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第一章 入学編
入学編第二十一話 救援
しおりを挟む「ジークさん!リムさん!なぜここに!?」
リディオがジークとリムにそう聞く。
無理もない。ジークとリムは今日、二年生の職場体験を受け持っていたはずなのだ。
それ知っていたリディオからすると、なおさらここにジークとリムがいる理由が分からないのは当然である。
「竜機操縦士育成学校から電報が来てな。それで私たちが先行してここに来たんだ。少し経てば、他の者たちも来る」
「……っ!セフィター先生!」
「恐らくな。して、状況は?」
「……死者は、先生たち三人のみです。生徒に死者はいません。ですが、生徒が乗る近距離戦闘型の聖装竜機三機が、片手、片足を切り裂かれるなどの被害。幸い、生身の方には届いていないようでしたが……」
「……そうですか。邪装竜機の動きは?」
「見ての通り、撤退しています。なぜかは分かりませんが、ラノハとミリアが戦っていると、急に逃げ始めて……」
「……なるほど。よく分かった。リム。準備しろ」
「ええ。もちろんです」
リムはジークにそう言われ、狙撃型の銃を構えた。
ジークはそれを確認してから、自らも剣と盾を構える。
「間に合うの?お父さん」
「……最低でも、一機は堕とす。心配するな」
「……ジークさん。気をつけてください。あの中に、あいつがいます。あの時の、邪装竜機が……」
「っ!?」
ジークはラノハの言葉に、二重の意味で驚いた。
一つは、あの時、エリス村を燃やし尽くした張本人がいるという事実に。
そしてもう一つは、ラノハがそんな人物を目の前にして、聖装竜機を動かし戦ったということに。
「……そうか。よく戦ったな。よく、復讐の心を抑えて戦い、守ってくれた。ありがとう」
「……ラノハ。本当に、よく頑張りましたね」
「後は、任せてくれ。ここからは、私たちが戦う」
ジークとリムはそう言って頷き合い、ジークは邪装竜機の方に飛び、リムはその場で銃を構え、スコープを覗いた。
そしてリムは、最後尾にいる邪装竜機一機に狙いを定め、引き金を引いた。
放たれた白い光線は、文字通り光の速さで飛んでいき、ジークを追い越して、狙った邪装竜機を捉えた。
しかし、その邪装竜機に乗る男はそれに気づき、盾で防ぐ。
だが、その光線の威力は凄まじく、盾を貫きそうなほどであった。
故に、その邪装竜機に乗る男は盾にイビルエネルギーを集中させ、なんとかリムが放った光線を防ぎきった。
「……狙撃か?」
「ああ……!さっきまでの奴らとはまるで違う……!精度も、威力も……!……っ!なっ!?」
光線を防ぎ終わり、盾の構えを解いた瞬間、今度は白い斬撃が邪装竜機を襲った。
先程のリムの光線を防ぐ為にイビルエネルギーを盾に集中させていた邪装竜機に乗る男は、自らが持つ剣にイビルエネルギーを纏えてはいるが、込めることはできていなかった。
故に邪装竜機に乗る男は、剣で斬撃を放つことができなかったのである。
盾も先程の光線で、大きなダメージを受けている。
だから、邪装竜機に乗る男は、その斬撃を剣で受け止めることしかできなかった。
邪装竜機に乗る男は、なんとかこの斬撃を弾いたが、その隙に、ジークは邪装竜機の目の前まで飛んできていた。
「……来たわね」
「ええ。予定よりも少し早かったですが……」
「……それは仕方ないことだ。ここまで迫られてしまったが、予定は変えない」
「おいおいおい。まさかここまで迫られておいて、まだ撤退するってのか?」
「ああ。その通りだ」
「……ふざけてんのか?俺は戦うぞ。こいつが強かろうが関係ねえ」
……仲間割れだろうか。敵が目の前にいるというのに。
ジークはそう思ったが、これは絶好の機会であると考えた。
ジークは剣にホーリーエネルギーを込め、白い斬撃を飛ばす。
だがその斬撃は、『戦う』と言っていた邪装竜機に乗る男が放った黒い斬撃によって相殺された。
「……ならこうしようぜ。俺はここに残ってこいつと戦う。お前らは撤退する。それでいいだろ?」
「……いいだろう。行くぞ二人共」
「……いいのですか?置いていって」
「そうよ。全員撤退の指示のはずでしょう?」
「追いつかれた時点で、すでに予定は狂ってしまっている。だが、予定の時間までには集合場所までたどり着かなければならない。ならば、誰かここに残り時間稼ぎするのもいいだろう。幸い、こいつは作戦の全容を知らないからな。漏れることもない」
「……そうですね。そもそも無理やり来たのですし」
「……ならさっさと撤退しましょ。じゃ、殿よろしく頼むわ」
「殿のつもりはないが、とっとと行け」
男がそう言うと、他の三機の邪装竜機に乗る者たちは、男を置いてジークから遠ざかっていった。
ジークはそれを止めようと飛び出したが、その男によって遮られる。
「おっと。俺を無視するなよ。悲しいだろ?」
男はそう言って剣を振り、黒い斬撃を放つ。
ジークはそれを盾で受け止めたが、男がこちらに近づいて来ているのを見て、一度後ろに下がった。
その間に、他の三機の邪装竜機に乗る者たちは、ジークから更に遠ざかってしまった。
ジークはその事実に悔しそうな表情を見せたが、すぐに切り替えて相対する男に集中した。
「……こうして攻めてきたということは、我々スミーナ国への宣戦布告と受け止めていいのだな?」
「あ?多分な。後で正式にされると思うぜ?」
「目的はなんだ?なぜこのタイミングで攻めてきた」
「若い芽を摘むことらしいぜ。俺はそう聞いてる。タイミングはしらん。もういいか?俺は早くお前を殺したいんだ」
男はそう言うと、剣にイビルエネルギーを込めて黒い斬撃を放ち、自らもジークに近づいた。
ジークはその黒い斬撃に対して白い斬撃を放って、それを相殺した。
そして近づいて来た男がジークに剣を振るうが、ジークはそれを盾で受け止め、反撃で剣を突き出す。
だが、男は邪装竜機を動かしてその攻撃を躱し、一度離れてからまたジークに向かって行く。
男はジークに連続で攻撃を仕掛けるが、ジークはそれらを全て往なし、隙を一切見せない。
その事実に、男は少し焦った。自分の攻撃が全く通じていないからだ。
すると、その焦りからか男の方に少し隙ができた。ジークはそこを見逃さない。
ジークは男が振るった剣を盾で受け止めず避けて、反撃に出た。
今度は一転、ジークが男を攻める立場になった。
男はジークの攻撃を盾で受け止め続けるが、徐々にその攻撃に押され始めた。
男は小さく舌打ちし、なんとかジークから離れる。
「……お前、強いな。名は?」
「……ジーク・スパルドだ」
「ジーク・スパルド……。そうか。あの最強夫婦の一人だな?」
「だったら、なんだ?」
「いいや?ただ……必ず殺すと決めただけだ」
そう言った男からは、殺意が溢れ出ていた。
その殺意を目の前にして、ジークは即座に臨戦態勢を取る。
しばらく向かい合った後、ジークと男は同時に竜機を動かした。
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