女神の代わりに異世界漫遊  ~ほのぼの・まったり。時々、ざまぁ?~

大福にゃここ

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お引越し準備。の準備 2

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 ミネルヴァ一家やマッシモ一家、イザックのネフ村移住の話が本決まりになったことで、この街にいる孤児たちの中からネフ村に連れて行く子供たちを早く決定しなくてはいけない。

 全員連れていけたらいいんだけどね? それにはネフ村の受け入れ態勢が整わないようだから、出来るだけ<組紐作り>や<農作業>をできそうな子たちを選ぶ必要があるんだ。

 これにはハクとライムの協力が不可欠で、大活躍だった。

 各孤児院で子供たちに接しては、

(右から×××〇××〇にゃ)
(そのうしろのコたちはミギから〇××〇×××だよ~。)

 と言った具合に、面接に同行しては、あまり素行のよろしくなさそうな子たちを弾いてくれるからだ。

 面接前に子供たちと一緒に遊ぶことで子供たちの適正を判断するし、この街の中に強い愛着がある子や村に馴染めなさそう子を見極めてくれるので、私は事情を話したあと子供たちの意思を確認するだけでOKなのだ。

 あとは移住を了承してくれた子供たちのリストを作成して子供たちの特徴を簡単に記入したら、お引越しの日程が決まるまでそのまま孤児院で待機してもらい、日程が決まったら、迎えを寄越すだけ。

 あとは、みんなのお引越し準備のお手伝いだ。

 ミネルヴァさんや子供たちに、今住んでいる家をどうしたいかと尋ねたら、

「村に移住をしたらもうここへ戻ってくることはないでしょう。ここはすでにアリスさんの持ち家なので、アリスさんの好きなようになさってください」

 と言われて売りに出すことにしたので、その手続きも必要かな。

 みんなの思い出が詰まった場所だから、良い人が買ってくれるといいな。











 お引越しの旅に必要な物を買いに、イザックとお買い物に出かけたら、

「なにやってんだよ、猫耳! 早くしろよ、置いて行くぞ!」

「だって、これ重くてっ……! ……ごめんなさい、すぐ行きます」

 見知らぬ複数の男性と一緒にいるビビアナを見かけた。

 以前は頭にカラフルな布を巻いていたんだけど、今は布がない状態で、とても可愛らしいもこもこの耳が見えている。別人かと疑い思わずしげしげと見つめてしまうと、わたし達が彼女を見ていることに気が付いた男性が何か用かと聞くので黙って首を横に振ったんだけど、

「知り合いよ! 男性の方はBランクで以前一緒に依頼を受けた仲なの。少しだけ話をしてもいいでしょ!?」

 ビビアナの方から駆け寄って来た。

 男性たちの方をチラチラと見ながらとても親し気に挨拶をしてくれるので、戸惑いながら挨拶を返すと、声を潜めて以前のことを軽く謝り、今の自分の現状を声を潜めたまま楽し気な笑顔で話し出した。

 街に着いた御者さんの依頼完了の詳細報告と強い抗議により、サルとビビアナは冒険者ギルドの規定に照らし合わせて1ランク降格となり、サルはDランクに、ビビアナはEランク落ちとなった。

 それまでの不満を爆発させて言い争いを繰り広げた二人は元通りの関係を続けることはできなかったようで、サルは単独ソロで活動。実力的にソロ活動が難しいビビアナはタイミングよくメンバー募集をしていたパーティーに加入したそうだ。

 でも、新しいパーティーメンバーは新規加入者に気を使うタイプではないようで、毎日こき使われてへとへとだと、獣人である自分への差別も感じていてとても辛いと、サルは獣人差別をしなかったので、こんなことならサルと一緒の方が良かったと後悔を口にした。………とても楽し気な笑顔で。

