女神の代わりに異世界漫遊  ~ほのぼの・まったり。時々、ざまぁ?~

大福にゃここ

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トラブルはお約束? 4

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 おいしい水と料理で、街で一番人気の<キャロ・ディ・ルーナ>。

 今はそればかりが話題になっているようだけど、この宿の魅力はもう1つ別にある。それは❝格❞の高さだ。

 宿自体も大きくて趣のある素敵な建物だけど、良く教育された従業員さんたちの質の高さは、以前会った2番手3番手の宿の従業員たちとは比べ物にならない。

 宿側も❝格❞を守る為に日々努力を重ねているが、それだけでは格は守れない。宿を利用する❝客の質❞も重要な要素になるからだ。

 だから<キャロ・ディ・ルーナ>ではお客さんが他のお客さんに迷惑をかけることを許さないし、そのことを知っている客側も宿を尊重し、<キャロ・ディ・ルーナ>という街で1番の宿を利用できる自分のステータスの高さを誇るわけだ。

 もしもそんな宿から追い出されたとしたら?

 少なくても、宿の利用者からは冷たい目を向けられる。この宿にふさわしくない客=ここに泊まる自分が付き合うにふさわしくない人として捉えるからだ。

 つまり、あの商人さんは<キャロ・ディ・ルーナ>を追い出されることで、それなりにあった❝信用❞を落としてしまうことになる。……そりゃあ、必死に抵抗するよねぇ。原因(私が悪いとは欠片も思わないけど!)となった私を憎々し気に睨む気持ちもわからなくはない。

 でも、全ては常連の自分の方がぽっと出の小娘わたしよりも偉い、と勝手なことを考えて行動した自分が悪いんだって気がついて欲しいな。

 門扉の向こうで騒いでいる商人を見ながらそんな風に思う私はまだ、ハクとライムを貶されたことを根に持っているらしい。案外執念深かった自分に気がついてびっくりだ。









「アリス? こんな所にしわを作ったら、ビジューさまががっかりするのにゃ!」
「ん~……」

「アリス~。そんなにおゆをバシャバシャしたらめにはいっちゃうよ?」
「ん~……」

 ライムに片頬を乗せたまま、お湯を手で叩いてイライラを治めようとしている私に、呆れたような声を出しながらも眉間に寄ったしわをぺろぺろと舐めながらほぐそうとしてくれているハク。

 私の手によって起されるさざ波の被害を受けているはずなのに、私の心配だけをしてくれているライム。

 2匹の優しさを受けて、燻り続けていた怒りも大分治まった。

 総支配人さんや従業員さんたちがハクとライムを信用して庇ってくれたことも嬉しかったし。

 何よりも、言いがかりをつけられて不愉快な思いをしたはずの2匹に気遣われては、これ以上私が不機嫌な顔を見せる訳にもいかないしね。

 腕を伸ばして2匹をそれぞれに優しくなでなですると嬉しそうな鳴き声を上げながらすりすりしてくれるのが嬉しくて、その可愛い声に癒されながら、私は気が済むまで2匹をもふり続けた。













「……るのにゃ! ……起きるのにゃ!」

 ゆらゆらと揺れる温かいお湯の中でゆったりとライムに支えられていた私は、私のおでこを肉きゅうでぺちぺちと叩くハクの嬉しそうな声で起こされた。 ……いつの間に眠ってしまっていたのかな?

 いつもならここでハクのお叱りやライムのフォローを受けているハズなんだけど、今回は勝手が違うようで、

「早く、早く! 早く起きるのにゃ! もうすぐ部屋まで着くのにゃよ!」
「はやくおきないと、アリスがたいへんだよ?」

 なんだかワクワクとした雰囲気を纏いながら、ハクとライムがただただ私を優しく起こす。いつもなら頬に噛みつくぐらい平気でしてくるのに、今日は機嫌がいいらしい。

 珍しい行動に、目を薄く開きながらどうかしたのかと聞いてみると、

「このまま裸でイザックを迎えるのかにゃ? だったら僕らは止めないのにゃ!」

 私のおでこをぺちぺち叩く手はそのままに、少しだけ呆れたような声でハクが爆弾を落とした。

 ! イザックとニールが戻って来たの!?

「にゃっっ!?」

「イザックとニールは無事なの? って、今どの辺り!?」

 びっくりして頭を跳ね上げた拍子にハクがお湯の中に落ちてしまったので慌てて拾い上げ、詳細を確認すると、

「無事かどうかは自分の目で確かめるのにゃ。 今夜は栗料理なのにゃ~♪ 
 ……ニールは厩舎でスレイとの再会を喜んでて、イザックはもうすぐドアの前に着く……、着いたにゃ! 入って良いって伝えて来ようかにゃ?」

「っ! ダメっ!!」

 ハクがいたずらな目で私を見つめる。

 ………わざとこのタイミングまで起こさなかったことが、バレバレだよ?

 どうして早く起こしてくれなかったのかと詰る私に、

「疲れていたアリスを少しでも長く休ませてあげたかったのにゃ~♪」

 なんて、可愛らしく笑いながら言ってくれているけど、絶対に違うよね? 小さな声で、

「そもそもお風呂で寝なければ問題なかったことなのにゃ~」

 ってライムに言ってるのが聞こえたもん!

 ついついお風呂で眠ってしまう私に、とうとう保護者さまハクからのお仕置きが決まったようだけど、もうちょっと違う形でのお叱りが良かったなぁ!!

 ドアをノックする音を聞きながら急いでお湯から上がり、自分の悪い癖をほんの少しだけ反省した。ハクやライムが守ってくれているからって、お風呂で寝ちゃだめだよね。

 でも、とりあえず今は早く服を着ないとね! って、タオルどこーっ!?

 突然のイザックの帰還に慌てていた自分が【ドライ】魔法を使えることを思い出したのは、ライムに可愛らしく、

「ぼくはタオルでふかれるよりもアリスの【ドライ】ほうがきもちがいいなぁ」

 とおねだりされた後だった。

 とりあえずは、落ち着くのが先みたいです。
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