目を向ける人が出始めた頃、

「なあ、その手紙を俺にも見せてくれないか? 俺にはフランカの筆跡がわかる」

 ギャラリーの中からトリスターノさんが進み出てきた。そして、

「この中には知っているヤツもいるだろう? 俺はフランカと同じ孤児院で育っているからな。アイツの字のクセなんかは当然知っているんだ。 ……ギルマス、その手紙を俺に読ませてくれ」

 衝撃の自己紹介をしてくれる。  

 そんなにフランカに近しい人がフランカを死に追いやった人たちを見張っていたなんて……。どれだけ辛い時間だったんだろう。

 トリスターノさんの心情を思い、なんて人選をするんだと思わずギルマスを睨みつけてしまった私に、

「アリスさん、あんた宛にも手紙があったって聞いているんだ。 その手紙も俺に……、読ませてくれないか?」

 トリスターノさんが静かに頭を下げた。
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