女神の代わりに異世界漫遊  ~ほのぼの・まったり。時々、ざまぁ?~

大福にゃここ

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似たもの同士?

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 冒険者ギルドのドアを開けようとすると、

「「アリスさん!」」

 よく知った声に呼びかけられた。

 振り返ると、ルシアンさんとマッシモがとても機嫌の良さそうな笑顔で大きく手を振っている。……所々に小さな傷を負い服を土で汚しているんだけど、それでもくすみのないピカピカの笑顔を浮かべながらこちらに歩いてくる。

 よっぽどいい成果が手に入ったらしい。

 彼らは立ち止まっていた私に追いつくとドアを開け、私を通してくれてから嬉しそうにディアーナが座るカウンターへ歩いていく。

「ディアーナに礼を言いにきたんだ。いいヤツを紹介してもらった!」

 マッシモが楽しそうに言えば、

「俺の方こそだ。マッシモの教えは為になる」

 ルシアンさんも嬉しそうにマッシモを褒める。

 どんな大物を狩ってこんなに仲良くなったのかと聞いてみると、

「時間的にあまり遠くには行けなかったからな。 狩れたのはスライムだけなんだ」

 狩りの成果はあまり良くなかったと聞いて、不思議に思った。

 ルシアンさんの弓の腕を知っているので、彼らがスライムを相手に服を汚し怪我を負うとはとても思えない。 それになにより、成果がなかったにしては2人が上機嫌過ぎるよね?

 だから、狩りの他には何をしていたのかと聞いてみると、 

「ん。力比べ」

 と訳の分からない一言が返ってきた。

 2人で力比べ? どっちが多くスライムを狩れるかの競争でもしたのか? 

 気になった私は、専属職員に対する特権を行使せずに列に並んで2人の話を詳しく聞くことにした。…のだけど、

「スライムが相手じゃ、盾役の俺と弓を使うルシアンの実力はわかりにくいだろ? いや、もちろん、ルシアンの弓の腕は見事だったんだけどな?」
「スライム相手にマッシモの盾役としての実力は計りがたいよな。 だから、ちょっと」

「「喧嘩?ってヤツをしてみたんだ」」

 まさか、2人が❝喧嘩(?)❞をしていたとは想像もできなかったよ。

 2人の武器の性質が違い過ぎることもあり、武器は使わないいわゆる素手喧嘩ステゴロだったそうだけど。

「それでさ。マッシモが俺を力いっぱい殴ったことが嬉しくてな」

「俺もだ。ルシアンに蹴り飛ばされた時には、嬉しくて笑っちまったよ」

 ……楽しそうに話を続ける2人に、いわゆる❝禁断の扉❞を開けてしまった疑惑が生じたんだけど、

「「一度失くした手足が自分の思い通りに動くってのは、本当にありがたいことだよな!」」

 続く二人の言葉に私も思わず笑ってしまった。この2人は、殴られ、蹴り飛ばされたことで相手の回復具合を計っていたらしい。

 並びながらそれとなく2人の話を聞いていたらしい冒険者たちも、

「そうか! よかったな!」

 などと言いながら2人の肩を叩いたり笑いかけたりしているし、私も笑顔で「よかったね!」とは言ったものの……。

 喧嘩もどきで相手の回復を確認する、2人の思考が良くわからなかった。 

 2人に笑顔で声を掛けている冒険者たちには理解できているようだけどね? 

 でも、まあ、大きな怪我もないようだし、2人が満足そうにしてるから、よかった!ってことにしておこう^^




 ルシアンさん達とのおしゃべりに区切りがついたタイミングでディアーナが私を手招いて、それに気がついた冒険者たちがあっさりと順番を譲ってくれる。

 これは冒険者たちが、<担当職員制度>の利用者は優遇される代わりに受け取る報酬などから一定の手数料を支払っていることを理解しているからだ。

 でも、今回の私は<依頼人>の立場でここにいる。ギルドと担当職員に支払う手数料がない状態で特別扱いを受けるのはなんだか居心地が悪い……。

 ので、インベントリ内で死蔵されていた<ハウンドドッグ>や<ホーンラビット>、<コボルト>などの、低ランクの魔物の討伐証明部位や私には不要だと思われる部位をまとめて納品することにした。

 どれも高額品ではないけれど、それでも数はあるからね。少しは足しになるだろう。これらはすでに私とマルゴさんが解体しているから、受付で出してもそれほど邪魔にはならないし。

 と、気を回した私に、

(気が小さいのにゃ~)

 ハクが面白そうに心話を送って来たことはスルーしておく。インベントリの整理になって、手持ちのお金も増えるんだからいいでしょ? これで私も気兼ねなく<依頼人>としてのお話ができるんだし。

 私が依頼を出したいというとディアーナは別室を用意するかと聞いてくれたけど、ギルドが混みあう今の時間にわざわざ別室へ移動するほどのことでもない。誰に聞かれても問題はないからね。

 だからその場で依頼の内容、孤児院の護衛として院に泊り込んでくれる人材を探していると伝えると、

「その依頼俺が受ける!」
「そうか。じゃあ、俺も受けよう」

 話を聞いていた冒険者たちの中から立候補者が出てきた。ルシアンさんとマッシモだ。

 依頼料の取り決めも、期間の取り決めもまだなのに! 

