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断罪 5

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 フランカが私に宛てた手紙には、フランカがゴブリン達に捕らえられた経緯や死ななくてはならなかった理由やその思いが。

 ギルマスに宛てた手紙にはフランカがゴブリン達に捕らえられた経緯の他に、彼女がパーティーの運営資金(依頼引き受け時に用意するものの代金。ポーション代とか)とは別に❝積み立て❞と称して依頼報酬の中から毎回一定の割合で天引きされていたことと、その内訳(日付と金額)が記載された別紙が同封されていた。

 フランカのパーティーでは、パーティーの結成時にメンバーが同額を出し合って最初の依頼の為の経費に充てて、達成時にその時掛かった費用を報酬から天引き。次の依頼からは、最初に出し合ったお金の残りと前回に天引きされていた費用が次の依頼の為の必要経費として使われるといった運営をしていたそうだが、徐々に運営資金と実際に使用していた経費に差額が出始めたとのこと。

 リーダーの男に問いただしたら「いつ大きな依頼が入っても大丈夫なように、きちんと貯めている」と言っていたので、その差額分の返却を。

 ❝積み立て❞は、天引きされてはいたが、今まで❝積み立て❞からパーティーの為に使用したお金はないので引かれていた分の返却を求める旨が書かれてあった。

 当然、手紙の内容を知ったギャラリーからは、

「フランカを生贄にして自分たちだけ逃げてきたってのか!!」
「それで嘘を報告をしていたんだな! フランカとギルドへの裏切り行為だ!! 今までこんなヤツらを冒険者仲間だと思っていたなんて……。悔しくて仕方がねぇ!」
「フランカはその命で色々なものを守ったんだな……。冥福を祈ろう」
「差額があるなら返却は当然よね」
「運営資金とは別に積み立て…? そんなことあたしたちのパーティーではしていないけど、あんたのパーティーはしてる?」
「フランカの魂を救ったアリスに罪を着せようとしていたのか? 最低な奴らだ!」
「なあ、これって搾取じゃないのか!? だからフランカは細かい金額と日付を残していたんじゃ……?」

 糾弾の声や疑問の声が上がる。

 フランカの身に起こったことをギャラリー達に知られてしまったことは私の心に影を落としたけど、さすがは冒険者たち。フランカの行いの意味を十分に理解してくれて、誰も彼女を貶めるような発言はしない。

 これでヤツらも終わりだと深く息を吐いた私だったけど……。ヤツらも自分たちの今後が係っているだけに、簡単には観念しなかった。

 さっきまで青くなっていたのが嘘のように開き直り、

「フランカを生贄になんかしていない! 勝手に自分で転んでゴブリンに捕まったのよっ!」
「運営資金の今までの差額はあの時の依頼用に買い込んだポーションとパーティー用のテント代で無くなった」
「積み立ては……。フランカに貸していたお金をそこから返してもらうから、フランカへ返却分なんて残らないぞ! あいつは金遣いが荒かったからなっ」
「あたしもお金を貸していたから、フランカが残したお金と髪飾りで返してもらうわよっ!!」

 自分たちには非がないと、悪いのはフランカだと言い張る。

 サブマスが、

「じゃあ、なぜフランカはお前たちに❝生贄にされた❞と残している?」
「あの時と言うのはフランカが参加した最後の依頼だな? だったらフランカはそのことを記しているはずだろう?」
「二人ともフランカに金を貸していたのか? だったら借用書を見せてみろ」
「髪飾りについては、お前がもらう約束をしていたんじゃなかったのか? なのに借金の形だと?」

 と詰問しても、

「自分で転んでゴブリンの苗床になったなんて恥だから、話を作り替えたんでしょ! あたし達を悪者にして自分の名誉を守るなんて、最低!!」
「運営資金の件は、依頼が終わってから経費として記すつもりだったんだ! いつもそうしていたぞっ」
「借用書なんてそんなもの作ってないわよ! パーティーの仲間だからちゃんと返してくれるって信じてたんだから!」
「俺もだ! 仲間相手にいちいち借用書なんて作っていない! あいつが金遣いが荒いってことはパーティー内ではみんな知っていたんだ! 積み立て金から返してもらって何が悪い!」
「そうよ! あの髪飾りじゃあとても足りないけど、仲間だったフランカの為にそれだけで許してあげようと思っていたのよ! なのにこんな形で言いがかりをつけられるなんて、すごい迷惑だわ!」

 まるで、これが真実だ!とばかりに平気な顔で言い返す。

 ……死人に口なしとはこのことだ。 ヤツらがあまりにも堂々と言い返す姿に、ギャラリーの中からも「どっちが本当のことなの…?」といった呟きまで漏れ始めた。

 形としての証拠がない以上、このままではフランカの無念を晴らせない……。私はお腹の辺りががぐっっと引き絞られるような感覚と共に強烈な吐き気を感じて、とっさに口元を手で覆った。

 悔しいっ! 悔しいっ! 悔しいっ! ……でも、ただ悔しがっているだけでは何も変わらない! フランカの為に、こいつらからきっちりとお金を取り返してあげないと!

 込み上げる吐き気を無理やり飲み下し、私は声を絞り出した。 どちらの言っていることが真実なのかがわからないなら、わかる所で真実を問いただせばいいだけ! 使用料くらい私が払ってやる!

「だったら、審判の水晶」
「もういい! おまえら、これ以上嘘を吐くな! 聞いているだけで吐き気が込み上げてくる!!」

 困ったときの嘘発見器。<審判の水晶>の使用を提案しようとした私の声をかき消す程の大音声だいおんじょうで、それまで黙って話を聞いていたギルマスが怒鳴った。

 続いて訓練場の入り口に目をやり、

「今まで待たせてすまなかったな、裁判官! こいつら2人に<断罪の水晶>の使用を要請する!!」

 と声を掛けると、法廷兵に守られるようにして入って来る裁判官の姿……。

 え? え……? 水晶って、裁判所に行って、裁判を行った上で使用が認められるんじゃなかったの?

 しかも<断罪>の水晶って、なんで!? <審判>の水晶の間違いじゃないの!?
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