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断罪 6
しおりを挟む騒然とするギャラリーの中を悠然と進み出てきた裁判官は、
「この2名が<断罪の水晶>を使用すべき者たちであると判断したことに、私情を交えていないことを<審判の水晶>に誓えますか?」
挨拶も何もなく、いきなりギルマスに向かって水晶を突き出した。
「ああ。フランカの遺書を元にこの2人を精査した結果のことだ。フランカの遺書、この2人に対する報告書、そして俺の❝耳❞にかけて、こいつらを断罪する必要があると判断したことを❝誓う❞」
目の前に水晶を突き出されたギルマスも、突然の展開に面食らっている私とギャラリーを置いてきぼりに、さっさと水晶に手を置いて誓いを立ててしまうものだから訳が分からない。
呆気に取られている私たちを気にも留めず、法廷兵たちがフランカの元パーティーメンバーである2人を拘束しようとしたが、
「なんの真似だよっ!? 裁判所の外でこんなことできる訳が……。こんな冗談に付き合うほど俺たちは暇じゃねぇ!」
「そうよ! お芝居ならちゃんと劇場で役者にさせてよね! 行きましょ!!」
当然2人が大人しく拘束される訳がない。 逃げようとして身を翻した。
でも、大勢のギャラリーの中央にいる2人が逃げ出すことは当然簡単なことではなく、
「拘束しなさい」
「拘束しろ」
裁判官の命令で法廷兵が、ギルマスの指示で近くにいた上位ランク冒険者たちが即座に動き、素晴らしい連携であっという間に2人を縛り上げてしまった。
ビーチェもとっさにギャラリーの中に紛れようとしたようだけど、ディアーナが素早い動きで彼女の目の前に立ちふさがり、
「自分が担当する冒険者たちを見捨ててどこへ行くつもり? 彼らの不利益を許さない為にしゃしゃり出てきたんじゃなかったの?」
冷たい口調でビーチェを引き留めた。その間に近くに寄って来ていた冒険者がビーチェの肩を強引に抱き、座らせることでビーチェをその場に留めている。それを確認した裁判官が、
「では、男の方から始めましょう。水晶を握らせなさい」
さっさと断罪を始めようとするので、思わず声を上げてしまった。
「<断罪の水晶>の使用は裁判所で裁判官が詳しい取り調べを行ってからじゃなかったの!? どうしてこんな所でいきなり<断罪>が始まるの!? 第一、裁判官って水晶を持ってホイホイ出張してくるものなの?」
どこから突っ込んでいいのかわからなくなっている私の叫びを聞いて、裁判官は一言「特例措置です」とだけ告げるとさっさと続きを行おうしたが、
「野次馬たちはともかくアリスは当事者なんだ。裁判官どのがこれに目を通す間だけでいいから時間をくれないか? 今日の議事録とBランク冒険者であるエルダの報告書、そして、フランカがアリスヘ宛てた遺書だ。……アリス、裁判官どのに手紙を預けても良いだろう?」
サブマスが止めてくれた。
私が頷きで返すと、裁判官にイルマがまとめていた議事録とエルダの報告書、フランカの手紙を渡し、ギャラリー達を訓練場から追い出す。……出て行くのを渋っていた人もいたけど、サブマスの鋭い鞭の一振りを見て慌てて出て行ったことは見なかったことにする。
ほどなくギャラリー達はいなくなり、訓練場に残ったのはギルマスとサブマスと裁判官。被告の2人とビーチェ、高ランク冒険者の3人と私の専属担当であるディアーナと、今までどこにいたのかシルヴァーノさん、この件に深く関わっているトリスターノさんと私たち(私とハクとライム)だけになった。
一応マップで確認すると、ドア付近では法廷兵さんが立っているようだけど、
(ハク、私たちの周りに遮音結界をお願いね?)
裁判官が水晶の使用を始めようとした時もギャラリーを追い出そうとはしなかったサブマスが、説明するからとギャラリーを追い出したことで内緒話だろうと推測してハクに結界を張ってもらう。
ヤツらは縛られているしビーチェは高ランク冒険者に拘束されているから、遮音だけで十分かな?
話を聞く準備はできた!とサブマスに視線を送ると、サブマスの不思議顔が返ってくる。簡単に<遮音結界>を張ったこと伝えると一瞬だけ目を見開き、「助かるよ。一応は他言無用の話なんだ」と微笑みをくれた。
今この場にいる者は、サブマスが❝内緒話❞をしても大丈夫だと太鼓判を押したメンバー。ヤツらとビーチェの3人は例外だろうけどね。 ……どうやって❝内緒❞にさせるのかは今は聞かないでおく。
裁判官がさっさと議事録に目を通し始めたので、あまり時間がないと判断したのだろう。サブマスは、
「順を追って説明したいが、時間があまりないからな。取り合えず……、今回の特例措置の核となる部分には、こいつが持つ【スキル】が関係する」
と言いながら、ギルマスの耳を引っ張り、
「こいつの耳は❝嘘を聞き分けることができる❞んだ。なかなか便利だぞ」
微笑みながら、その場に爆弾を投げ落としてくれた。
……何それ! 頼もしいけど怖いかも!?
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