女神の代わりに異世界漫遊  ~ほのぼの・まったり。時々、ざまぁ?~

大福にゃここ

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出発前の下準備 2

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「おはよう! 今日も早いね」

「おはよっす! アリスさん達も早いっすね! さて、ライムせんせーっ、今日はどれっすか?」

「ぷきゅ! ぷっきゅ~、ぷきゅぷきゅ」

「ビーツ! 赤いのが2つと黄色いのが3つ欲しいって」

「了解っすよ~っ! じゃあ、イイところを選んでくれっす!」

「ぷきゃ~♪」

 旧ミネルヴァ邸を間借りする条件として私たちは畑の管理を任されている。と言っても、実はたいしたことは何もしていない。

 というより、することがほとんどないんだ。ライムが分けてくれる肥料は❝成長促進・品質向上❞の効果があるだけでなく❝防虫・防疫❞効果まである優れものだから。

 私たちがすることは、間引きと収穫くらいかな?

 あ、訂正。間引きも収穫も私はほとんどしていない。

 間引き作業はライム&ハクとカッサンドラさんに雇われた農業従事者さんたちがしてくれているし、収穫はカッサンドラさんに雇われた冒険者たちと農業従事者さんたちがしてくれているからね。

 間引き作業はライムが選んだ作物をハクが爪で切り落とし、私はそれを拾って籠にいれるだけ。籠がいっぱいになったら、別の場所で間引きしている農業従事者さん達に声を掛けて所定の場所に置く。

 収穫は基本農業従事者さん達がしてくれる。冒険者たちも手伝うけど、彼らの仕事は畑の警備と収穫した作物を宿キャロ・ディ・ルーナや商業ギルドに運ぶのが本来の仕事だからね。

 で、ここでも活躍するのがライムで、ライムが選んだ作物が<キャロ・ディ・ルーナ>の本日のお勧め野菜になるんだ。これは以前屋台で野菜を買う時に、ライムが質の良いものばかりを選んでくれたことを噂で知っていた農業従事者さんの1人が言い出したこと。

 ❝お試し❞に、ライムが選んだものと彼が選んだものを食べ比べた結果、ライムに勝ち星が付いた。それを聞いたキャロ・ディ・ルーナの料理長が<数量限定・本日のお勧め(サラダのことが多い)>として採用することを決断。

 それ以来、その日ライムが選んだ作物5つを報酬として、収穫物を選ぶお手伝いをしてくれている。

 うん、やっぱり私、ほとんど何もしてないね……。と少しだけ反省モードでいると、

(ありす~! きょうのごはんはビーツだよ! おいしくしてね!)

 ライムが収穫したばかりのビーツを持って嬉しそうに戻ってきた。

 うん! おいしいごはんをいっぱい作るのが私の仕事だよね!!








 と、今まではこれで良かったんだけど、私たちはこの街を出ることが決まっているので、

「よし、これっす!! 人参はこれが1番美味いっすよ!」

「ぷきゃ~……(それ1ばんじゃないよ……)」

「これじゃっ! トマトはこれが1番じゃわい」

「ぷきゅっ!(ぼくもそうおもう!)」

「じゃあ、キュウリはこれだ!」

「………ぷ?(………なんで?)」

 ライムと農業従事者さん達の❝本日1番おいしい野菜選び❞訓練に熱が入っている。

「う~……、せんせーっ! 行かないでくれっす……!」

 ……たま~に泣き言が聞こえてくる気がするけど、気のせいってことにしておこうかな。

 ……頑張れーっ!











 冒険者ギルドに到着したら、ディアーナと一緒にそのまま解体部屋に直行する。解体とお肉以外の部位の買い取りをお願いすると、解体担当職員さんたちから、

「肉も買い取らせてくれよ~! アリスさんの狩って来る魔物は倒し方と血抜き処理が良い上に、鮮度も抜群だからファンが多いんだよ! 俺も個人的に買いたいし……」

 ほんの少しだけ不満が出るけど、血抜き処理担当のライムが「おにくはうっちゃダメ! アリスとハクにおいしくたべてほしいの!」って言ってくれるんだから、売るわけにはいかないよね。

 事情が分かっているせいか、ディアーナも少し苦笑するだけで彼らの訴えを黙殺してるから、気にしないことにする。

 視線をディアーナに戻すと、

「このハウンドドッグは街の南に行った所にある大岩付近で狩った個体? だったら5体分は討伐依頼が出てるから手続きするわね。あとはオークとワイルドボアがいっぱい…って、これはグレートボアじゃない! それも2体も! どこで狩って来たの?」

「ここからスフェーンへ行く途中にある草原にいたの。グレートボアはその雌雄一対だけだけど、ワイルドボアと一緒に群れを作っているみたいだったから、群れごと狩って来た」

「あの草原のワイルドボアは新人を卒業したばかりの冒険者たちが狙いに行くことが多いんだけど、グレートに率いられたワイルドの群れは一気に討伐の難易度が上がるからベテランじゃないと荷が重いのよね~。壊滅してくれて助かるわ。後はゴブリンとスライムの魔石ね? スライムは魔石だけなの?」

「うん。スライムは素材として重宝するからね。先に分けておいたの」

「わかったわ。じゃあ預り票を書くからちょっと待ってね? 受け取りは明日のお昼ごろでいい?」

 サクサクと手続きを進めてしてくれるから、解体担当者さん達も諦めて仕事に戻って行った。

 しょんぼりした背中が少しだけ可哀そうだけど、私たちもこれからの旅路の為に食料が必要なのだから仕方がない。【複製】スキルはあるけど、食料ばかりを複製するわけにもいかないからね。手に入る食材は大切にしないと!

 何度か足を運ぶうちにすっかり馴染んだこの解体部屋(と職員さんたち)とももう少しでお別れだと思うと、ほんの少し寂しい気もする。けど、いつかまた戻ってくることもあるだろうからと気分を改めた。

 よぉし! これで、明日にはそれなりの額のお小遣いが手に入る。 道中に依頼人夫妻に支払う予定のアルバイト代金が十分に用意できそうで、ほっと一安心しながら帰途に着いた。
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