 内容と表情の違いに薄気味悪さを感じてしまい、思わず一歩下がった私を庇うように前に出てくれたイザックの手をビビアナは強引に握り、

「私のことを気にかけてくれてありがとう! またどこかで一緒に仕事をできたらいいわね!」

 先ほどまでとは打って変わった大きな声で言い捨てると、そのまま男性たちのもとに走って行った。

 呆然と彼女を見送っていると、頭の上から❝チッ!❞と鋭い舌打ちの音が聞こえたので視線を上げると、

「使われちまったな」

 イザックが不愉快そうにビビアナを睨んでいた。

 駆け戻ったビビアナを男性たちは先ほどとは打って変わって機嫌の良さそうな笑顔で迎え、

「猫耳、Bランクと知り合いだったんだな! なかなかヤルじゃねぇか」
「ビビアナの知り合いなら、俺らのパーティーが困ったら助けてくれるかもな」

 なんて言いながら彼女の腰を抱き、揺れる尻尾を逆さに撫でたり胸をまさぐりその先っぽを摘むように揉み上げたり……。

「あん♡ やぁだ、人前でぇ♡ くふふ、見直した? だったらもっと大事にしてよね♪」

 往来でそんな辱めを受けても満足そうなビビアナを見て、なんだか胸の奥が重くなった気がした私は彼女から目を逸らし、彼らとは反対の方向に歩を進めた。

「イザックさん! アリスちゃん! またね~!」

 背中に掛かるビビアナの声に反応を返すことなく唇を噛みしめる私に、

(アリスには関係のない世界なのにゃ! アリスには僕たちがいるのにゃ! だから、そんな泣きそうな顔をしなくてもいいのにゃ~……)
(アリスにあんなことさせないからだいじょうぶだよ~。 ハクとぼくがまもるから! ね? わらって?)

 私のかわいい従魔たちは、小さなふわふわの頭を首元にすりすりと摺り寄せたり、ぷにぷにの体を私の肩の上で跳ねさせながら慰めの言葉をくれる。

 さっきのビビアナの様子を見て、私が感じたことを今言葉にするのは難しい。

 でも、2匹のお陰で胸の奥にあった重苦しいものが少し軽くなった私は、その❝何か❞を考えないことにした。

 彼女には彼女の生き方がある。

 そして、私にも私の生き方がある。

 以前に彼女が言った「アリスさんは運が良い」という言葉。こうしてみると、確かに私は運が良い。

 蜂の巣のようになって一度死んだけど、こんなに素晴らしいハクとライムが側にいてくれて、恵まれた能力を授かって新しい生を楽しんでいる。

 これをズルいと思う人はいるだろう。羨む人もいるだろう。でも、私はそれを後ろめたく思ったりしない。素敵で可愛らしいビジューと仲良くなれた幸運に感謝をし、可愛らしくも頼りになるハクやライムが側にいてくれることに感謝をしながら生きていく。

 もしかすると、今の彼女の姿は自分の姿だったかも、なんて考える暇があったら、日頃の感謝の気持ちを込めておいしいものの一品でも作って、可愛い従魔たちの笑顔を見せてもらおう!

 そう考えて顔を上げると、

「同じ状況に陥っても、その後の生き方は人それぞれだ」

 優しい目をしたイザックが私の頭をガシガシと少しだけ乱暴に撫でまわす。それから、

「アリスにはまだ言っていなかったが、この間、偶然サルに会ったんだ。
 Dランクに落ちたとはいえ曲がりなりにもCランクだった男だからな。新しいメンバーとパーティー組むこともできただろうに、奴は今までのことを反省して、しばらくはソロでやってみてパーティーメンバーのありがたみを再確認することにするって言って、すっきりとした表情で笑いながら街を出て行ったぞ」

 同時に関わりを持った、もう一人の行方を教えてくれた。

 うん。本当に、生き方は人それぞれだね!

 私の生き方は、可愛い従魔たちと一緒に綺麗なモノや面白いものをいっぱい見て、おいしいものを食べて日々を楽しむこと! それをビジューが見て楽しんでくれたら、とっても嬉しい。

 最近忘れがちだったことを改めて認識し、心配をかけてしまったハクやライム、イザックに笑顔で感謝を伝える。

「お腹、減らない? あそこのベンチでおやつにしよっか?」

「んにゃん!」
「ぷきゅう!」
「おっ、いいな! ガッツリしたもんもあるか?」

 みんなが笑顔で同意してくれたので、近くのベンチに移動しながら何を出すかを考える。

 まだまだ引っ越しの準備がいっぱい残ってることだし、おやつを食べ終わったら、気合を入れて買い物に行かないとね!
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