 嬉しいけれども、ちょっとうかつな2人に対して呆れ交じりの視線を送ると、

「俺は今夜からの宿をまだ決めていなかったから丁度いいや。依頼料はアリスさんとディアーナが決めた金額で文句は言わないから、今夜はアリスさんの飯を腹いっぱい食わせてくれるってことでどうだ?」
「お、それは良いな! だったら俺も、依頼料と期間は取り決めに従うから、今夜の飯の足しになるものを❝家族分❞ってことでどうだ?」

 2人は何の問題もない!とばかりに楽しそうに話を進め、それを聞いたハクとライムわたしのほごしゃたちが、

(だったら依頼料は相場の半額にゃ! アリスのごはんを付けるなら、今夜の分の依頼料はただなのにゃ~!)
(アリスのごはんはたかいんだぞー!)

 とても楽しそうに話に乗った。

 2匹の楽し気な雰囲気で何かを察したのか、ルシアンさんが、

「ハクとライムは俺たちで良いって言ってるんだよな? ディアーナ! 早く依頼をまとめてくれよ」

 私の返事を待たずにさっさと話を進めようとするので、少しだけ意地悪を言ってみる。

「ハクとライムは、2人が依頼を受けるなら依頼料は相場の半額だって言ってるけど?」

 これで少しは落ち着いて話ができるだろうと思ったんだけど、

「飯は? 今夜は腹いっぱい食わしてくれるのか?」
「わかった。俺はそれでいい」

 2人は拍子抜けするほどあっさりと承諾してしまった。

 さすがにコレはまずいと思い、ルシアンさんには「オスカーさんに何を教わって来たのか」と、マッシモには「先輩冒険者として後輩が依頼人に食い物にされるのを止めないと! あなたまで乗ってどうするの!」と意見してみても、2人は何も気にすることなくディアーナに依頼票の作成を急かし、親切な周りの冒険者たちが2人を止めようとしても、

「俺たちにタダ働きをさせようとしないアリスさんは、優しい依頼人だよ。 俺たちの手足の代金には全然足りないのにな。
 ❝自分に仇なすヤツには容赦しないが、恩にはきっちりと報いる❞のが冒険者おれたちの流儀だろ?」

 自分たちの怪我を治した代金だと言って無理矢理納得させてしまった。

 2人の治療の代金はとっくに清算済み。オスカーさんやイザックからちゃんと受け取っていることを知っているはずなのに、2人はそれでは足りないと思っているようだ。

 これ以上ここで話を続けたら、2人が<お金に甘い冒険者>だと思われかねない。それは❝避けるべきこと❞だとみんなから重々教わってきたことなので、私は2人の好意を受け入れることにした。

 依頼料はそれぞれのランクの相場と今夜だけごはん付き。期間はとりあえず3日間だけど延長の可能性あり。でディアーナにお願いすると、ディアーナは何か言いたげな表情かおをしながらも、手早く依頼票を作成してくれた。

 依頼の相場なんて私にはわからないのでディアーナを全面的に信頼する。提示された依頼料(延長時の為のデポジット込み)を支払い、詳しい話をするために3人(と2匹)で酒場に移動した。











「【クリーン】【キュア】【ヒール】!」

 テーブルについて一番にすること。それは注文の前に2人の身なりを整えることだった。飲食の場で同席者が埃っぽいのは私が許せなかったんだ。

 だから2人が「いくらだ?」と当たり前のように聞くのには、苦笑しか返せない。

 勝手に治療やクリーニングをしておきながら、代金を請求なんてできないよね? 

 だから「食事を楽しむ場所では清潔に。私がそう思って勝手にしたことだから当然無料」だと告げる。

 その途端、隣の席の冒険者たちが立ち上がり自分の肩や腕ををぽんぽんと叩き出した。……埃が立つからやめた方が良いと思うんだけどな? ほら、周りの席の人たちが迷惑そうに見ているよ?

 私たちの席だけは、ハクが防塵結界を張ってくれたから問題ないけどね!

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