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第1章 誘いの電話は突然に
2.湊川君の依頼
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『そうなのか……。私も行っていいのかな?』
『ああ、勿論。お前も誘ってくれって言われたんだ。ラーメン屋の場所はここから遠くないんだが、電車だと行き難いらしくてな。俺はそこまで車を出して、夏也には記事を書いて貰えないかってね』
(なるほど……)
何故我々二人なのかと思ったが、宵山には実家の車が有るし、私は車を持っていないが、文章に関しては湊川君に何度か作品も読んで貰っていた。
全くの素人に頼むよりも取材の文章がマシなものになると思ってくれたのかもしれない。
勿論、原稿はプロの人間が校正してくれるのだろうが、明後日締切ではあまり時間も取れないだろう。
私と宵山は大学時代の友人で、後輩の湊川君は我々がこの辺りの学校で教師をしていると知っていたから、取材先も近いし丁度良いと思ったのだろう。
(後輩に体良く使われているとも言えるけど……)
宵山との電話の後、私は一応湊川君にも確認の電話をしてみる事にした。
居間の柱に掛かっている古い時計は21時を過ぎた辺りを指していた。
私は揺れる振り子をぼんやりと眺めて応答を待つ。
この家は亡くなった叔父の持ち家で、叔父が生涯独り身であったのと、職場である中学校から近かったという理由で、買い取り手が見つかるまで、私が手入れをしながら住む事になっていた。
叔父が使っていた家具も殆どそのままになっている。私は二十代後半で一戸建ての主人となれた訳だが、この家のオンボロさ具合は尋常ではなかった。
『あ、湊川君? 護堂ですけど……』
『あ~! 護堂先輩、お久しぶりです! この間はどうもお世話になりました!』
電話が繋がると、相変わらず軽い調子の声が勢い良く聴こえてきた。
『ああ、お蕎麦まで贈ってもらっちゃって悪かったね。丁度年末いただいたよ。とても美味しかった。ところで今、宵山から聞いたんだけど……』
私が依頼の件について尋ねようとすると、こちらが最後まで話さぬ内に、湊川君がすかさず口を開いた。
『ああ、勿論。お前も誘ってくれって言われたんだ。ラーメン屋の場所はここから遠くないんだが、電車だと行き難いらしくてな。俺はそこまで車を出して、夏也には記事を書いて貰えないかってね』
(なるほど……)
何故我々二人なのかと思ったが、宵山には実家の車が有るし、私は車を持っていないが、文章に関しては湊川君に何度か作品も読んで貰っていた。
全くの素人に頼むよりも取材の文章がマシなものになると思ってくれたのかもしれない。
勿論、原稿はプロの人間が校正してくれるのだろうが、明後日締切ではあまり時間も取れないだろう。
私と宵山は大学時代の友人で、後輩の湊川君は我々がこの辺りの学校で教師をしていると知っていたから、取材先も近いし丁度良いと思ったのだろう。
(後輩に体良く使われているとも言えるけど……)
宵山との電話の後、私は一応湊川君にも確認の電話をしてみる事にした。
居間の柱に掛かっている古い時計は21時を過ぎた辺りを指していた。
私は揺れる振り子をぼんやりと眺めて応答を待つ。
この家は亡くなった叔父の持ち家で、叔父が生涯独り身であったのと、職場である中学校から近かったという理由で、買い取り手が見つかるまで、私が手入れをしながら住む事になっていた。
叔父が使っていた家具も殆どそのままになっている。私は二十代後半で一戸建ての主人となれた訳だが、この家のオンボロさ具合は尋常ではなかった。
『あ、湊川君? 護堂ですけど……』
『あ~! 護堂先輩、お久しぶりです! この間はどうもお世話になりました!』
電話が繋がると、相変わらず軽い調子の声が勢い良く聴こえてきた。
『ああ、お蕎麦まで贈ってもらっちゃって悪かったね。丁度年末いただいたよ。とても美味しかった。ところで今、宵山から聞いたんだけど……』
私が依頼の件について尋ねようとすると、こちらが最後まで話さぬ内に、湊川君がすかさず口を開いた。
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